今回は、Gakkenさんの『ビジュアルデータブック 日本の生き物 固有種・外来種が教えてくれること』をご紹介します。
監修は動物学者の今泉忠明さん。『学研の図鑑LIVE』や『ざんねんないきもの事典』なども著著・監修されている”あの方”です。デザイン・イラストは向田智也さん。向田さんは日本の暮らしと自然の関りをテーマに創作活動を行っているともあって、内容にぴったりの素晴らしい画力の持ち主。
本書の中身は、題名そのまま。日本の固有種や、在来種をおびやかす外来種について学んでいきます。かなり濃い一冊なので、大人が読んでも全然オッケー。グラフや表などのデータで説明してくれるので、「なんとなく」の理解でおわらないようになっています。
(Amazonより)
日本にはわかっているだけで9万種以上の生き物がいて、まだ見つかっていない生き物、調べられていない生き物が多く、実際には30万種以上の生き物がいると言われています。
さらに地球の生き物の種類は、約3000万種と考えられています。その中で、特定の地域にだけいる種類を、その国や地域の「固有種」といい、海や高い山脈にへだてられた地域には、固有種が多くみられます。日本のような島国にも固有種は多く、それは世界的にみても多いと言われています。特に日本の場合は、ほ乳類の固有種が多く、日本と同じくらいの大きさの島国と比べても、圧倒しています。
その理由としては、もとは大陸の一部だった日本列島が時間をかけて、少しずつ切り離されたことにあります。ユーラシア大陸から分かれ、西南諸島が分かれ、本州・四国・九州が分かれ、北海道が大陸から分かれ・・・としているうちに、分裂前にその場所にいた動物たちがプレートの動きと一緒に切り離されてしまったのです。
その多くは大陸から渡ってきた動物でしたが、年月を重ねるうちに大陸に残った動物は絶滅し、日本についてきた動物は生き残り、固有種になりました。現在の日本の中で一度も大陸と陸続きになったことがない小笠原諸島にいたっては、昔と変わらぬまま生き残っている動物が多く、固有種の宝庫になっています。
と、まぁここまでは既に知っているわ、と言う方も多いですよね。このあとも、ひとつの動物が絶滅すると、全体の生態系のバランスが崩れ、それが農作物にも影響して悪循環になること、だからこそ保護していかねばならないが、外来種に在来種がおびやかされていることなどの説明が続きます。
かわいそうですが、外来種は駆除を継続していかないと、あっという間に増えてしまうのでね・・・。
一方、絶滅寸前から復活をした動物もいます。タンチョウやトキなどがそうですね。
あ、そうそう、海外では日本からやって来た外来種が問題になっているようです。世界の海に広がる日本の海藻ワカメは、海外では非常に大きくなり、漁猟機械にからまるなどの深刻な被害をもたらしています。
本書にはグラフや表の読み方から、それらを用いた意見書の書き方もレクチャーしています。また、統計資料の集め方や調べ方も載っているので、自由研究の際に参考になるかもしれません。
日本といえば、捕鯨について一部の国からあーだこーだ言われていますが、「かわいそう」という感情論ではなく、きちんとした調査・データに基づいて議論させていただきたいところですよね。なのに最初からそれをさせてもらえず、もうメチャクチャ。あちらは、いつのまにかテロリストになってしまいました。
そういう「なんかおかしいな」に気づくためにも、意見するためにも、こういう本を読んでおくのは大切だと思います。
最後に、本書にある固有種とは植物も含めて、を指しています。動物だけでなく、植物や昆虫についても触れられているのでぜひ読んでみてください。
なんとかして日本の里山を復活できないものか・・そうするだけで山の動物が都市に迷い込むことも減るはず。手遅れになる前に事態の深刻さを広めていきたいですね。
以上、『ビジュアルデータブック 日本の生き物 固有種・外来種が教えてくれること』のレビューでした!
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