雨穴さんの『変な家』シリーズ第二弾のまとめ(考察のためネタバレあり)になります。

 

シリーズを読んだことのない方は、先に一作目の概要をご覧ください↓

 

そんなの面倒だ!という方にざっくりと説明しますと、とにかく変な間取り図の家の謎に迫る本だと思ってください。さっそくですが、以下に今回「筆者」の元に送られて来た変な間取りの資料⑪を要約していきます。

 

資料①行先のない廊下

2022年6月 根岸弥生

根岸さんの実家には、根岸さんの部屋とお母様の部屋との間に「行先のない廊下」がある。廊下の先には庭があり、さらにその先には大通りがある。根岸さんはお母様から愛情を受けていなかったが、なぜか大通りに出ることだけは危険だからと禁止されていた。しかし家が完成してから数年後にお母様は亡くなってしまう。遺品からは68万円のへそくりと片腕と片足が折れた人形が発見された。

 

<あとからわかったこと>

根岸さんは母親から「大通りには出るな」と言われていた。その原因は、建築工事中に建設会社(ハウスメーカー美崎)のトラックが、大通りにいた近所に住む子供をひき殺してしまったことにある。当初、廊下の先には玄関が配置される予定だったが、この件があり、別の方角に配置することにした。これは一見、娘の安全を考慮したように思えるが、実はお母様は亡くなる直前に根岸さんの部屋を取り除く工事を依頼(そのためのへそくり68万)していた。ちなみに大通りに出ないよう口すっぱく言っていたのは、もし根岸さんが事故にでも遭った場合、彼女が不倫相手との間に出来た子供だと血液型を通してバレるのを防ぎたかっただけ。

 

資料②闇をはぐむ家

2020年11月 飯村達之

飯村さんは特殊清掃の仕事で、殺人事件の現場を担当したことがある。それは当時16歳の長男が父親以外の家族(祖母、母親、弟)を殺害した津村という一家だ。しかし飯村さんによると、この家の間取りは殺人事件が起きやすいように設計されていると言う。部屋数が多いせいで窮屈な上、ドアが少なくプライバシーは守られていない。なぜかキッチンは下の世話が必要な祖母の部屋とトイレに挟まれていて臭い。とにかく家族間でトラブルに発展しそうな設計になっているのだ。

 

<あとからわかったこと>

この家を設計したのは「ヒクラハウス」という中部地方では有名なハウスメーカー。ライバルは「ハウスメーカー美崎」。当時ヒクラハウスは建売物件で、この家と同じ間取りの家を大量生産していた。大工の間では「息子さんはこの建物に住んでいなければ心を病まなかった」「ヒクラは悪徳企業」だとさえ言われていた。また、ヒクラの社長には幼女虐待の噂があり、一時メディアでも炎上して信頼を失っていた。

 

資料③林の中の水車小屋

1940年に出版された古本から

水無宇季という当時21歳の女性が「飯伊地方の思い出」という章でこんなことを綴っている。宇季は避暑のため、叔父夫婦の家に滞在していた。ある日、近くの林を散策していたら、水車小屋を発見する。その水車小屋は、水車を回転させると部屋の真ん中にある壁が左右に移動する仕組みになっていた。しかし右側の壁には体を丸め込めば入れそうな「へこみ」があった。それはちょうど頭から入ると、外にある祠に向かって土下座するような形にも見えた。一方、左側に「へこみ」はなく、ただの床だったが、そこにはメスのシラサギの死体があった。おそらくここは罪人を閉じ込める部屋だったとみられる。

 

<あとからわかったこと>

宇季は水車小屋のことを叔父夫婦に尋ねることにした。しかし、話そうとしたタイミングで、夫婦の養女が泣き出してしまった。どうやら手術した左腕の付け根が膿んでしまったらしい。実は宇季が小屋で見たシラサギは、この養女の母親の死体だった。叔父夫婦には子供がおらず、彼らは母親から赤ん坊を奪っていたとみられる。その際に母親が赤ん坊の腕を強く握って離さなかったため、彼女の手首を切断したが、その手は赤ん坊の腕を強く握りしめたまま開かなかった。長時間母親の手に圧迫された赤ん坊の腕は壊死したため、手術で切断したと思われる。ちなみに手首を切断された母親は、そのまま小屋に閉じ込められて失血死した。

 

