今回ご紹介するのは、小手鞠るいさんの「女性失格」です。
女性失格
女性失格
あ、なんか面白そうなタイトル♪どういうこっちゃ♪
と思い、何の情報もなしに手に取ってみた本。しかし冒頭を読んですぐさま理解。
私は、その女の写真を三葉、見たことがある。
あ、あれ、こ、これは、「人間失格」やん。太宰治やん。
まさかまさかと読み進めていくと、あっという間に「第一の手記」へ。もう完全に人間失格やん。しかも主人公の名前が葉湖。葉ちゃんって呼ばれてる。女性版人間失格やん。
そうなんです。実はこちらの本、あの太宰治の有名な「人間失格」を下敷きに書かれているんです。
この手記に登場する葉湖は、生まれながらの寂しさを消すために、女が女になり、女でしかなくなっていきます。もちろん、ところどころは「人間失格」そのものなんですが、まったく同じではないといった物語。私は原作とどこがどう違うのか、どこが同じなのかを探すのに夢中になってしまい、しかも葉湖ってどこか小手鞠さん自身なんじゃね?と思わせる要素があったりでプチ混乱に陥りました(笑)
ちょっと前に小手鞠さんの「文豪中学生日記」を読んだのですが、そこに出て来る子が同じく小手鞠さんが自身の学生時代をモチーフにした一冊「思春期」に書かれているエピソードと似たことをしていたんですよ。さらにこの「女性失格」でもその二冊と似たものを感じたので、葉ちゃんは小手鞠さんでもあるなーと思ったのですが、実は「文豪中学生日記」では、文芸部に所属する主人公が人間失格について語るシーンがあったんですよ。あったと思ったら、コレですよ!あの本はこの本にも繋がっていたのかーって感じです。
すみません、興奮したら語彙力が破壊してしまいました。
しかもですね、その文芸部に所属する主人公は、「人間失格」の「ワザ。ワザ」のシーンが好きみたいなことが書いてあったと思うのですが、ここ「女性失格」でもそれはきちんと取り込まれているのです(笑)
原作では普段「道化」を演じていたのがクラスメイトにバレてやっべーということでしたが、本書では出来る子ができないふりをしているのを「わざとでしょ」と言われて焦る展開になっています。ほら、女は目立つとハブられちゃうところありますから。
葉ちゃんは女の世界が嫌いで、自身が女であることにも嫌悪感炸裂中みたいな子なんです。けれどもその違和感は結局「男」でしか埋められないとも思っています。しかもこの子、子どもの頃からずーっとこんなふうに性のことばかり考えているのだから生きにくいだろうなーという感じ。葉湖はなんでこんな性格なの?と思うかたも多いようですが、そこに理由などなく生まれつきのものだからどうしようもならないんじゃないですかね。あと実は葉ちゃんみたいな子はゴロゴロいるってのも言いたい。
多分、読み終えた後は、筆者はなぜ「人間失格」をオマージュしようと思ったのだろう?という疑問が来ます。
これは勝手な感想ですが、太宰の女性観のうちのネガティブ部分を集約すると葉湖になるってことなのかな??
太宰は「男性失格」ではなく、「人間」の失格を書いたわけですが、結局本書も「男性」「女性」関係なく、やっぱりひとりの人間の苦悩に思えましたね。
レビューではとにかく暗いというコメントが多いので、これから読む人で明るいお話が好きな人は注意してください。
ただ、これは私だけかもしれませんが、ところどころに来る「人間失格」のオマージュ感に、どんなシリアスな場面でもクスっとなってしまったため、めちゃくちゃ楽しんで読んじゃいました。
女性、失格
と書かれたところでは、「ついにキター」と謎にハイテンションになりましたもん。
って、こんな読み方しているのは私だけか(反省)
それこそ恥の多い生涯じゃん・・。
ちなみに「人間失格」は青空文庫でも無料で読めるんで未読のかたは読んでみてください。
小手鞠さんの学生時代をベースにした「思春期」のレビューはコチラからどうぞ。
「文豪中学生日記」も読んでみてね!
以上、「女性失格」のレビューでした。