ところで実は、消費貸借契約に、貸主が貸す債務を負う旨の特約を付すことも、契約自由の原則により有効です。契約自由の原則の例外に当たるのは、公序良俗や強行規程に反する場合ですが、貸す債務を負う旨の合意はそれらに反しません。俗に、諾成的(金銭)消費貸借契約と呼ばれているのは、一般的には、貸す債務特約付(金銭)消費貸借契約のことのようです。この諾成的というネーミングからは、要物契約であるが諾成的といったイメージがわきますが、引渡前に貸す債務が発生するのですから完全に諾成契約です。また、借主は返還債務を負い、貸主も貸す債務を負うので双務契約であり、その辺りは賃貸借契約と同じですね。
賃貸借契約や諾成的金銭消費貸借契約において、返還債務が引渡前に発生するという特約は有効でしょうか?個人的見解ですが、無効と解しても差し支えないと考えます。まず、世界に一つしかない特定物は、借りる前に返すことは物理的に不可能です。金銭などの種類物は物理的には可能かも知れないですが、お金を借りたい人が先にお金を払うなどという合意は普通しない。仮にしたとしても日本語がおかしい。お金を借りる前に返すというのは、それは貸したんじゃないかって突っ込みたくなりますね。貸主と借主を入れ換えた消費貸借契約に構成し直したほうが良いかも知れません。借りる前に返すという特約が無効、又は存在しない場合、返還債務が引渡しをしなければ発生しないのは、一般的社会通念に照らし、ごく当たり前の判断なのでしょう。
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