資料④ネズミ捕りの家

2022年3月 早坂詩織

私立のお嬢様学校に通っていた詩織さんは、中学時代にサラリーマン家庭であることから、同級生に見下されていた。そんな詩織さんと唯一仲良くしてくれたのが、ヒクラハウスの令嬢・ミツコだったと言う。ある日、ミツコの家でお泊り会をすることになり、豪邸に招かれた詩織さんは、そこがミツコとお祖母さんが二人で住むために建てられた住まいだと知る。ミツコとお祖母さんの部屋は二階にあり、お祖母さんの部屋は二階の中央に配置されていたが、窓はなかった。


詩織さんとミツコは好きな漫画が同じことから親しくなった。しかしミツコの部屋にも、こっそり見たクローゼットにもその漫画はなく、詩織は不思議に思った。そこで詩織は、深夜にクローゼットを再度確認しようとするが、鍵がかかっていた。翌朝、詩織さんがトイレに行こうとすると、ちょうどお祖母さんが部屋から階段手前にあるトイレまで壁をつたいながらよろけるように歩いていた。お祖母さんから「お先にどうぞ」と言われて用を済ませていると、階段からもの凄い音がした。右の壁をつたって歩いていたお祖母さんが、トイレがある左側に移動しようとした際、バランスを崩して転落してしまったのだ。

 

<わかったこと>

この家はヒクラハウスで権力を持つお祖母さんを現社長であるミツコの父親が殺害するために設計された家だった。罠を仕掛けたのはミツコ。わざと計画日に詩織を招き、アリバイ作りに協力させた。お祖母さんは足が悪いというより、左腕と右足が義手義足だった。ミツコは夜中にお祖母さんの部屋から義足を奪ってきて、クローゼットに隠していた。ミツコがアリバイ作りのために詩織さんを招いたのは事実だが、そのために友人になったわけではない。友人になったのは、本当に気が合ったからだ。ただ、詩織さんはミツコに利用されたと恨んでいる。

 

※文字数に限りがあるので、ここからは超要約でいきます

 

資料⑤そこにあった事故物件

平内さんは長野県の山奥に中古物件を購入した。しかしそこは事故物件で、80年以上前に女性の遺体が発見された場所であることが判明する。筆者に相談して一緒に調査すると、この家は以前水車小屋だったこと、そこは梓馬清親という地主が建てた小屋であったとたどりつく。今から大昔のこと、清親は怖ろしい妻から逃れたくて、女中の絹と恋仲になった。やがて絹は妊娠し、妻に二人の関係がバレてしまう。清親は絹を逃がし、予め用意していた避難用の小屋で出産するように促す。もちろん小屋には妻から身を守れるような工夫を施してある。それが例の水車小屋のシステムだった。しかし、結局絹は死んでしまい、赤ん坊は老夫婦のもとへ渡ってしまった。数十年後、ヒクラハウスが水車小屋を増築し、家として売りさばいて今に至る。

 

資料⑥再生の館

かつて「再生のつどい」というカルト教団があった。その教団施設は「再生の館」といい、そのつくりは片腕と片足のない女性のシルエットの形をしていた。館の心臓部には「聖母様(教祖)」がいる円形の神殿があり、ちょうど子宮にあたる部分には大量のベッドが置かれている。信者は聖母様に面会したあと、ベッド(胎内)で眠ること(これが修行)で再生できるという仕組み。修行が終わると、施設の庭に設置された長テーブルで幹部らしき人物と信者との間で見取り図を見ながら、この施設と同じ間取りの家を「ヒクラハウス」で建てる契約が行われる。

 

・ヒクラは「再生のつどい」の創設者

・親の罪は子に引き継がれるため、家ごと変えて修行する必要性を説いている

・自身のスキャンダルで傾いた経営をインチキ商法でカバーしようとしていた

 

資料⑦おじさんの家

三橋成貴くん(9)の日記からの抜粋。成貴くんは母親とその恋人から虐待を受けて亡くなった。あるとき、見知らぬおじさんが訪ねて来て、成貴くんと母親を自宅に招いておいしい食事を振る舞ってくれた。しかし、その後母親からおじさんとの接触を禁じられ、虐待の末、死亡することになる。成貴くんの日記によると、このおじさんの家も「再生のつどい」が推奨する設計だった。また、このおじさんは以前、再生の館まで来て、聖母様に「インチキ女め!どうしてナルキは死んだんだ?」と暴れた男だと判明する。(おじさん=ナルキの父)

 

