プレロ問題は前からとりあげる人はいました。解説者ではアンベージさんなんてそうです。プレロジャンプをとぶヴィンスについてかなり辛辣でした。あと、WebやTwitterでジャンプ分析をみると、プレロをいやがられる方はけっこうあります。これはごまかしの踏切ジャンプだ、と、日本だけでなく、海外で激論がかわされます。よく証拠画像がつけられてます。
でも、日本の解説者はみごとにプレロ問題には触れられません。なぜかというと、プレロについての規定がないからです。「ごまかしの踏切」というのはあるのですが、それがプレロをさすとするには、プレロが何度以上かを規定する必要があるのです。多少のプレロがでても当然のジャンプもあるような気がしますし。
90度以上はプレロで取り締まるべき、ルールに書いてある、という古い書き込みもあって、昔はそうだったっけ?と思い出そうとするのですが、記憶にちっともありません。真央ちゃんのジャンプがプレロといわれてた時期はありましたが、採点に反映されていたかどうかもおぼえていません。⇒バンクーーバーはどうやら反映されていたようです。
何度かハードディスクをこわしてますし、仕事関連以外はバックアップはとりませんので、規定をかりにダウンロードしていて読んでいたとしても、うちのハードディスクには残っていないのです。
ともあれ、今はプレロが罰せられていないのはたしかです。だから、昌磨君とかヴィンスとかプレロやっているよね~、と思ってもたいへんのんきにかまえていたのです。決まりないから文句言ってもしょうがないじゃない、なんて。
それでもヴィンスは特にルッツでプレロやると、手をあげるヒマがあればプレロをやめたら、とブーイングしてたのです。なにせルッツは回らないとルッツじゃない、45度以上たらないのはダメルッツ(ようするにほぼ回ってみえるレベル)、という本音をもつ変な人間..だって、ルッツは攻めのジャンプだもの、得点高いんだもの、他のジャンプよりはるかに高いリスクをしょって、目を見開くようなものとんでほしいのです.。一方、昌磨君は変なジャンプをとんでいても、見て見ぬふりをしていました。あのフリップ、ループにみえてるんですけどね。ループをはずしたときは、フリップがループだから、ループ判定されても大丈夫なようにとばないのね、なんて勘違いしましたもん。
この脳天気な態度が一変したのは、ハビ発言のためです。欧州選手権のSPのあと、こんなことをいったのです。
「ジャッジたちは、ジャンプの評価に着氷を使っている。それはいい。でも、離氷も考慮すべきだ。あまりにもたくさんの選手が、離氷時だけで半回転(プレロテ)している。何が公正なのか?何が公正でないのか?」
上を引用した日本語訳のアドレスは次の通りです。
ハビ発言を読んでつくづく考えました。この見解、もっともすぎると。たとえば次のことをかんがえてみてください。
着氷は90度たらなかったらUR扱いされるのに、プレロで180度稼いでもまったくおとがめされない。
たとえば紀平ちゃんが4回転跳んだ練習動画があがっていましたが、あれは着氷したとはいえ90度以上たりていませんでした。おそらく試合ならURです。ところがかなりのプレロ(120~180度)のトゥルソワの4Lzには;3,29がつきました
プレロなどまったくやらない選手のジャンプが、プレロ180度のジャンプと同じ評価
上の応用です。プレロをまったくやらない選手のトウループが、プレロ180度のルッツよりもずっと低い点になる
どれも公平とは思えません。でもこういう状況です。
ハビ発言以外にも、プレロ問題をISUが考えたくなるのじゃないか、という状況はおそらく来年、登場します。
来シーズン、女子は4回転をトライする選手がでるでしょう。かなりひどい転倒がでるはずです。岡部さんがすでに危惧されてます。
明らかに4回転のせいでケガ人が増える事態になったとき、ISUは何らかの対策をとりたいはずです。
4回転禁止にすれば、かみつく人がでるでしょう。競技の進化を妨げるのか、という意見がでそう。リスクを冒してでも、より高く、より速く、というのがスポーツですから、こういう見解への指示もでるでしょう。
であれば、プレロを厳格化してこれまで認定してきた4回転をUR扱いして、4回転を跳ぶのはリスクが高すぎて損だ、というメッセージをおくるほうがいいと判断しないか、とか、思ったりもします。今、認定されている女子の4回転はすべてプレロジャンプ、それも180度近いプレロをやっているジャンプです。
もっとも、現実問題、プレロ規制が実現するには高い壁があります。
・どこまでがプレロ禁止とするかの意見統一はきわめてむずかしい
あまりに厳格化すると女子のUR率は飛躍的にあがると思われます。大なり小なりプレロがつきものじゃないの、って思えるジャンプもあります。90度以上はまちがいないですがそれを何度とするのか。さらには120度とかいう微妙な角度とするなら、ほんとうにみわけられるのか。
・プレロ容認で得しているのがロシア(特にエテリ組)とアメリカ(なんといってもヴィンス)...二大国がプレロ規制をきびしくする、というと強固に反対しそうです。お互いに対抗できる選手がでれば、相手の無効化のために反対の声をゆるめる可能性はありますが...たとえばアリサ・リューがプレロじゃない3Aをとびまくったとしたら、アメリカはロシアのプレロをいいたてるんじゃないでしょうか。逆にロシアは、コリヤダが4Lzの確率を飛躍的に高めたとしたら、ヴィンスのプレロはひどい、取り締まれとキャンペーンはりそう。
・プレロ認定は着氷以上にむずかしい。現在、カメラは1台しかない状況。また、まじめにやれば、レビューがおそろしく増え、時間の問題もでてくる
などなど、問題はたくさんあります。でも、ホントにみのがしていいのか、という認識は大きくなってきているのじゃないでしょうか。
以下、プレロの説明資料をはっておきます。プレロがどういうものか、どういうえぐい影響がでているのか、プレロのあるジャンプとないジャンプとではどれぐらいちがうかがわかると思います。
佐野さん解説によるプレロテ これがものすごくわかりやすいです
アンベージさんとアンジェロさんによる平昌男子のジャンプのプレロを含む解説
http://peeekers.com/italian-analysis
動画もありますが、これには字幕がついてないので。静止画像で決定的瞬間をあつめられていますので、こちらのほうがわかりやすいかもしれません。
プレロの定義はほかに、知恵袋もあります。ただし、画像がないこともあってちょっとわかりにくい気がします。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1422168319
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1080855270