今回は犬と殺人事件が絡み合う小説をご紹介します!

 

 

この犬さえいれば、人生勝ち組――人間の欲望と犬の純真が交差したとき、噓・罪・謎が加速する。疾走感No.1作家が放つ、傑作サスペンス!六本木のセレブ妻という設定で、SNSにマンガ〈保護犬さくら、港区女子になる〉を投稿している梨沙。ある日、出版社の編集者から書籍化のオファーが来る。動画サイトで人気になれば億単位の収入も夢ではないという。年収一億円を夢見る梨沙は大胆な行動に出るが、想定外の“事件”に巻き込まれ……。殺人者は誰か、噓をついているのは誰か? 一度読みだしたらページをめくる手が止められない、疾走感満点の傑作長編ミステリー!

 

 

四コマ漫画つきの栞も入っています!

 

 

主人公の梨沙は超うそつき。本当は埼玉県民なのに港区女子を偽り、学歴は盛りに盛ってハーバード大卒、夫は東大卒の高級官僚で、自身は青年海外協力隊に参加して井戸を掘ったり、芸能活動をしたことがある(現実は携帯ショップの店員)などと経歴を偽っています。

 

ちなみに周囲には嘘だとバレバレ。しかし、そんなことを知らない梨沙はSNSでもっと過激なことをしています。なんと梨沙はミースタというSNSで、海外のアカウントから盗用した犬の写真を使い、<保護犬さくら、港区女子になる>という漫画を描いているのです。もちろん、犬など飼ったこともない梨沙は、漫画のエピソードまで他人から盗用しており、そこでも港区女子と偽っています。

 

そんな時、梨沙はコミット出版の寺本から本を出さないかと誘われます。それにあわせてさくらの日常を動画配信すれば一億円は稼げるだろうと言われます。強欲な梨沙は迷うことなく依頼を受けますが、寺本から書籍化にあたりさくらの未公開写真をいくつか提出してほしいと言われ混乱します。

 

ご存知の通り、梨沙は犬など飼っていません。写真もエピソードもすべて盗用。しかも写真にいたってはパクリ元の外国人がめったにSNSを更新しないため、新しいものを拝借することができないという事態に慌てます。

 

悩んだ末、梨沙はさくらにそっくりな犬を探すことにするのですが、そこでも事件が起こり―

 

 

まず梨沙は保護犬施設でさくらそっくりの犬を見つけます。譲渡の条件が単身者不可ということだったので、梨沙は応募の際、例の嘘だらけの経歴を書いてしまいます。これでクリアできる!と思った梨沙でしたが、面会に行くと、「旦那さんにも会わせてほしい」「犬の飼育に適した環境が整えられているか家庭訪問をさせてほしい」と言われます。

 

本当は単身者でペット不可のアパートに住んでいる梨沙。最初は動揺したものの、ここで諦められないとさらに嘘をつくことにします。

 

次に梨沙がやったことは旦那役をしてくれる人材確保と偽の家を用意することでした。旦那役は職場の上司に頼むことで解決しましたが、家の用意には手こずります。すると、偶然にも前から梨沙のことを気に入ってくれている中岡という客が入院しているという情報をキャッチし、ある計画を思いつきます。

 

留守の中岡家への不法侵入。それが梨沙の考えた案でした。家庭訪問の時だけ中岡の家を借り、難を逃れる。そうすればきっと上手くいくと信じたのです。

 

以前、中岡から合鍵の場所を聞いていた梨沙は植木鉢の下から鍵を取り出すと、勝手に家に入り、さっそく保護犬施設の人を呼んでしまいます。

 

 

そこには思わぬ展開が!!

 

な、なんと、誰もいない中岡家の部屋に見知らぬ女性の死体が置いてあり・・・

 

一瞬驚いた梨沙ですが、もう既に施設の人がやって来る時間が近づいていることに気づき、通報か隠蔽かに頭を悩ませます。

 

ここで通報したら自分の嘘がバレて一億円の話はなくなってしまう、でも隠蔽できたらさくらをゲットでき、書籍化も夢じゃない!

 

普段から嘘をついている梨沙は、感覚がマヒしているためすぐに隠蔽を選択し、死体を浴室に隠します。

 

 

こうして梨沙は一億円のため嘘に嘘を重ねていくわけなんですが・・・

 

実際にさくらを飼ってみると犬の純真無垢な心に癒され、浄化されていくんですね。

 

今まで嘘をつくたびに人が離れていき、孤独を感じていた梨沙にとって、自分を愛し頼ってくれる犬という生き物はとても愛おしくかけがえのない存在になっていきます。

 

さて梨沙の運命はどうなってしまうのでしょう?

 

中岡さんが退院してきたらおわりです。まっさきに合鍵のありかを知っている自分が疑われるでしょう。

 

SNSに関してもピンチです。既に何人かのフォロワーがさくらの写真が盗用ではないかとコメントしています。

 

そうそう、さくらの写真の背景が外国だと指摘され、とっさに「旅行に行ったときの写真だ」と返して大炎上したりします。「犬を飛行機に乗せるなんて虐待だ」と大騒ぎになるんですね。JALの事件を思い出すシーンでもあります。

 

それにしても嘘とSNSの相性は驚くほど良いみたいです。

 

梨沙みたいな人は現実にもとても多いことでしょう。

 

嘘をつくだけ虚しくなるのにね。

 

何事もほどほどに。

 

誰かに愛されたい!認められたい!という人ほど、わりと本気で犬を飼うといいのかもしれません。

 

 

以上、『一億円の犬』のレビューでした!

 

 

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