「女の子はおじいちゃんと寝ないといけないんだよ」

 

小学校二年生の友梨は同じ団地に住む仲良しの里子ちゃんからこう言われます。

 

この会話を聞いていた友梨の家族は里子の身に起きていることを察しながらもスルーします。

 

もちろん、幼い友梨には里子の言葉の意味することがわかりません。

 

しかし五年生になった時、友梨は里子から呼び出され、「もし、あのことを誰かに言ったら殺すから」と言われます。

 

 

さらに時は流れ、中学生になった友梨は新たに団地に引っ越して来た真帆と友達になります。

 

ある日、真帆は刃物を持った不審者に襲われます。その現場を目撃した友梨は真帆を助けようと不審者に飛びかかり、もみ合いになります。

 

その結果・・・

 

正当防衛ですが、友梨は不審者を刺してしまい、真帆に連れられ逃走します。

 

帰宅した友梨は、いつ警察から連絡が来るかビクビクしながら夜を過ごすことに。

 

翌日、いつものように目覚めた友梨は衝撃の事実を知ることになります。

 

なんと、不審者を殺害したとして、里子が警察に連れて行かれたのです。

 

 

と、前置きが長くなりましたが、これが『インフルエンス』のあらすじになります。

 

 

 

 

何が起きたのかと言うと、あの夜一部始終を見ていた里子が友梨の罪を被ったわけなんですが。この事件を機に、真帆には友梨に罪悪感が、友梨には里子に罪悪感が生まれます。そしてそれが思わぬ事態を招くことになり・・・

 

詳しくは言えませんが、ここから彼女たちは代理殺人のようなことを繰り返していきます。互いがつくった罪悪感を帳消しにするために、それぞれが勝手に行動していきます。

 

三人は歪な繋がりを持ったまま大人になって行くのですが、最後に驚きの展開が待っています。

 

単純に仲良しとは表現できない謎の関係性。インフルエンス。ここから先の青枠部分は少々ネタバレになるので、見たい方だけお進みくださいm(__)m

 

真帆のために殺人を犯した友梨は、里子にその罪を被ってもらったことで罪悪感を抱きます。いえ、正確にいうと、友梨は小学校二年生の頃に里子を救えなかったことにも罪悪感を抱いていたので、その申し訳なさは二倍に膨れ上がっていました。そんな友梨に少年院から戻って来た里子は、「自分の代わりに祖父を殺してほしい」と依頼します。一方、友梨を人殺しにしてしまった挙句、里子に罪を被ってもらった真帆はその責任の重圧に窒息しそうになります。そして友梨が里子から祖父殺しを依頼されていることを知ると、これは自分がすべきことではないかと思うようになります。

 

ネタバレといってもココまでにします。実はこの物語、まだまだこの先があります。なので、最後の最後まで代理殺人の行方をスリル満点で見守ることになります。

 

ここまでのあらすじを読むかぎりだと、彼女たちは強い絆で結ばれているのではないかと思ってしまいますよね。しかし、それはちょっと違います。

 

まず小学校低学年頃まで仲良しだった里子と友梨は、高学年に上がる頃には既に別階層に属していました。

 

いわゆる里子は美人で目立つタイプ、友梨は地味で大人しいタイプだったので、グループ分けのない低学年の頃と違って高学年になる頃には、完全に別行動をするようになっていたのです。

 

それは中学生になってからはもっと露骨になり、里子は不良グループへ、友梨は余り者の寄せ集めのようなグループへ移動します。

 

つまり実際にふたりが親しかったのは小学校二年生までということになり、他人からするともはや関わり合いがあった時期すらない関係に見えます。後に代理殺人へと発展しても、まさかここが繋がっているなど誰も思いません。これは双方にとって目くらましになるため、好都合な関係性でもありました。

 

それは友梨と真帆の関係性にも当てはまります。友梨と真帆は同じグループではありましたが、生活環境に違いがありました。子供同士は親しいのに、親が子供同士を関わらせたくない、そんなパターンです。

 

真帆は両親が離婚し、母親に引き取られ友梨が住む団地に引っ越してきましたが、父親に経済力があるらしく、これまで教育熱心な家庭で育ってきました。友梨の家はごく一般的な家庭で何事も平均的に育てられたため、真帆のハイクラスな生き方についていくことができませんでした。

 

こうして別々の高校に進学したふたりは、その後交わることなく生きていくのですが、やはり心の中には”共犯者”的な意識が残っており、完全に繋がりを消すことができずに大人になります。

 

自分たちが繋がっていることを誰にも知られてはいけない

 

本書はこの焦燥感をテーマに楽しむことになります。
 

繋がりがバレれば、ほころびが出る。だから絶対に親しくしていた時期があったなど知られてはならない。

 

さて、彼女たちは最後まで知らん顔を貫いたまま無罪でいつづけられるのでのでしょうか。その行く末が気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。

 

スリルを味わいたい方にはオススメの作品。

 

『インフルエンス』

 

あなたは負の連鎖を断ち切ることの難しさを知ることになるかもしれません。