このお話、翔くん総受けのかなりぶっ飛んだ設定です。苦手な方は悪いことは言わないので、ぜひスルーしてください。大丈夫な方のみ、心してスクロールしてくださいねm(_ _)mもちろんですが、これは素人が自己満足のために書く妄想小説であり、実際のものとは一切関係ございません( ゚ε゚;)
初めましての方はこちらへ。
さて、そろそろ……
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4人の力関係は実に明白だ。
智がずば抜けて最強で、あとの3人の力は拮抗している。
でも、雅紀の風がいつもよりもあまりに速くて……かき消すための炎を出す暇すらなく。
背後の翔を庇うのに、必死だった。
「ぐっ……!」
右肩を押さえ、潤は膝から崩れ落ちた。
久方ぶりに見る自分の血が白い床を汚していく。
そしてその血の海に転がる……自身の右腕。
肩からザックリやられたらしい。
「翔……く……ん……!」
慌てて振り返ったベッド。
翔の顔に少し自分の返り血がつき、真っ白なシーツは真っ赤に染まってしまったが、どうやらそれだけの様だった。
……まだ寝てくれてる、けど。
「久しぶりにやってくれたね、雅紀……!」
これが翔に当たってたら……どうするつもりだったのか。
血が沸騰するほどの怒りとはこのことで。
潤は紫色の瞳を雅紀に向けた。
「!?」
小さな爆発音と共に、雅紀が床に蹲る。
その体からは黒煙が上がっていて……恐らく体内のどこかを発火させられて、焼け付く痛みに耐えきれず倒れ込む。
「ゲホッゴホッ!」
思わず吐血し、雅紀は自分の手のひらにベットリついた血をマジマジと見つめて、緑色の瞳を潤に向けた。
まだ狂気じみているそれに向かって、潤は自身の血をぶちまける。
「うわ……!」
容赦なく浴びせられた潤の血が目に入ったらしく、顔を覆った雅紀。潤が怒り狂いそうになりながら吐き捨てた。
「痛かった?……悪いけど俺、もっと痛いから……っ!」
「潤……!」
それは図らずも雅紀を落ち着かせることに成功したらしい。
「グギギ……血ィ………純血吸血鬼ノ血ダァ……!」
「!」
格下が黒い影で出来た触手を潤の血だまりに伸ばす。
彼らにとって自分たちより上級の者の血を得ることは、人間の血を得るよりも難しいこと。
その代わり、得られるものも大きい。
出来た血溜まりを瞬く間に吸収した侵入者は、再生能力を取り戻したように見える。
……最悪だ、と潤は奥歯を噛み締めた。
「潤……ごめん……」
雅紀が駆け寄ってくる。
その目からはすっかり狂気が消え、代わりに涙が滲んでいく。
それを確認した潤は、ホッと胸を撫で下ろした。
「俺が純血吸血鬼だったことに……感謝しなよね……」
「ごめん……オレ………」
「謝るのは後」
ピシャリと言って、目の前を見据える。
格下ごときに翔だけでなく自分の血まで飲まれたことが憎たらしいことこの上ないが、雅紀はおかげで目を覚ましてくれた。
とはいえ、状況は悪い。
この部屋で、1番出来上がってはいけない光景が広がっている。
「とりあえずこいつ放り出して智とカズに任せて俺たちはここを何とかしなくちゃ……」
潤の左手で押さえていた右肩が炎に包まれた。
新しい腕がその肩から生える。
ホントはどっちかが翔を抱えてここを離れたいところだが、2人してまた服に血を滲ませた状態では……
雅紀はため息が止まらなかった。
「はぁ……ホントにごめん………オレ」
「後でみっちり嫌味言われてよ。久しぶりにめちゃくちゃ痛かったんだからね」
「……ホントにごめん……」
唇の震えが止まらない。
潤が近くにいなければ。
間違いなく自分は翔を……そう思うと雅紀は恐ろしかった。
今日が新月じゃなくてよかったと、心から思う。
でなければ……潤と自分の血の匂いだけでは正気に戻れなかった。
あんな僅かな血で……。
雅紀の目が緑色に光る。
「全部お前のせいだよっ!!出てけっ!」
風をまといながら黒い影に掴みかかる雅紀。
無数の触手を広げ、それを避ける侵入者。
「しつこいんだよっ!」
潤も応戦する。
もう狙い澄まして発火なんてことはしてられない。
雅紀の風と合わせて起こす爆風で、影の本体を追い出しにかかり。
そう、2人は目の前のことで必死で。
だから、気づかなかった。
衣擦れの音も。
息を詰めたような声も。
「グギギ…ッ」
黒い影の動きが急に止まる。
「!!?」
それを見た雅紀と潤がそれぞれの瞳を大きく見開いた。
気づいた。
雅紀はその鋭い鼻で。
潤は……気配で。
それから、潤がつけた炎が、水をかけたわけでもないのに静かに消えたのを見て。
2人の背筋がひんやりと冷たくなる。
あれほどの激しい戦闘を繰り広げていたから、普通なら早い段階で起きるところだと思う。
だけど、寝ていてくれた方が……4人にとっては好都合だった。
「………」
血に染まったベッドの上で、呆然と座り込む華奢な体が小刻みに震えている。
その顔についているのは、潤の血で。
眠りにつく前の部屋とはガラリと変わった状況を見ているその瞳は。
「翔ちゃん……!」
「翔くん……?」
「………」
雅紀と潤が同時に息を呑んだ瞬間。
最後に潤によって視界を潰された侵入者は、自分の体の変化で、異変に気づいた。
まだ、そうなるには早いと思われたのに。
「何?何ダ……?体ガ、消エルッ……!?」
焦りを隠せない侵入者の体は、端々が砂のように崩れていく。
無数に広がっていた影も。
潤が暴れたせいであちこちについていた炎も全て、粉のように舞い上がった。
「翔ちゃん!やめて!!」
「ダメっ!翔くん!!」
「ギャァァァァ!!」
2人の必死の声も、理由もわからず自身の体が消えつつある状況で、パニックに陥った侵入者の声にかき消される。
窓の外は……夕暮れ時。
もうすぐ夜の帳が降りる時間だ。
今宵の月は……新月の後だからほとんど月明かりがない。
「…………」
だけど、それに関係なく、翔の瞳は紅く不気味に光っていた。