今回ご紹介するのは、イヌの歴史からイヌの生態まで幅広く網羅した愛犬家のための専門雑誌になります。

 

ちなみに愛猫家のための『ネコ全史』もあるそうなので、該当する方はそちらをチェックしてみるといいでしょう。

 

 

 

 

愛すべき友、頼りになる相棒、イヌ。

イヌと人間は4万年もの間、ともに暮らしてきた。本書はその長い歴史を、最新の考古学的、生物学的研究に基づき解説する。そして、なぜイヌと人間はこれほどまでに親密な関係を作れるのか、その秘密に迫る。

イヌは人間が家畜化した最初の動物といわれるが、その起源については今も謎が多い。第1章では、獰猛な捕食動物のオオカミが、こんなにも人懐こく人間の役に立つ動物へ、いつどこで変わっていったのかを探索する。第2章は、長い年月を費やして行われてきたイヌの品種改良について解説。第3章では、イヌの行動の秘密を解き明かす。科学的に見ると、彼らはどうやら、単に食糧を与えてくれるから私たち人間を愛してくれるわけではないらしい。

全編を通じて愛らしいイヌたちの写真であふれた本書は、イヌ好きの人にはたまらない一冊となるだろう。(あらすじより)

 

 

『イヌ全史』には、たくさんの愛らしいワンコたちの写真が載っています。が、この写真が出てくるタイミングというのが文章と文章の間でして・・少々読みづらいのがネックです。説明の途中でページが切り替わり、突然ワンコの写真が見開き2ページでドバーンと出てくるので、思わず見とれていると、次のページをめくったときには「あれ?何の話をしていたんだっけ?」となるので要注意。

 

『イヌ全史』の中身はもしかするとイヌ好きなら既に知っていることが多いかもしれません。少なくとも私はどこかで見聞きしたものが多かったです。また、イヌについては解明されていないことが多く、改めてイヌは人間にとって身近な存在でありながら最も謎に満ちた存在であると思いました。

 

 

 イヌの豆知識

 

『イヌ全史』には文章+写真の他に「イヌの豆知識」がメモ書きされています。

 

たとえば、イヌは本能的に体を丸めて眠る。臓器を守り、体温を維持するためだ。とか、イヌもオオカミも左右の目尻に第3のまぶたがある。などです。ちょっと恐ろしいですが、元朝の初代皇帝フビライ・ハンはマスティフを5000頭、所有していた。というのもありました。

 

 

 

 キツネを飼いならす

 

オオカミからイヌへとどのように家畜化されたのかを調べるために、1959年にロシアの遺伝学者がギンギツネを家畜化する過程を研究しました。養殖場のキツネから人懐こさがわずかでも感じられる個体を選び飼育したのですが、それから6年経つ頃にはキツネたちが驚くほどイヌに似た行動を取るようになったそうです。

 

10年経つ頃には身体的な変化も現れ、耳がたれ、尾が巻き上がりました。さらに実験を続けると、被毛にまだら模様が現れ、吻部は短く、丸く変化していきました。

 

私も最近SNSでギンギツネを飼っている人を見つけて、その飼いならし具合に驚いたのですが、イヌ科の動物は可愛がれば可愛がるほど人間好みに進化していくように思えます。もうイヌだってネイルをしたり靴を履いたりする時代だそうですよ。イヌの幼稚園や老人ホームもありますからね。凄いです。

 

 

 

 イヌの知能

 

イヌ好き以外の方にも興味を持ってもらえそうなのが「イヌの知能」についてのページです。ここには「賢い犬種ランキング(知能指数が高い順)」というのが載っています。

 

1位は王座不動のボーダーコリーです。古くから牧羊犬として活躍している彼らは、唯一じぶんで考えて行動できるイヌとしても有名です。2位はプードル。おそらくこれは毛の色によって多少の差はあるかもしれませんが、彼らの記憶力は抜群です。他の犬種と比べて短時間で学習してくれる気がします。3位はジャーマンシェパード。警察犬として活躍する姿をよく目にする彼らは、もうお顔からして聡明で誠実です。コマンドを理解する速さと行動の精密さはピカイチ。