資料⑧部屋をつなぐ糸電話

笠原千恵さんの父親は亡くなっている。昔、両親と住んでいた頃、夜になると怖くて眠れない千恵さんのために、父親は糸電話をしてくれた。ある日、いつものようにおしゃべりをしていると、突然父親の様子がおかしくなり、一方的に会話を打ち切られてしまった。その後すぐに隣の松江さん宅が火事になり、一家は避難する。残念ながら、松江家は幼い一人息子をのこして両親は亡くなってしまう。笠原家は無事だったものの、火事のあと父親は離婚を切り出して行方をくらます。事件後、千恵さんはあの日回収した糸電話の存在を思い出し、引き出しから出してみた。すると、糸が異常に長くなっていることに気づき、もしかすると事件当時、父親は松江さん宅から電話をしていたのではないかと疑う。出火原因は松江さんの奥様が焼身自殺を図ったことらしいが・・。のちに父親が自殺したことが判明する。自宅にはなぜか今や世間の誰もが知っている三橋成貴くんの写真があった。

 

資料⑨殺人現場へ向かう足音

松江家の長男・弘樹くんの証言。彼はあの日、一階にいて、両親は二階のそれぞれの部屋にいたと言う。しかし途中で父親が母親の部屋に行った音がした。30分後、急に父親が「火事だ!」と言って一階まで駆け下り、弘樹さんを外まで連れ出してから通報するように頼んできた。父親は母親を見つけ出すと言い、再び家へ引き返すが、途中で煙を吸って亡くなってしまった。弘樹くんは父親が母親と心中したと思っている。母親はなぜか和室の押し入れから発見され、死亡が確認された。

 

<真相>

松江さんの奥さんと笠原父は不倫関係にあった⇒しかし松江さんが妊娠⇒遺書を用意して自殺⇒いつも夜中に密会していた笠原が第一発見者に(いつも隣の家から糸電話をしていたから糸が長かった)⇒笠原は逃げる⇒松江さんの旦那さんが妻の死体と遺書を発見⇒クリスチャンのため不倫&自殺は禁忌。証拠隠滅のため遺体を燃やした(司法解剖でお腹の子がバレないようにするため、確実に燃やす方法を考えた結果、消防隊員が来ても探し出せないであろう押し入れの中に入れた)

 

ちなみに笠原父にはもう一人不倫相手と(その隠し子)がいた。それが例の三橋成貴くんとその母親。そして父もまた「再生のつどい」の信者だった。

 

資料⑩逃げられないアパート

売春施設「置棟」に親子で住んでいたという西春明美さん。借金を苦に自己破産したものの、反社から借りていたお金はチャラにならないため、売春させられていた。置棟は脱走できないように見張りがいて、外出したい際は他の売春婦の子供と自分の子供をトレードして用事をすませてくるのが条件になっている。こうすることで人質システムが成り立ち、脱走の気力をなくさせているのだ。明美さんの隣部屋にはヤエコさんという左腕のない女性と、その娘がいた。ある日、ヤエコさんは明美さんの息子を連れて出かけた際に事故に遭ってしまい、右足を失ってしまう。しかし、その後ヒクラハウスの御曹司がヤエコさんと結婚したいといい、借金を肩代わりしたことで、無事に親子は解放された。

 

資料⑪一度だけ現れた部屋

入間さんは、子供の頃に新潟の実家で一度だけ「もう一つの部屋」を見つけてしまう。しかしその部屋がどこにあったのか思い出せず、筆者に連絡した。結論から言うと、その部屋は廊下の突き当りにあったのだが、取っ手がないため開けられなくなっている。しかし、それは外側から磁石を使って開けられるようになっていた。入間さんが幼い頃に開かずの間を見たのは、ちょうど中越地震が起きて扉がズレたからだと思われる。部屋の中には左腕と右足のない女の人形があり、それはこの家の形によく似ていた。入間さんの両親もまた、「再生のつどい」にハマっていた。(父親が無精子症だったため、母親が他の男性と子供を作った、それが入間さんのルーツ)

 

すべての真相

事件の鍵となるのは「ヒクラハウス」です。ヒクラハウスはカルト団体を利用して、物件を売っていました。しかも、教祖としたのは片方の手足がない女性ときたものですから、酷い話です。

 

この女性というのは、ヤエコのことです。「逃げられないアパート」に出てきた明美の部屋の隣人ヤエコさん。彼女は右足を事故で切断しています。では、左腕はどうしたの?となりますよね。出会ったときは既になかったようですが・・・

 

そうなんです。ヤエコさんは、あの「水車小屋」で水無宇季の叔父夫婦に発見された赤ん坊だったのです。絹からヤエコを奪ってきた、あの夫婦の養女として育ったのですね。(ヤエコは養父母から真実を聞いて絶縁した)

