前回からの続き

父も母も好きで衰えているわけではない
50歳を過ぎてから
私自身も体もそうだが頭の衰えを
つくづく感じている。
自分で自分を信用できなくなるくらい。

前はこんなミスはしなかったということも増えているし
以前のようにはできないことが多い。

よく親が高齢なのはわかっていても
両親にはしっかりしていてほしいという気持ちがあるから
きつい態度をとってしまうということも聞く。

私も自分が20代の頃、
どうしてもっとお年寄りに優しくしてあげられないのかなと
他人を見て思うことがよくあった。

私は祖母が同じことを何度言っても
「もう何度も聞いたよ」
とか
「またその話?」
なんて言ったことはなく
いつも「うん、うん」と優しく聞くことを
別に一生懸命していたわけではなく
自然に出来ていた。

今になってわかるが
祖母とはそんなに距離が近かった訳ではなく
孫だからお互い優しく出来たんだと思う。

いつも面倒を見ていた母(実の娘)は
祖母にはなるべく元気でいて欲しいと思う故
「ただ座ってないで足首を動かして」とか
手先を使った方がいいと思って
「豆のつるをむいて」とか
色々言っていた。

母は祖母が亡くなってから
あんなに口うるさく言って
祖母はうるさく思っていただろうとか
自分のことを「おっかない(怖いの意)」と
よく言ってた。
たまにしか来ない母の弟のことは
「優しい」と言ってたって。
それで弟はよく来てくれると言ってたって。
母は毎日そばにいたのに。

一番近い人はそういう役割なんだと思う。
今、自分が両親にとって一番近い人になって
よくわかる。

たまにしか来なければ
いい顔もできる。
優しくもなれる。

近くにいるからこそ
もっとこうであって欲しいとか
これ以上衰えないでいるためには
どうしたらよいかと思って
口出ししてしまう。

病院にも行かないし
何か提案しても全てを否定されるので
こっちもイライラしてしまって
「こっちだって色々考えてるのに
 全部否定されると
 もう好きにしてもらっていいけど」
「見捨てるの?」
「お大事に」
そんな風に電話を切ってしまった。

どうしてこんな風になってしまうんだろう。
どうして優しくできないんだろう。
親のことを考えると心底憂鬱になるし
自分のことも嫌いになる。

数日後母から電話があり
「お母さんももう頭がおかしくなってるから
 何か怒らせることした?
 最近、私の態度が前とは違う感じがする」
って。