展示場には毎日30人くらいの人が訪れた。
受付をしていた私は、
来てくれた人達と直接話をすることも多かった。
話の中で、地震や津波の状況などを
何度か聞いた。
「1500万円で家を買ったばっかりだったんだ。
買ってまだ4ヶ月だよ、車で逃げるときに
バックミラーで家が流されるのを見たんだ。」
「15メートル近く高さがある橋が全部津波にのみこまれた。
いったん体が全部水につかったけど
ポールにしがみついて何とか命を取りとめたんだ。」
「考えられない光景だった。」
「この写真に写ってる男の人は、一家5人みんな亡くした。」
「現実をまだ受け入れられない、という理由で
写真を探しに来られない人もいる。」
岩沼市は、この時点で184名の死亡者を出しており、
テレビでよく報じられている気仙沼に比べると被害は小さいように見える。
しかし話を聞くと、やはりすさまじかったんだなと実感する。
だけど、展示場では悲しいことだけが
あったわけじゃなかった。
毎日10人くらいの人が写真を見つけており、
見つけた人は本当に嬉しそうにしていた。
そんな人達を間近に見ることができたのだ。
★「あった!!よかったぁ。」 と涙を流して
喜んでいた人。
★「こんなにキレイに残っているなんて・・」 と喜ぶ人。
★「これ、叔父が出したレコードなんです。」
とレコード を見つけた若い女性。
レコードの持ち主なんてきっと見つからないだろう
と思っていた私はびっくりした。
レコードの歌手はその人の叔父で、
売れなくて歌手はやめたらしい。
「もう発売していないから、見つかってよかったぁ。」
と喜んでいた。
★お寺の人で
「津波の後はまるで地獄を歩いてるみたいだったよ。
地獄絵図ってあるけど、まさにそれだと思った。
うちのお寺も全部、一つ残らず流された。
写真だってここに何度か来てるけど
1枚も見つからない。」
と肩を落としていた方がいた。
気さくな方だったのでしばらく話をしていると、
帰り際に 「実はあんまり人に言ったことないんだけど、
飛行機と車を写真で撮るのが趣味でよく撮ってたんだ」
と打ち明けてくれた。
もしかしてと思い、風景の写真やネガのコーナーから
いくつかそれらしきものをピックアップして見てもらったら
「あ!これ自分が撮ったやつだ。」
と、結局100枚近くも見つかり、
最後は本当に嬉しそうに笑顔で帰っていった。
★「何度もここに通ってるけど、今日初めて写真を見つけたんです。
本当に感動しました・・。
これ私の20年前の写真なのよ。面影あるでしょ?」
と涙を浮かべながら、
茶目っ気たっぷりにポーズを取ってみせる40代女性。
入り口に置いてあった、手書きの応援メッセージが入ったうちわを手に取り、
「ありがたいです・・こんなの見たら涙が出ます」 と泣いていた。
涙を流して感謝される仕事って
この世の中にいったいどれだけあるんだろう。
少なくても私は自分が関わったことで
泣いてまで感謝してもらえたことは無かった気がする。
ボランティアっていうと、避難所の炊き出しがイメージにあって
正直そういうボランティアをしてみたかったのだけれど、
この活動で本当によかったと思う。
本当に不思議な仕事だな・・。
『よし、もっとボランティアがんばろう。』
みんなの笑顔に励まされて、
折れた心はいつの間にか
すっかり元気になっていた。