 

4位はゴールデンレトリバー。彼らは人のことを本当によく見ています。また、人の気持ちや感情を察する能力に優れています。老若男女それぞれにあわせて対応しているところも凄い。5位はドーベルマンピンシャー。怖いイメージをもたれがちな彼らですが、パートナーへの忠実さは賢さの証拠です。黙々と仕事をこなす職人肌といったところでしょうか。

 

6位はシェトランドシープドッグ、7位はラブラドールレトリバーとなっており、どちらも本能的知能、適応力知能、使役・服従的知能に優れている犬種です。

 

 

 

 イヌの気持ちを科学する

 

実験によると、イヌはえこひいきされると、された方は報酬に対しやる気を出しますが、不平等に扱われた方は報酬に紐づけられた行動をやめてしまうそうです。実はオオカミも公平さを認識しているそうで、現在の家畜化されたイヌも群れから離れて協調性こそ低下したものの、人間を頂点とする社会で生きるうちに序列やステータスにより敏感になってしまったと考えられているそうです。なので多頭飼いしている方は、面白半分でえこひいきしたり、嫉妬させたりは絶対にしないでくださいね。たまにSNSで見かけるけど、イヌがかわいそうです。

 

ただですね。これはレトリバーと過ごすとウッソー!!と疑ってしまうのですが、イヌに共感力はないらしいです。正確にいうと、そのように指摘する科学者がいるのです。

 

イヌが人間の喜怒哀楽に共感してるように見えるのは、情報伝染(感情の伝染)が起きているからであって、他者の感情を理解しているわけではないそうです。へぇ~、でもこれについては犬を飼っている人は、ほぼほぼ「いや犬は人間の気持ちを理解しているから!」と思っているでしょうね。

 

 

 

 感想

 

短いですが以上が『イヌ全史』のレビューになります。日本では長いトイ・プードルブームが去り、デザイナー・ドッグ(ミックス犬)ブームが到来しているようです。デザイナー・ドッグとはふつうの雑種犬とは違い、2種類以上の純血種の犬を意図的にかけあわせたものです。しかしアメリカで暮らすイヌの半分以上は「オールアメリカン」と呼ばれる雑種犬だそうです。その人気の理由は、多くの品種が混ざった個体は通常、純血種よりも健康であり、まったく同じ容姿の個体は2つとなく唯一無二の相棒となってくれるから。近年、犬種の特徴を追うあまり、短頭種のブルドッグやパグなど、極端に不健康な品種が生まれていることが問題化されているので、この流れは良いのではないかと思います。さらにドッグショーでも雑種犬の出場が認められるようになり、イヌ界でも人種ならぬ犬種の多様性が開かれています。

 

デザイナー・ドッグに関しては、うーん、最近流行ってはいますが、ちょっと犬界のルッキズム的なものを感じてしまいますね。デザイナー・ドッグも雑種犬もどちらもミックス犬といった意味では同じですが、自然にできたものと人工的にできたものでは違うというか。飼育放棄されている犬で多いのがマルプーという情報からも、新たに不幸なイヌを生み出してしまっているのではないかと懸念するところではあります。

 

『イヌ全史』はナショナルジオグラフィックというのもあってか、日本犬が登場しなかったのは残念でした。日本については最初の方にちらっとだけすべてのイヌの先祖はニホンオオカミ(イヌと最も近縁なオオカミ)という研究もある的に語られているくらい。日本犬はハスキー級に見た目がオオカミっぽいですよね。あの頑固おやじでスキンシップそんないらんです的なところなんてかなりオオカミの血を引き継いでいるようにも思えます。

 

まぁ実際のところはまだまだ謎に包まれているイヌですが、今後色んなことがわかっても、わからなくても人間との絆は変わらないということで。イヌよ、これからも人間の友であり、相棒でいてくれ!!

 

 

以上、『イヌ全史』のレビューでした!