wikiより
今回は集英社さん出版の学習漫画『ヘレン・ケラー』をレビューします。
東海大学教授・鳥飼行博さん(監修)、海野そら太さん(漫画)、登坂恵里香さん(シナリオ)です。
見えない、聞こえない、話せない
ヘレン・ケラーといえば、「見えない・聞こえない・話せない」という3つの苦しみを乗り越えてきた奇跡の女性として有名です。日本にも3回来ており、身体障がい者福祉法を作ることに尽力してくれた人物でもあります。
名門出身の両親のもとに生まれたヘレンは、成長が早く周囲から「とても賢い子」だと将来を期待されていました。しかし、一歳七か月のとき、高熱が原因で視力と聴力を失ってしまいます。また、幼い子はまわりの人間が話す言葉を聞いてしゃべれるようになるため、医師からは「話すこともできないだろう」と診断されます。
こうしてコミュニケーション手段を奪われたヘレンは、誰にも気持ちを伝えることができず、誰の言葉も理解することができず、ほぼ野生児のように育ってしまいます。獣のように振る舞うヘレンにお手上げだった両親は、パーキンス盲学校からアン・サリバンという先生を迎え、教育してもらうことにします。
サリバン先生
最初は暴れるヘレンに苦労したサリバンですが、彼女の熱心な指導により、ヘレンは指文字や点字で会話ができるようになります。言葉との出会いによって家族とコミュニケーションが取れる喜びを知ったヘレンは、知的好奇心が芽生え、自らの希望で声を出す練習をしたいと言います。
忍耐強く特訓を重ねた結果、ヘレンは話せるようになり、次は「大学に行きたい」という目標を抱きます。女性で大学へ行く人がほとんどいなかった時代、まして目や耳に障害がいがある人が大学を受験すること自体、ありえないこととされていた時代。そんな時代に大学受験をするといったヘレンをつきっきりで指導し、支えたのもサリバンでした。
ここでも並々ならぬ努力を発揮したヘレンは、過酷な受験勉強の末に見事「合格」を手にします。
のちにヘレンはサリバンと出会った日を「わたしの誕生日」と表現したことは有名です。
自立を目指して
大学を卒業したヘレンは(電話を発明した)ベルをはじめ、多くの人から援助を受けて生活してきましたが、今度は自立するために”障がいがあっても色々な可能性があること”を知ってもらおうと講演会を開き、それで生計を立てることにします。
しかし、現実はそれほど甘くなく、最初はもろもろの事情でヘレンの講演会には人が集まりませんでした。また、自身につきっきりでプライベートを二の次にしていたサリバンは旦那から離婚を突きつけられ、話し合いの末ヘレンとの人生を選択していました。
ここで諦めてはいけない。苦境の中、そう思ったヘレンは、周囲に反対されようが、サーカスでもどこでもお呼びがかかった場所へ講演に行くことで顔を広めていきます。その活動が実り、ヘレンの講演は評判になり、募金も集まるようになりました。
残念ながら途中でサリバンは亡くなってしまうのですが、ヘレンは自分に生涯を捧げてくれた恩師のかわりに、今度は自分が困っている人たちの生涯を支えたいと、世界各地へ講演に行くようになります。
奇跡の人
ヘレンの活動は障がい者のためだけでなく、貧しい人や人種差別に苦しむ黒人、そしてまだ政治に参加する権利を与えられていなかった女性にも寄り添いました。
その後、アメリカ盲人協会の顔となったヘレンは、五種類もあったアメリカの点字の統一や、ヘレン・ケラー基金の創設、世界盲人会議の開催などに働きました。
学習漫画ではこれらのことがとてもわかりやすく書いてあります。本の最後にはヘレン・ケラー検定なるものがあり、問題に答えられれば本の内容を理解できている目安になります。
ヘレン・ケラーといえば「ウォーター」の話が有名ですが、私はそれと同時にサリバン先生の偉大さに感動してしまいます。自身の目も不自由であったのに、彼女はヘレンのために受験勉強でかなり目を酷使しているんですよね。数学の勉強で図形をイメージできないヘレンのために針金で三角形を作ってくれたり、アイディアも素晴らしい!まさに奇跡の人です。
そして何と言ってもヘレンは、当時の人が当たり前としていた差別や偏見にメスをいれた奇跡の人です。まだ人々の精神性がいろんなことに追いついていなかった時代に、それらを整えてくれた人。これは言葉以上に凄いことだと思います。
私が印象的だったのは、ヘレンが「今の自分がこうしていられるのは、自分が恵まれた環境で育ったからだ」と気づくところです。自分には教育のチャンスを与えてくれた両親や、それを手助けしてくれた大人や友人、そしてサリバン先生がいた。けれども、世界には誰からも救われず悲惨な現実を送っている人たちがいる。そう思い、あえて自分を苦しい立場に追い込み、自立への「覚悟」をするところがとても希望のような存在に思えました。
個人的にですが、数ある学習漫画の中でも、今回レビューした集英社さんの本が一番読みやすいなぁと思いました。『ヘレン・ケラー』は、子どもの頃に一冊は読んでおくといい内容だと思うので、オススメ★★★★★です!きっと忍耐力の素晴らしさを知ることになるでしょう。
また、大人になったら
↑こちらを読んでみるといいでしょう。
私ものほほんとしていられないですね。思わずそんな感想を抱いた一冊でした。
以上、『ヘレン・ケラー』のレビューでした!
こちらもいかが?