八木詠美さんの『ささやかな、あるいは取り返しがつかないもの』のレビューになります。


今回はアプリの不具合で思うように編集できなかったため、短縮バージョンの内容紹介でいきます!

 

 

内容紹介

日々は続く。選んでなくても


壁紙が選べない女、空港の地縛霊となった少女、生年月日が同じ女優の死に動揺する女、ままならぬ人生の踊り場で彼女たちは決断する――。


デビュー作『空芯手帳』が世界26 カ国語で翻訳、

いま世界が注目する気鋭の初中編集!

 

 評価★☆☆

 どの話も洋画みたいでオシャレだった。しかし私にはオシャレすぎて、わかりそうで、よくわからなかった。


  ​あらすじ・見どころ

ここからは各あらすじと見どころを紹介していきます。


いちご泥棒 

あらすじ
夫と共同で家を買うことになり、壁紙を張り替えようとするも、とても見切れないほどの膨大なバリエーションの前に人生における選択について悩み、立ちすくむ30代の女。 

印象的なフレーズ
壁紙が決められず店員から愚痴られる(という妄想をした)場面にて

※「あなたはね、傲慢なんです」
※「ええ、傲慢。判断なんてできやしないのに、自分で選ぶ権利があると思っている。そんな美意識もこだわりだってないくせに。まあね、いいんですよ。あなたが買う壁紙なんだから。(略)けれどね、私がさっきから苛立って仕方ないのは、あなたには何かを選ぶ勇気なんてないのに、そんなことをする気も最初からないのに、じっと下の方から見上げて自分のところに素敵なものがいい具合に落ちてくるのを薄気味悪く待ってるってこと。わかる?私が言っている意味」(P40)


モラハラっぽい夫と空っぽな妻。夫のほうは高齢の祖父が生きているうちに!と焦って結婚したのが丸わかり。だからこそ自分で何にも決められない女性を選んだのだろうな〜と。一方、妻は妻で、夫婦のことなのにすべてが夫任せでフワフワっとしているのがなんだかなぁ‥。一応、本人にも人をイラつかせる自覚があるという描写がありましたが、何事も準備不足な人という印象でした(上記の※参照)。

 

ターミナル2のウェンディ

あらすじ
欧州のトランジットの空港でひょんなことから転落死してしまい、以後、地縛霊のようにさまよっていた10代の少女が、ついに自分を見ることができるアフリカのどこかから人身売買されそうになっている少女と出会うが――。


空港で亡くなった少女の地縛霊が人身売買されそうになっている少女を見つけ、こっち側(幽霊仲間)に迎え入れようと企むという話。本人的には助けるつもりで自殺するように仕向けるのですが、相手からは断固拒否されてしまいます。


空港で幽霊をしていれば、物乞いや売春をしたり、工場でブラック労働をせずに済むのに‥。あ、でも空港から出られない少女も不幸な現状から逃げられないのは同じか。いや、生きている少女には現状を変えられる!!生きていれば助けを求めればいいし、逃げればいい!!生きていれば選択ができる!!そして幽霊になった少女も仲間探しをするのではなく、自身の苦しみを受け止めるという選択ができれば成仏できる!よくわかりませんが、そういうこと?


ちなみにこの話が一番好みでした。


女優S

あらすじ
生年月日、生まれた時間、占星術的には同一人物と言っていい女優Sが亡くなった。ライフイベントのおおよそも同じでファンというほどではないが、ずっとSを気にしていた50代のわたしも死期が近づいているのかもと不安を覚えながら、新たに勤めだしたコミュニティセンターで貝の専門書を対面朗読することになる――。  

印象的なフレーズ
「ただ、あるひとときに心の底に沈んだ無用にも見える何かが、あらゆる別れの後にそっと人を癒すこともあるのです」(P169)

「もしかしたら、会わなかったことがよかったのかもしれません。だって会えなくなりようがないのですから。さようならを言わないままいつまでも思い出すことができるのですから」


芸能人と一般人。人生の中で一度も交わったことのない二人ですが、同じような人生を歩んでいるのは生年月日が同じだから?だったら片方が亡くなったら、もう片方も危ない感じ?


