今回ご紹介するのは安藤俊介さんの『あなたのまわりの怒っている人図鑑 事例に学ぶアンガーマネジメント』です。

 

アンガーマネジメントとは、怒りと上手に向き合うための心理療法プログラムのことを言います。本書ではこのアンガーマネジメントを学ぶことで、私たちの怒りの感情をコントロールし、少しでも快適な日々を過ごせることを応援しています。さっそくですが、以下にそのスキルを身につけるためのメソッドの一部を紹介していきます。

 

 

 

 

怒りを引き起こす要因

 

まずは怒りの感情が起こる仕組みを見ていきましょう。本書ではそれをライターに例えています。

 

ライターに火をつけるには、着火石とガスの2つが必要です。このとき、着火石を「コアビリーフ」、ガスを「マイナス感情or状態」に当てはめて考えます。ちなみに「コアビリーフ」とは、私たちがそれぞれ普段から信じている”~するべき”という判断基準のことで、「マイナス感情or状態」とはストレスや健康状態などのことを言います。

 

火(怒り)は、この”~するべき”というコアビリーフが裏切られ、火花が散ったのと同時に、マイナス感情・状態というガスが加わることで発生します。つまりコアビリーフとマイナス感情・状態のセットが怒りをもたらすということです。しかし、どちらか片方だけでは大きな怒りにならないため、どちらかを小さくすることで、怒りの度合いも調節できるというのが本書のメソッドになります。確かに「コアビリーフ×マイナス感情or状態=怒り」であるなら、どちらかを小さくすれば怒りも軽減されるということですよね。

 

注意したいのは、「マイナス感情or状態」を減らしたいとき。実は「幸福」を増やせば「不幸」も増え、「不幸」を減らそうとすれば「幸福」も減ってしまう関係にあることがわかっています。想像してください。世の中が豊かさや便利さを追求すればするほど、幸福の値だけではなく不幸の値も上がってしまうことを。必ずしも経済の豊かさ=心の満足度ではありませんよね。

 

これからの時代は、幸福度を上げるよりも、不幸せ度をこれ以上、増やさないことが重要になってきます。本書では、最終的に怒る必要のあることには上手に怒ることができ、怒る必要のないことには怒らなくて済むようになる、その線引きができるようになることを目指しています。

 

 

 

怒りの事例

 

本書には、「あなたのまわりの怒っている人対処法」が事例別に紹介されています。公共の場、日常生活、インターネット、人間関係、オフィス、家庭、あらゆる場面で遭遇しやすい怒りをピックアップしたものになっています。以下は私が共感した内容になります。

 

 

立場が下の相手に怒る人

「この店は接客がなっていない!」「店長呼んで!」系の客。こういう人と一緒にいると恥ずかしいですよね。この手の人は、自分よりも立場が下、反撃してこない(できない)相手には強く出ます。しかもそんな相手に反論されたら逆ギレするという合わせ技。彼らは本来、とても気が小さく、その反動で自分より弱い立場の人を見つけると、反撃されない安心感から強く出ます。まぁうっぷん晴らしですね。本書では「怒っている人」へアドバイスしていますが、私は「怒られている人」向けの対処法として読んでいました。この場合は、彼らよりも上の立場の人を巻き込んで解決を図るのがヨシみたいです。

 

運転中に怒るロードレイジ

これは簡単にいうと煽り運転をしてくる人のことです。驚くことに彼らは被害者意識が強く、車内という匿名の守られた空間のみで態度が大きくなる傾向にあります。また、車の価格や運転技術を自分の価値と同一視しており、その序列が覆される(ショボい車に追い越される)と怒ります。ひょっとすると、煽っていた相手が車という鎧がなくても自信満々系の人物or車の見た目とは違った強めの人物だったらあっさり引き下がりそうです。しかし、煽られたら絶対に車から出ないことが大事です。

 

モンスタークレーマー

これもいる、いる。スーパーの掲示板に貼られているお客様アンケートとか理不尽なクレームばかりだもんなぁ。よくもあんなこと恥ずかしげもなく書けるなぁとドン引きしています。この手の人は、自分の望む通りの対応が得られるのが当たり前と思っており、それが裏切られると駄々をこねるようです。幼稚なので挑発せず、ヨチヨチしてあげれば満足します。

 

 

 

怒りの対処法

 

私自身、普段は自分がキレるより、どちらかというと八つ当たりされる側なので、ついつい怒られたときの対処法視点で読んでいました。その中でも「あ、これは自分も当てはまるかも」というイライラ事例があったので紹介します。

