今回ご紹介するのは、映画『マッチング』の原作小説になります。

 

 

<あらすじ>

ウェディングプランナーの仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花は、同僚に勧められ、渋々マッチングアプリに登録。この日を境に生活が一変する。マッチングした吐夢と待ち合わせると、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男。恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山に助けを求めることに。同じ頃、“アプリ婚“した夫婦が惨殺される悲惨な事件が連続して発生。輪花を取り巻く人物たちの“本当の顔“が次々に明かされ、事件の魔の手が輪花に迫るのだった。誰が味方で、誰が敵なのか――。出会いに隠された恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラー!

 

 

ウェディングプランナーの輪花は、上司からマッチングアプリを勧められ、勝手に吐夢という男性とコンタクトを取られてしまいます。仕方なくアプリ内でやり取りをすることになったものの、積極的な吐夢のペースに引きずられ、輪花は急ピッチで水族館デートをすることになり―

 

しかしデート当日、輪花の前に現れたのは、どう見ても不審な男性でした。汚くてボロボロのコートとサイズの合っていない長靴を履いたその男性は、自らを吐夢と名乗り、初対面でいきなり生い立ちの不幸さを語り出します。あまりの気味悪さに危険を察知した輪花は、会ってすぐに逃げ出すようにその場を去ります。

 

以来、輪花は吐夢からストーカー行為をされるようになり、その相談を取引先の影山にするようになります。影山は輪花が利用しているマッチングアプリの開発者で、現在は仕事でも関りのある人物です。もうひとり同じプロジェクトに関わっている和田という男性もいるのですが、彼は輪花の個人情報を会社のパソコンから抜き出しており、もちろん吐夢とのやり取りまで盗み見しています。そんな中、世間ではマッチングアプリを利用して結婚した夫婦を狙う殺人事件が相次いで発生し―

 

警察はこの事件の犯人を追った結果、和田を徹底にマークすることにします。その理由は、殺害されている夫婦がどれも同会社のマッチングアプリを利用していたこと、そして和田が普段から女性たちの個人情報を盗み見していることがわかったためです。おそらく会社のデータから被害者の情報を得て、犯行に及んだのだろうというのが警察の見立てでした。

 

ところが和田はその後すぐに失踪し、犯人説から外れてしまいます。では、やはりあやしいのは吐夢でしょうか。すると何やら影山までもが不審な動きを見せ出し―

 

ここから物語は、和田、吐夢、影山の三人を犯人にしぼり、展開していきます。警察があやしむのは和田ですが、西山という女性刑事だけは吐夢に疑いをけけています。実は吐夢には前歴があり、過去にもマッチングアプリで出会った女性をストーカーしていたのです。

 

さらに輪花の周囲ではもうひとつ事件が起きています。それは父の芳樹のもとへ謎の女性から電話がかかってきたり、自宅ポストに芳樹と見知らぬ女性の不倫現場を押さえた写真が投函されていたり、何かと物騒なことが続いていたのです。輪花が父に不倫について問い詰めると、すべてを認めたあと「用が済んだらすぐに帰って来る」と言い残し、行方不明になってしまいます。

 

その後も輪花の周りでは、学生時代の恩師が殺されたり、アプリを勧めてきた上司が亡くなるなど事件が相次ぎ、ますます吐夢犯人説が濃厚となっていき―

 

最終的には、犯人は吐夢か影山か?という展開になっていくのですが、その結末はぜひ皆さんも推理しながら読んでみてください。

 

少しだけネタバレを言うと、輪花、吐夢、影山には生い立ちが不幸という共通点があります。輪花は母は何年も失踪中、吐夢は生まれてすぐにコインロッカーに捨てられ、影山からも家族という存在の気配を感じられないという悲惨さ。

 

そして、なぜか和田、吐夢、影山の男性三人に関しては、全員が輪花のストーカーになるという展開です。なかでも吐夢は堂々とストーカーするタイプで、悪気なく輪花に盗聴器やカメラを仕掛けたことを認めてきます。もう全員が気持ち悪くてわけがわからない!となってしまう方もいるかもしれませんが、ふつうに考えれば犯人はすぐにわかると思うのでご安心を。

 

ただ、輪花のストーカーは誰?その動機は何?ということを知るよりも、アプリ婚をした夫婦を殺害した犯人とその動機を知ることの方がとても残酷というか、哀しいものになっているのでご注意を。

 

 

アプリ婚、そこに真実の愛はあるのでしょうか?

 

簡単に「いいね」を押せばマッチングでき、嫌になったら即連絡を断てる。

 

自分を偽った人が集まる”嘘だらけの愛”が次々にスクロールされていく世界。

 

真の愛とは何か。それは、命懸けで誰かを守ることだ。自己犠牲をすることだ。命を懸けて守れないのであれば、それは下らない偽わりの愛だ。ルールは至ってシンプルだ。二人を鎖で縛り上げ、男と女、どちらが死ぬべきかを問う。もし二人に真の愛があれば、ためらうことなく自分の命を差し出すはずである。P277

 

この考えはとても猟奇的だけれど、実は結構こういった”命くらべ”で愛をはかろうとする人は昔からいるものです。

 

これは究極の孤独が生み出すアイデアなのか。

 

とにかく個人情報が簡単に漏れる世の中の恋愛は怖いですね。隠しても小さなヒントで住所や職場がバレてしまう。第三者にチャットのやり取りまで見られてしまう。皆さんもどうかお気をつけください。

 

 

以上、『マッチング』のレビューでした!