今回は澤村伊智さんの学園ホラーをご紹介します。といっても、そんなに怖くないのでご安心を。ホラーよりもミステリー要素の方が強いので、ビビる必要がまったくございません!

 

ストーリーは、とある高校の三年二組でカースト最上位の美女が自殺してしまうところから始まります。誰よりも人生充実していそうなあの子がなぜ?遺書もなければ、いじめられていたわけでもないのに。しかし、彼女の死をきっかけに、その後カースト二位の女子やその仲間たちが続々と不登校や自殺へと追い込まれていきます。


実は彼女たちには、ある日突然、容姿がとんでもなく醜くなってしまうという共通点がありました。そしてそれは、この高校で古くから伝わるおまじないが原因だという噂が広まり・・・・。

 

そうなんです。この高校では、クラスメイトを美しくも、醜くも自由自在に操れるおまじないが存在するのです。しかし、それは誰にでもできるおまじないではありません。数年に一度、「ユアフレンド」を託されたものだけにしか使うことができないのです。

 

「ユアフレンド」とは、昔流行った占い雑誌のことで、この学校には奇妙なことに存在しないはずの「ユアフレンド 昭和六十四年四とか・・。これは当時三年二組に在籍していた女子生徒が作った幻の号で、彼女直伝のクラスメイトの容姿に呪いをかけるおまじないが載っています。

 

では、一体誰の手に「ユアフレンド」は渡ってしまったのでしょう。現にクラスメイトの数名が被害に遭っていることからも、受取人は既におまじないを使っているということになります。おそろしや~。


ネタバレはしませんが、みなさんだったらどんな子が犯人だと思いますか?やっぱり容姿にコンプレックスを持っている子に「ユアフレンド」は届くんじゃないか?それはもちろんカースト下位の人間に決まってるでしょ??ふむふむ

 

本書はこうしたスクールカーストの汚くてドロドロした部分を抉った一冊でもあります。そして人はとことん自分以外を見下す生き物なんだなとつきつけられます。下位だからといって誰のことも差別していないわけではないということや、上位に置かれているからといって、自分に自信があるわけではないことなど複雑な人間模様が書かれています。

 

まぁ結果、毒親を持っていると、上位だろうが下位だろうが同じようなことで悩んでいるんですよね。だからこそ犯人が誰にでも該当してしまうといっていいのかもしれません。(下位の子も普通に呪われます)

 

それでも、もし自分に「ユアフレンド」が回ってきたら、クラスメイトに呪いをかけてしまうのか。ここは本書最大のポイントですね。最初にもチラッと書いたのですが、このおまじないはよく見ると、クラスメイトの容姿を醜くするだけでなく、美しくもできるのです。もし犯人が私に美しくなるおまじないをかけてくれれば、ブスから美人に大変身も可能。どうです?みなさんならどうされますか。

 

上位も下位も狙われるなら、ブスでも安全ではなく、もっとブスにされてしまうわけで、それなら犯人は誰だかわからないけれど媚び売っとこ!美人にしてもらお!みたいに、私ならなりそうです。(ちなみに呪いをかけられると得体の知れぬマジで人生終了な容姿にされる)

 

あれ?そもそも、美しくなれるおまじないをかけれるなら、「ユアフレンド」の継承者が自分自身にそのおまじないをかければいいじゃない。そうすればわざわざクラスメイトを傷つける必要もないのだし、と思ったアナタは鋭いです。ただ、残念ながらこのおまじないは、本人にはかけることができないのです。

 

ということで、もう一度考えると、結局は人って自分が満たされていれば人のことはどうでもいいんですよね。自分がキレイであれば、他を呪う必要性すら感じない。たとえおブスでも「ユアフレンド」が回ってきたとき、自分に効果がないならいらないや、となった人は健全かもしれません。本来はそうですよね。自分の容姿が嫌いなら、「だったら他のやつもブスになれ」ではなくて、「私も美人になりたいな」が先のはず。そこが逆になるということは、見た目以外の何かにも傷がついてしまっている状態なのでしょう。

 

それを踏まえた上で、アナタならどうでしょうか。「ユアフレンド」を手にしたら、自分がキレイになれる効果がないのなら捨てるorせめて他人だけでもブスにしたい?

 

そうなると、私は何でも普通が一番いいかな。それが最も難しいですし。容姿も特別でなく普通がいいです。見た目だけ変えたとしても心が病みそうだから。

 

なんだかブスブス言い過ぎて、下世話なレビューになってしまい申し訳ありません。みなさんはおキレイだと思いますが、容姿にケチつける話って聞くだけで気分悪いですよねー。

 

それでも高校生くらいって、男子が女子にこっそりランキングをつけていたり、平気でブスブスいったりするものだからこういう物語が生まれてくるのでしょう。もちろんその逆もあり。

 

本書の参考文献に「教室内カースト」が含まれているのですが、まぁ教師たちによる生徒へのランク付けと差別もえげつないお話でしたよ。

 

 

むしろ生徒同士のソレよりも、おまじないなんかよりも、教師たちのやり取りの方が読んでいて大変クソでした。この本、高校生のときに存在していたら、共感しまくりで楽しんじゃったかもしれませんが、大人になった今の感覚で読むと「アホらしい」と思うことばかり。ホントくだらない。

 

多分、人を見る目が未熟だと、何でもかんでもブスに見えて他者を攻撃しちゃうんでしょうね。

 

とりあえず、世のお父さん、お母さんは我が娘に毎日カワイイね、と声をかけてあげてください。それだけで、お子さんは救われます。強くなります。

 

以上、「うるはしみにくしあなたのともだち」のレビューでした!

 

 

表紙を見ても誰がどの子なのかわからない・・涙