 

ヤエコの人生は散々です。生まれてすぐに母親を殺され、そのときに左腕を失い、家を出てからは体にハンデがありながらも懸命に働き、ようやくお金持ちと結婚したと思ったら夫が死に借金だけが残って・・ハードすぎます。

 

驚きなのは、ヤエコと明美がいた置棟は小児性愛者専用のアパートだったということです。母親が何もしないで済む一方、犠牲になった子供たちは・・・。そのせいでヤエコは娘から酷く恨まれ、ヒクラと再婚したあとは彼女の言う通りに従うことになります。聖母様にさせられ、金儲けの道具として消費され、オウム事件のあとはカルトのにおいを消すため抹殺されます。ヒクラ自身も契約上はヤエコと結婚しましたが、本来の目的は娘のほうでした。そしてその娘が生んだ子供がミツコというわけです。もう地獄ですね。

 

ご覧のとおり、ヒクラハウスで家を購入している人たちは、不倫という罪を背負っています。親の罪は子供の罪でもあるという脅しから、皆「再生のつどい」に入信し、ゆるしを乞うていたのですね。おー怖い。(根岸さん母も信者だった。家を聖母様のかたちにするため娘の部屋を取り除こうとした。へそくりはそのため)

 

ただね、ミツコのお祖母さん(ヤエコ)の話だけは、他にもエピソードがありまして。

 

ミツコと父は、母親からお祖母さんを殺すように命令されていました。明け方、お祖母さんがトイレに行く前に、生命線となる義足を隠せというのです。しかしミツコはどうしてもやりたくありません。

 

そこで一度は隠した義足を返しにいったはず・・なんですが、実際は寝ぼけていたのか、夢で返したことを現実だと思っていたのか?返していなくて、結局お祖母さんは階段から転落してしまいます。

 

、実はこれ、お祖母さんはすべて知っていたのです。殺害計画の話を聞いていたお祖母さんは、ミツコがそれを実行できないと知り、自ら死を選んだのです。おそらくミツコが返しに来た義足をクローゼットに戻したのもお祖母さんなんじゃないかな。足の悪いお祖母さんがどうやってそんな行ったり来たりするの?と思いますが、もしかするとミツコとお祖母さんの部屋にはクローゼットを通した隠し扉があるのかもしれません。だとすれば、どこかに漫画本を収納するスペースもあっておかしくないのかも?

 

この家では母親の命令は絶対で、従わないと薬を盛られたり、殺されかけたり、とにかく大変なことになります。お祖母さんはそんなピンチに陥った孫のために命を懸けてくれたのでしょう・・・

 

もしくは、やはりミツコが殺ってしまった説。また使用人あたりに薬を盛られて意識が朦朧としていたため犯行の記憶が曖昧いなのかも?それかありえないけれど、詩織が犯人説。急いでトイレに駆け込んだため、実はよくドアが閉まっていなかった。お祖母さんは壁から壁に移動する際にドアノブに手をかけたら、よく閉まっていない扉が開いてバランスを崩し、そのまま転落してしまった?それを信じたくなくて、詩織は祖母さんが自室に戻っていることを確認するために、階段下を見ずに引き返したが、現実は違ったとか?最後「私のせいじゃない」って心の中で繰り返していたところが少し気になるなぁ。しかも漫画本が見つからなかった時点でめちゃめちゃ切れていたし、夜中にクローゼットをあさろうとしたのも変。そこまでする?

 

それか、これは他の方も考察していましたが、ミツコの家族がやった説。詩織が夜中に漫画本を探そうとしていたとき、後ろから誰かの視線を感じたシーンがあるので、そこは気になっています。あとは二階に行く階段が二つもあるので、もう片方の階段から誰かが来て、隠し部屋に潜んでお祖母さんを突き落とすチャンスをうかがっていたパターンも・・。

 

 

という、どちらにしてもめっちゃ嫌な結末。

 

いかがでしたでしょうか?

 

というか。もうほとんどの人が結末を知っていると思いますが。

 

今回は一作目のときには全くわからなかった考察もすんなりできて、しかも当たっていて嬉しかった!もちろん評価は5(満点)です。これ以上変な家なんてあるのだろうかと思いもしないけれど、田舎のほうには古ーい家がたくさんあるし、まだまだネタは豊富なのかしら(笑)今後も期待しています。

 

以上がレビューです。

 

今回は文字量が多いので総評はショートカットにしました。それでは、また!

 

個人的にはダントツでパート2の方が面白かったです!


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