こちらは小説投稿サイト「野いちご」から書籍化された一冊になります!

 

 

野いちごとは

スターツ出版が運営する小説投稿サイト「野いちご」。サイトで人気が出た作品は「文庫」「単行本」「コミック」等、様々なレーベルから出版しています。小学生から主婦まで、だれでも作家デビューのチャンスがあります!

 

 

 

女子小中学生から大人気の野いちごジュニア文庫をご存知の方は多いと思います。何だそれ?という方に説明しますと、「野いちご」に掲載された小説を読みやすく、可愛いイラスト付きにしたものが野いちごジュニア文庫になります。小中学生が大好きなキュンキュンする青春ラブストーリーがメインになっており、まさに思春期女子のための児童文庫ノーベルといった感じ。

 

実は櫻いいよさんの「星空は100年後」も、小説投稿サイト「野いちご」の方で無料で読めちゃいます。ただ、今からご紹介するのは、書籍化された方の「星空は100年後」なので、ケータイ小説版のものとは違い加筆修正され、少し大人向けになっています。今回は櫻いいよさんの作品をレビューしますが、興味のある方はサイトを覗いてみて、気に入った作者の作品を親子で楽しむなんてのもいいかもしれません。親は単行本、子供はジュニア文庫を読むのも良さそうですよね。

 

 

さて、「星空は100年後」のあらすじがどんなものかといいますと・・・

 

 

俺はずっとそばにいるよ―。かつて、父親の死に憔悴する美輝に寄り添い、そう約束した幼馴染みの雅人。以来美輝は、雅人に特別な感情を抱いていた。だが高1となり、雅人に“町田さん”という彼女ができた今、雅人を奪われた想いから美輝はその子が疎ましくて仕方ない。「あの子なんて、いなくなればいいのに」。そんな中、町田さんが事故に遭い、昏睡状態に陥る。けれど彼女はなぜか、美輝の前に現れた。大好きな雅人に笑顔を取り戻してほしい美輝は、やがて町田さんの再生を願うが...。切なくも感動のラストに誰もが涙!

という感じになります。手抜きな手法を使ってしまい、すみません(笑)簡単にいうと父親が亡き後、ずっとそばで支えてくれた幼なじみに恋人が出来てしまい、嫉妬に苦しむという物語。切な~い。

 

この幼なじみの雅人くんは、父親の死でショックを受ける美輝に「俺は、美輝のそばにいるよ。ずっと」なんて言うんですよ。美輝の父親は生前これと同じ台詞をよく言っていたのにも関わらず、あっけなく逝ってしまったので、美輝にとっては最強フレーズだったわけです。

 

なのに、それなのに、雅人は高校に入学してすぐに学年一の美女と付き合ってしまったので美輝は裏切られた気持ちになったんですね。あの約束は何だったんだよーと。おまけに雅人も高身長イケメンなのでお似合いの美男美女カップル。雅人は彼女の町田さんにデレデレで、以前のように遊んでくれなくなり・・・

 

が、しかし!なんとこの町田さんは学年一の美女と噂されているだけでなく、男をとっかえひっかえしてばかりの悪女としても有名人。それは単なる噂や誤解ではなく事実なんです。そのことは美輝も知っており、なぜ雅人は顔だけの女に引っかかってしまったのかと納得がいきません。怖っ

 

そんな美輝の心情をすべてお見通しなのが雅人と共通の友人、賢です。美輝と賢は雅人を通して仲良くなり、雅人に彼女が出来るまではいつも3人で遊んでました。賢は美輝の気持ちを誰よりも知っていて、美輝が町田さんに嫉妬する度になだめてくれる存在でもあります。そしてお約束の展開ですが、どうやら賢は美輝のことが好きっぽいのです。

 

一方、町田さんは町田さんで、美輝の存在が気になっています。天然の雅人が彼女の前で美輝の話ばかりし、美輝がいかに立派な人間かを語るからです。このままではいつか女のバトルになるだろうと思っていると、案の定そうなります(笑)しかもそのバトルの後に町田さんが交通事故に遭い、昏睡状態になってしまいます。

 

美輝としてはバツが悪いし、罪悪感もあります。なのに事故を通していかに雅人が町田さんのことを大切にしていたかを知り、二重にショックを受けます。後々わかったのですが、どうやら美輝と町田さんが言い争ったあの日、雅人も町田さんと美輝のことが原因で喧嘩をしていたそうで・・。こんな状態で町田さんとお別れするのは絶対にあってはならないと美輝は強く思います。

 

