今回ご紹介するのは、かわいくて賢いゴールデンレトリバーが登場するお仕事小説になります。
うわっ・・!いきなり情報量が多い!!
そう思わせてしまってますよね?すみません。今からどんな内容の本なのかザクっと書いていきますね。
本書は犬が主役の(?)警察小説になります。看護師から警察官に転身した笠門達也は、ファシリティドッグのハンドラーとして、警視庁総務課総務部に配属されています。ん?警察官が警察犬ではなくファシリティドッグのハンドラーをしている??しかも総務課って何をするの??と、思いますよね。
実はこの笠門、上司からある特殊任務を与えられています。それは警察病院の特別病棟に入院する余命わずかの囚人患者からファシリティドッグの力をかりて事件の秘密を聞き出すというもの。どんな凶悪犯も犬を前にすると、警戒を解き、つい本音を語り出してしまうのです。
もちろん笠門がファシリティドッグを使って捜査をしていることは警察内でも極秘で、一部の人しか知りません。普段は警察病院に常駐するファシリティドッグのハンドラーとして、主に小児科病棟の子供たちを癒すために働いている(フリ)をしています。
そんな物語にかかせないスーパードッグが、ゴールデンレトリバーのピーボです。ピーボは笠門よりも賢く、どんな難事件も解決していきます。本書はこのピーボと笠門が囚人患者から聞き出した秘密をもとにありとあらゆる事件を解決に導く連作短編集となっています。
全5話収録されているのですが、どのお話も終わり方が急ぎ足。犯人がわかったとたん、急に次の話に移るので覚悟して読んでください。
全体的にはありえない状況や展開があるものの、ピーボの可愛らしさにはこちらまで癒されてしまいます。ちゃんと人間の言葉を理解しているし、ポンコツ笠門が気づいていない事件の重要な手掛かりにも敏感で素晴らしい。
オススメは第3話の「犬が寄り添う」。ここでは笠門がピーボのハンドラーをするまでに至る経緯が描かれているのですが、その内容があまりいいものとは言えません。なんと笠門は過去に鑑識課で警察犬のハンドラーをしており、そのとき扱った事件で相棒のモリオウ号を亡くしています。大切な警察犬が自分を殺人犯から守るために殉死してしまった・・そんな失態をしており、現在は総務課に左遷させられているのです。※ちなみに総務課は何でも課という設定です
ちょっとこういう犬が人間を守って命を落とす的な話は、リアルのニュースでも耳にすると悲しくなります。
あの真っ直ぐすぎる忠誠心に心が抉られてしまい・・できればそんな事件など起きてほしくないものです。
しんみりしたレビューになってしまいましたが、当のピーボは「狙った獲物は逃がさない」系の敏腕捜査犬です。犯人の中には、いつピーボに犯行がバレるかとヒヤヒヤしている者も。ファシリティドッグではなく、もはや刑事です。首輪に囚人患者の暴露話を録音するためのレコーダーを設置し、今日も立派にファシリティドッグを演じます。
何となく続編もやれそうな物語だったので、その時に期待。読み終わったあとは犬を触りたくなる、ミステリだけれど癒される一冊でした。
表紙のワンコと目が合うと絶対に読みたくなる”あるある”つき。短時間で読めるのでそういう本をお求めの方はぜひ。
以上、『犬は知っている』のレビューでした!