安心してください。そんなことはありせん。


ただ、こういう妄想は私にも経験があります(笑)気になっちゃいますよね、どうしても。この主人公も女優Sに親近感というか、愛着というか、同志的な思いを感じていたのでしょうね。なぜなら生きがいは一人では持ちづらいから。人は自然と運命共同体を求めちゃうから。たとえかたちに残らなくても、いずれ忘れてしまっても、私たちはそんなやんわりとした感覚のものを癒しにしていくことで明日を生きていけるのでしょう。

 

  ​ずいぶん長く生きてきた女

本書の最後には、表題である『ささやかな、あるいは取り返しがつかないもの』が収録されています。


主人公の名前は「ずいぶん長く生きてきた女」。なんとこの女は何十年も前に壁紙を売る仕事をしていたと語ります。


ささやかな、あるいは取り返しがつかないもの

あらすじ
夏のはじめの一日、ずいぶん長く生きてきた女は、自分の前を通り過ぎていった無数の他人の人生を記憶にとどめるように手芸に励むが、ある時、そのすべてがほどけていく感覚に襲われる――。

印象的なフレーズ
見せかけの選択肢に必死にしがみつきながら、本当はあらゆる可能性を殺してきたのではないか。自由も、祝いも、自分の中のいっとう美しい光も。(P183)


この女は『女優S』に登場した女性が働くコミュニティセンターの手芸サークルに通っていたり、家で何となくつけていたニュース番組で『ターミナル2のウェンディ』に登場した(人身売買された)少女と思われる子が保護されるところを見ていたり、これまでの総まとめの象徴的存在になっています。


正直、めっちゃ暗い気持ちになりました(笑)なんだろう、明るい話題もあるのですが、この女の全身から溢れる終幕へのパワーが強すぎて、思わず引いてしまいました。嫌だぁ、将来の私もこんな感じになるのかぁと。こんなことを思うのかぁと。


まず「ずいぶん長く生きてきた女」というネーミングがね。死に近づいているイメージがあって怖いです。午睡を仮死と表現しちゃっているし、そこに見たくない孤独がある気がして鬱々としちゃいました。


  まとめ

私は後悔の天才なので、正しい選択が苦手です。今回はそんな自分宛にも忘れないようにメモを残して感想とします。


①大事なことは自分で決める

自分の人生は自分で責任を持つという意味でも。大きな決断を他人に任せる=相手に責任を押し付けていることと同じ。


②なぜ決められないのか

選択肢がありすぎても決められないし、なくても動けない。いや、私の場合は選択できる立場にあったとしても、勝手に弱気になって、絶望して、希望を捨てて、何も選んでいなかったのかもしれない。「しない」と「できない」は似ているけれど違うもの。そう気づいた頃には、もう別な意味で選べなくなっている。


◆◆◆


しかるべき時に選ばないと、未来の後悔は大きくなっちゃいますよね。あーやだやだ。そうとはわかっていても結局選べないんだろうなぁ。


なんだか最近は、若い頃とは違う種類の優柔不断に陥っている気がします。小さな決断が大きな結果になると思うと感情が破綻する‥不安が喜ぶ‥なんでこんなに重いのか!


その一方で「考えるのがめんどくさい」という選択をし続けて、あとから後悔がはね返って来るパターンもあり、平に生きることが下手くそすぎる自分にもはや開き直ったりさえしています。


ダメだこりゃ♪


改めて、我慢と素直を賢く使い分けたいと思いましたね。


私たちは日常の中に何度も選択を迫られますが、これからは楽しいと優しいを軸に選んでいこうと思います。もちろん、できるだけ(笑)


以上、レビューでした!