おかしな住人たちが集まる古びたマンション”湊レジデンス”。本書はその中から選りすぐりの(?)ヤバイやつを描いたサスペンス小説になります。

 

 

 

 

中学三年生の望は成績優秀ですが、女性を狙ったひったくりがやめられません。小学校時代には万引きにもハマったことがあります。

 

有名私立中に合格するも、成績最下位の弓矢は、友人を引き連れ自転車泥棒に暴行することでストレスを解消しています。

 

弓矢の兄・充也は、父親の再婚相手の連れ子である弟に劣等感を抱いています。

 

交通事故に遭い就職できなくなったフリーターの根岸は、事故の原因を作った女性を恨んでいます。

 

他にも湊レジデンスに住む男性をエレベーターで捕まえ、部屋に誘い込んでは体の関係に持ち込む謎の中年女性や、常に近辺の男を物色し、”売り”をやっている女子校生などがいます。

 

このヤバイ住人たちは本人たちの気づかぬところで、実は全員が繋がっており、非常に奇妙な関係性を持っています。

 

本書の感想を一言で表すなら、狭いところで悪いことをしたらいけないね、です。

 

たとえば根岸を事故らせた女性が充也の彼女だったり、弓矢(充也の弟)がリンチされたとき通報してくれたのが根岸だったり・・。まぁとにかく色んなところでごちゃごちゃに絡み合っています。

 

これまで何百冊ものレビューをしてきましたが、本書に関しては「こんなところに住みたくない」「みんな狂ってる」くらいしか感想がありません。物語自体も淡々としており、ひたすら彼らの”やらかし行動”が書かれているだけ。主に、衝動・欲望・本性がテーマになった一冊となっています。作中に「ここには善人だけが住んでるとでも思ってるんですか?」という台詞があるのですが、逆にこんなヤバイ住人しかいないマンションなんて想像つかないよ!とツッコミたくなります。

 

始まりも終わりもずっとダーク。おそらく日頃の鬱憤が溜まった人には、共感できるキャラクターいるのでしょう。ただ、まったく理解できない!という方からすると、読みやすく短い本なのに、なかなか読みすすめられず苦戦する一冊になるかもしれません。

 

イライラするから犯罪行為を重ねるというのはちょっとね。捕まりたくなかったり、報復にビビるくらいならやらない方がいい。やはり人は自分が尊重されていないと思うと、自分も他人も大切にできなくなるものなんだなぁと思いました。

 

好き勝手いった中で、ひとつだけわかるのは、本書は時間をおいて読んだら感想が180度変わるのだろうなぁということ。

 

人って怖い。破滅って怖い。ラストは本当に怖ろしい。

 

以上、『レジデンス』のレビューでした!