じっと見つめている視線がありました。
数年ぶりに訪れたホテルです。
白い顔の女性が部屋の隅の壁と同化する形で見ています。
帰ってくる夫を待っていて、突然屋敷を取り囲まれ、命が終わった武家の女性のようです。
自分でもわけがわからず、時間が止まっているようでした。
霊が死んだような状態で、地縛霊や幽霊の類のような気配ではありません。
こんな時、懇ろに弔ってあげることが、サマンサのお役目です。
止まっていた時間は、瞬く間に動き出したのですから。
す~と、天に昇るように成仏する姿をサマンサは視ていました…。