黒塗りの車がお隣の家の庭先に停まり、ドアの開く音がしました。玄関方向へ歩く見慣れぬ男性の姿がありました。助手席に乗る小柄な女性は、隣のご祖母様です。
外出しようとしていたNさんは、誰かしらと思い顔をあげると、車はいつのまにか先ほどと方向を変え走り去って行きました。あまりに一瞬の出来事でした。
外出先から戻ると、隣のご祖母様が病院で亡くなったと知らせがありました。
足が悪かった彼女は、最後までベッドから動くことはできませんでした。
あの黒い車と助手席の女性は誰だったのでしょう。
ご祖母様は、自宅へ帰りたくなかったそうです。
帰宅すると家族へ負担をかけそうで気がかりでした。
霊界から車と運転手を用立てました。
誰にも迷惑をかけず、自分の足で旅立とうと思ったのでした。