世界人口の32%を占めているZ世代。具体的に何年生まれからがその世代に該当するのか明確な定義はありませんが、概ね1990年代中盤(または2000年代序盤)以降に生まれた世代を指す言葉として使われています。
欧米諸国では移民・難民の影響もあって、Z世代の人口が他の世代よりも多く、アメリカにおいては近い将来、経済の主役になる存在と考えられています。一方、少子化に悩む日本のZ世代人口は1886万人ほどで、これは総人口の約15%に過ぎません。「それなら日本のマーケティング対象の中心は、現状通り高齢層でいいのでは?」「日本には関係のないこと」、なんだかそんな声も聞こえてきそうですが実はそれ、非常に危険な考えなんですよね。
確かに今だけを見れば、人口割合の多い高齢層に重点を置くのはわかります。しかし、人間には必ず老いや寿命が来るので、いつか彼らもアクティブな存在ではなくなってしまいます。また、そうなってからようやく消費対象としてZ世代に目を向けたとしても難しいものがあるのではないでしょうか。
人間は若い頃に好んでいた企業や商品、文化からなかなか離れられないといわれています。わかりやすいのが音楽で、多くの人が14歳頃に聴いていた音楽を生涯好む傾向にあるそうです。よって今、Z世代をしっかり研究しておかなければ、将来彼らからお金を出してもらえる可能性が減ってしまうのです。現にZ世代の女子は中年になっても韓国コスメに良いイメージを持ち続けることは何となく想像できますよね。逆に中年層で今から韓国コスメを使う人は少なく、昔から慣れ親しんだ国産メーカーのコスメを愛用する人の方が多いかと思います。
現状の顧客ばかり見て、未来の顧客を捨てた先には暗い未来が待っている。そう思うと怖いですよね。それに消費者として魅力的だったシニアなんていうのも一昔前の話で、これからのシニアは老後資金に不安を抱えた人で溢れかえることになるでしょう。2025年にはそういった層が75歳に達し、寝たきりになる人や何をするにも億劫になる人が増え、ますます消費されない社会になっていくと考えられています。
「今の若い子って数が少ないでしょ。お金持ってないでしょ。だからターゲットにしてもしかたないでしょ」
それでもまだこんな声が聞こえてきそうですが、実は中高年向けの商品でもZ世代を無視できない理由があるのです。今は若者がメインターゲットではない商品であっても、生活のデジタル化が上の世代よりも進んでいるZ世代に、上手くその商品の魅力を伝えることができれば、あとは彼らがSNSを通して拡散してくれ、それが結局他の世代にも広まっていく流れが出来つつあります。例えば「愛の不時着」「梨泰院クラス」などの韓国ドラマは、多くの若者たちの面白いという声をテレビなどのマスメディアが取り上げたことで、中高年にも広まっていきました。人口こそ少ないZ世代ですが、SNS利用率はどの世代よりも高いため、デジタル上での宣伝・購買力が強いのですね。こんなことからも、Z世代を起点に全世代へと広めるという戦略は、今後大事になってくるのではないでしょうか。
実はこのようにSNSでバスったことが、やがてテレビなどで取り上げられ、全体的なブームになるというのが近年の流れになっているので、企業は売りたい物があれば若者の宣伝力にどんどん頼ってしまった方がいいのです。特にインスタグラムやTikTokなんかはアイディアが凄くて、全然興味のない広告でも広く見てもらえるように上手に組み込んでいます。YouTubeとは違い、どこからが広告なのかわからないほどリアルにできているので私も思わず見てしまうし、その商品が欲しくなってしまいます。でもよく見てみると高齢者用のファンデーションだったするんです(笑)結局あまりのカバー力の強さに年齢関係なく欲しくなってしまい・・自分が試して合わなかったら親にあげればいいかと思った時点で企業の思うつぼなんですよ。これで上の世代にも広めてしまう。悔しいけれど商売上手だと思います。
では、どうやったら日本の企業も若者を使って宣伝してもらえるの?というのが本書に書かれている重要なところでして。彼らに興味を持ってもらうには、きちんと調査していないと難しいよ~ということなんです。Z世代は生まれながらのSNS世代ですからね。同じく思春期から携帯電話を持ちはじめた「ゆとり世代」とは共通点があるようで、似て非なるものなんです。
ゆとり世代が携帯第一世代だとするなら、Z世代はスマホ第一世代で、メールとmixi、iモードくらいしかできなかったゆとり世代とは違い、Z世代はスマホひとつで何でも満たされてしまう時代に育っています。ゆとり世代がすっかり疲弊してしまった「人とのつながり」がメインとなったmixiやFacebookから、「発信すること」が主軸となるツイッターやインスタグラムにハマるZ世代。こうした発信型のSNSを経て、Z世代は「自己承認欲求」や「発信欲求」が過剰な傾向にあるといいます。
まぁ日常的に「いいね」を押すこと、貰うことが当たり前の彼らがこういった欲求を強く持つのは自然なことですよね。また、ゆとり世代よりも少子化が進み、ひとりっ子率も増え、全体的に大人たちから過保護にされてきたことも、彼らの過剰な自意識に影響を与えていると考えられています。
Z世代の特徴として親子仲が良いというのがあるのですが、これも少し前なら母と娘限定の現象でした。しかし現在は母と息子、父と娘にもこの現象が見られ、友達よりも親に恋愛相談する子も多いのだとか。反抗期どころか、思春期の男子も母の日に花束やプレゼントを贈ったり、ふたりで旅行したり、買い物に行ったり、服を共有したり、GPSを共有したり。そしてそれをSNSにアップするということなんです。確かにYouTubeで子から母へのサプライズ企画を目にすることは多い!そのコメント欄も「優しい」という称賛で溢れているので、子供にとってある種の承認欲求が満たされていることがわかるし、何だったら親の方も「愛される私」に満足していると思います。こういったことからも企業は、恵方巻で売れ残りを大量発生させるより、母の日で儲けた方がよさそうですよね。
最近流行っている「推し活」も、親子でやっている場合が多く、その推し活に欠かせないのがSNSなので、若者の情報力というのは親にとっても頼りになります。また、推し活は恋愛とは違って自分を傷つけないというのも、私だけを見て!なZ世代にとっては相性が良さそうです。やはりこれからは親子まるめてターゲットにするのがトレンドになるかもしれませんね。
と、まぁこんな感じで、若者たちを攻略して経済に生かそうということが本書ではひたすら書かれています。
ちょっと途中からZ世代に流行っているもの紹介になっていたのが気になりましたが、高齢者ばかりでなく若者もちゃんとターゲットにする社会にしようという点においては大変共感できました。
だってテレビ番組の内容はあまりに酷すぎますもんね。まったく世代交代のないMC。健康番組がやっとなくなったと思ったら、今度はクイズ番組だらけ(ほぼ脳トレ)。全然面白くない古臭いドラマ。そりゃ化粧品メーカーもテレビCMからデジタル広告に移行して正解ですわ。
個人的には世代によって色分けしたり、レッテル貼りするのは大嫌いですが、世界で流行っているアプリのほとんどが実は若者向けであり、結局時間をかけてそれを上の世代が使う流れを見る限り、この層を無視するのは得策ではない気がします。
コロナ禍の自粛期間も若者の購買意欲は下がらなかったという点からしても、戦略次第で日本が賑やかになるんだというところをもう一度見てみたいと思いました。(私は生まれてからずっと失われた●年の層ですが笑)
いつの世も明るく、華やかがいいですよね。
以上、まとまりのないレビューでした!
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