今回ご紹介するのはヤバイ本です。ホラー中のホラー。やっぱりお化けよりも、生きている人間が一番怖いと思える一冊です。
この家は悪魔に乗っ取られた。恐怖、嫌悪、衝撃。そこは地獄。初恋の女性を救い出せるのか。
女の毒が体内に入り、蝕まれていく--
簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。(あらすじより)
平和に暮らしていた西村家を襲った悲劇。それは神谷優子という悪魔に目をつけられた瞬間から始まっていました。
西村家の父・光男は、当たり屋に遭って以来、自称・被害者を名乗る優子から難癖をつけられ、お金をむしり取られます。優子の背後にはヤクザのような男がおり、西村家はあっという間に彼らから暴力で支配され、家を乗っ取られてしまいます。その時、優子が全員に強いたのは、優子の家族になること。西村から神谷になり、今後は”優子ママ”の指示に従って生きていくように脅されます。
こうして優子の支配下に置かれた西村家は、彼女に言われるがまま、犯罪行為に手を染めていくことになります。もし命令に従わなかった場合は、家族全員から罰を受けるシステムになっており、その内容はとても酷いものでした。日々、互いを監視し合いながら、強制的にやらされた犯罪行為を記録され、警察にもいけない状況に追い込まれた西村家。そのうち母は家族を見捨てて自殺し、残された姉弟は親戚のもとへ逃れるも、あっけなく見つかってしまい、親戚共々西村家へ連れ戻されてしまいます。
もう絶対に逃れられない
そんな絶体絶命の中に現れたのが、愛香の中学時代の同級生・北島でした。彼は愛香から事情を聞くと、自ら優子に近づき、西村家へ潜入します。この時、当然北島も神谷ファミリーの一員になるのですが、彼は晴男という偽名を使い、優子好みの男を演じることで、素性を隠すことに成功します。
ここから晴男の救出劇が始まるのですが、彼はとんでもない方法を思いつき・・・・。
ちょっと読んでいる方としては、おい北島!あんた晴男になる前にさっさと警察に通報するなり、救急車(を呼んだ方がいいシーンあり)を呼ぶなりをしていれば、愛香たち家族は助かったんじゃない?と思うのです。それくらいこっちまで「何とかしなきゃ」と真剣に焦ってしまう凄い一冊なので、終始もどかしさを抱えることになるかもしれません。
しかも、この物語。晴男がレイプした女性を殺してしまったところを優子に発見されたシーンから始まるのですよ。ええええって感じですよね。しかも優子は「そういう男は好きだよ」とか、もうありえない言葉を放ちます。気に入って家に来いとまで言っちゃう始末。
実はこの家には過去にもイカれた男が住んでいたのですが、そいつは事故で亡くなってしまったため、優子は次の人材を求めているようで・・。しかもそいつの名前もハルオ。ん?何だかややこしくなってきました。これは一体どういうことなのでしょうね。
まぁそれは本編を読んでいただくとして、晴男の方は順調にバカキャラを演じて優子を騙していきます。しかし、そのうち優子の上にはさらなる悪魔が存在していること、優子は単なる駒に過ぎないことを知り―
こんな状況からどうやって愛香を救うのかさっぱりわかりませんでしたが、結末を知ったときは気が抜けるというか、何というか。上には上がいるものですね、という感じ。何だか一気に優子が雑魚キャラに見えてきます。
それにしても、世の中にはよくもまあこんなに悪いことを思いつく人間がいるよな、というのが全体の感想でした。西村家を乗っ取るまでの手口とかもそうですが、自分の手は汚さずに悪事を働く発想とか、もうある意味才能なんじゃないの?というくらい悪魔すぎて・・。読んでいて気分は良くないし、グロ系が苦手な人にはオススメしませんが、怖いもの見たさが勝った人は読んでみてください。つづきが気になってあっという間に読める系の本なので、体力はいりません。いるのは気力だけ。どうぞ北島と一緒にハラハラドキドキをお楽しみください。
以上、『修羅の家』のレビューでした!