しかーし。ここでまた新たな新事実が。なんと事故が遭った日、町田さんは元カレと一緒に過ごしていたことが判明します。それを美輝に教えてくれたのは、昏睡状態のはずの町田さん(の生霊?)。なぜだかわかりませんが、町田さんは入院中の自身の体から抜け出し、美輝の周りをうろつき出すのです。

 

ここでふたりは再びバトルを繰り広げるのですが、互いにわかったことがあります。それは雅人が美輝の前では泣かないで笑顔を絶やさないこと。町田さんの前では泣くことです。また雅人にとっての美輝は誰の悪口も言わない、人生の困難にも弱音を吐かない素晴らしい人間として映っており、対して町田さんはその不器用な性格から人付き合いが上手くできない心配な子として映っていることがわかりました。

 

そうなんです。雅人はちゃんと町田さんのダメな部分を知っていた上で好きになったようなのです。ここについては美輝も町田さんと過ごす中で、彼女のポンコツなのに気取っている姿や、それをまったく隠しきれていないところなどを知り、その見た目とのギャップに憎めなくなってしまうのですが。また、雅人が幼い頃にしっかり者の美輝に助けてもらってばかりだったからこそ、今度は自分が美輝の前ではしっかりしたいという気持ちから弱さを見せず、笑顔を絶やさなかったこともわかりました。

 

同じように美輝も、幼い頃から自分を信頼してくれる雅人の前では強くあらなければならないという気持ちから、ずっと本音を見せずにいたことに気づきます。父親が亡くなったあの日、本当は泣きたかった。けれども「(お父さんのかわりに)ずっとそばにいるよ」と励ましてくれた雅人の前では泣くことができなかったのだ、と。

 

これは恋愛感情というよりは、情に近いですよね。どちらかというと家族に対する気遣いに近い感じがします。雅人には美輝に対して尊敬があるし、恋愛とは違った意味で大切な人。美輝にとってもそれは同じ。性格が真逆だからこそ、助け合えて、互いにカッコつけられた部分がある。幼い頃から一緒にいて、雅人の一番の理解者は自分だと思っていたけれど、いつしか弱さを隠し合う仲になっていたなんて。しかも最初にそれをしたのは美輝の方からだったなんて。

 

実は美輝が町田さんを嫌っていた理由のひとつに、亡くなった父親と町田さんが重なるというものがありました。もしかしたら私は雅人と付き合っているから町田さんが嫌いなのではなく、父親と町田さんが似ているから嫌いなのかもしれない。美輝と父親の間にあったことはここでは言わずにおきますが、美輝は父親と同じようなタイプの町田さんが許せないという個人的な事情で、雅人の恋を応援できなかったのだと反省します。

 

ん?どういうことだ?という部分はあえて残しますね(笑)そこはぜひ実際に本書から確認をしてみてくださいね。美輝と賢のことも含めて♡とにかく本書をまとめると

 

本当に好きな人の前では弱い自分も見せられるし、相手の涙も受け入れられる

 

結局はそんなことを伝えているのかな、と思いました。

 

 

えっと余談として、本書には結構ミスがあります。たとえばP53で町田さんが「先に私が雅人くんに誘われてたんだけど、今日は別の約束があったから雅人くんと遊べなくなって。冴橋(美輝の名字)さんがわたしのかわりに一緒に遊んでくれてよかったなーって思っただけ」というシーンがあります。美輝が「わたしは町田さんのかわりなんかじゃないよ」というのに対し、町田さんは「でも、私に用事がなかったから、冴橋さんが誘われたんでしょ?」と言い返すのですが、これ正しくは「私に用事があったから」だと思うんですよね。他にも賢と雅人の名前がごっちゃになっているところなどもあり、驚きました。

 

またいくつかツッコミどころもあります。父親の亡き後、シングルマザーとして専業主婦から社会復帰した母親が仕事の付き合いで苦手なお酒を飲んだり、朝早くから夜は遅くまで働くシーンでも、美輝は身体の心配をするのかと思いきや「大人は大変だ」と他人事のように言っていてひっくり返りました(笑)え、待って!数行前の描写は何だったのって。

 

そんな細かなところは流して、とりあえずキュンキュンしたいという子は読書のいいきっかけになると思うので、超絶読みやすいコチラの小説をオススメします。もちろん健全なハッピーエンドなので安心を。

 

ちょっと余談で、好きなことを言ってしまいましたが、櫻いいよさんはシリーズ累計50万部を突破したあの「交換ウソ日記」の著者でもあるので、チェックしておくといいかもしれません。単純に物語の世界観を楽しむにはベストな作品だと思うので、若い頃に気持ちだけは戻りたいという大人の皆さんもいかがでしょうか?一緒にセカンド青春をしましょう!

 

以上、「星空は100年後」のレビューでした。