バスの中で出会った彼は、知り合いなのですが、直ぐに名前が思い出せないのです。
それもそのはずで、目の部分が黒く抜けた白い面をかぶっていて、男の顔が見えません。
遠縁で亡くなった人だ、と感じた次の瞬間、私は目が覚めました。
同じ日、母の夢に現れたのは、顔に白い包帯を巻いた男性です。
やはり目がなかったといいます。
彼はお別れの挨拶に来ました、と告げたそうです。
それから一週間程がたったある日、訃報が届きました。
伯母の娘婿が突然亡くなったのです。
葬儀の日、棺の中で眠る彼の顔を、誰もみることはできませんでした。