 

 

優柔不断さにイラっとする人

はい、私です。早くしてよーと思っちゃうタイプ。しかし、これは私が白か黒かしかない、グレーはありえないと思っているから怒ってしまうそうです。相手は自分よりも複雑で豊かな感性を持っているから決められないだけかも、と寛大な気持ちで接することが求められます。

 

スマホを目の敵にして怒る人

人と話している時にずっとスマホをいじっている人ってどうなん?な、私。しかし、これもスマホはもはや仕事や日常生活の必需品なので、価値観をアップデートする必要があるそうです。スマホを目の前で使っているからといって、相手を無視しているわけでも、軽視しているわけでもない。単に今はそれが当たり前になっただけと思うようにすればいいのだとか。確かに年賀状がハガキからメールに変わった時も大人は今の私みたいに怒ってたなぁ。でも今やメールが主流。私も価値観の変化に対応すればいいのですね。ちなみに既読スルーは「問題なし」と考えていいそうです。

 

子どものあらゆることに口出しする

これは大人なら誰しもありそうな事例。子どもがいない人でも部下や世の若者に対し、つい口出ししたくなる時はあると思います。しかし、そこはグッとこらえましょうとのこと。勝手に失敗させておけばいい。最終的には自分がいなくても生きていける(やっていける)人間を育てることが、自分の役割であると思えばいいのです。

 

 

 

感想

 

本書には他にも自分の怒りのタイプを診断する「怒りタイプ・チェックテスト」がついてきます。全部で6タイプあるのですが、私は「マイルールを貫く頑固な心配性」タイプでした。自分のルールを大切にしつつも、状況が変われば、その方法がベストとは限らないので、新しい考え方を取り入れるよう少しは譲ることをしてみて!とのこと。ホント、発想の転換は大事ですね。

 

私の場合、怒っているとき、「なんで言われたこともできないの?」「無責任だ」など、相手を追いつめる(実際は言わないけれど心の中では思っている)ことがあります。毎回同じことでも言わないと動かない人に対しては、言わなきゃ動いてくれないからもうハッキリ言うことにしていますが、それでも通じないときがある・・。そんなときは、主語が「You」になっていないかふり返ってみるといいのだそうです。

 

たとえば、「あなたの仕事が遅いから迷惑しているのですよ」ではなく、「私は仕事が予定通り進まなくて困っています」と、主語を「I」に変えれば、伝わるのは自分自身の思いであり、相手に責任を追及するようなニュアンスが薄まります。逆に「できないこと」をハッキリと伝えることも大事です。相手の気持ちを尊重しつつも、自分の言いたいことを伝える技術を身につける。「手伝ってあげたいけれど、今日は午前中に仕上げないといけない書類があるので、明日ならできるよ」などですね。これは勉強になりました。

 

今は怒りが娯楽になる時代でもあります。人に怒りをぶつけることでストレスを解消している人も多いです。はじめはそんな人への対処法として読んでいましたが、気づくと自分も結構イライラしていたんですね。いや、かなりイライラしていたかも。

 

こんなふうに怒りに支配されるのは時間の無駄ですよね。正直、特別参考になるような内容はありませんでしたが、だからといって「しょうもない!」と思ったら何の成長もないので、あえて積極的に(自分にとって必要な)いいところを見つけるようにしてまとめてみました。

 

結論をいうと、世の中みんな怒っている!!!

 

でも、負の感情に引っ張られないように、自分はスン!とした顔で乗り切ろうと思いました。

 

スン!とした顔というのは、何事もなかったかのような顔のことです。ある意味なにも考えていないような顔でもあります。

 

まわりから「あの人は動じなくて最強だわ」と認知されれば、おのずと怒りに巻き込まれることも減り、同じタイプが寄って来て、平和に過ごせるかも?怒る自分が間違っている!余裕がないみたいで恥ずかしい!と思わせたもん勝ち。猫のように優雅に一生を送りたいものです。

 

イライラしている暇があったら、自分の毛づくろいでもしてあげる方がいろいろと効率的。しょせん自分以外全員他人。わかりあえなくて自然。ただ、自分は人に対して誠実に生きよう!そうすると穏やかに生きられるかもね!ということでまとめます。

 

怒りに支配されている人は本書を読んでみましょう。怒ってばかりいる人より、感情が安定している人の方が絶対に生きやすいですから。

 

 

以上、『怒っている人図鑑』のレビューでした!