今回ご紹介するのは、綿矢りささん「オーラの発表会」です。

 

あの、このこちらの本、可愛すぎる表紙に騙されないでくださいね。

 

 

正直なところ評価不明本です(笑)

 

 

中身は爆笑もんですよ・・。登場人物がみんな個性的過ぎて・・なのに彼らが言っていることが妙にわかるのが面白くて、絶対に人前で読むのはやめたほうがいい本指定になっております(チェルミー談)

 

 

<あらすじ>

「人を好きになる気持ちが分からないんです」

海松子(みるこ)、大学一年生。
他人に興味を抱いたり、気持ちを推しはかったりするのが苦手。趣味は凧揚げ。特技はまわりの人に脳内で(ちょっと失礼な)あだ名をつけること。友達は「まね師」の萌音(もね)、ひとりだけ。なのに、幼馴染の同い年男子と、男前の社会人から、 気づけばアプローチを受けていて……。

「あんまり群れないから一匹狼系なんだと思ってた」「片井さんておもしろいね」「もし良かったらまた会ってください」「しばらくは彼氏作らないでいて」「順調にやらかしてるね」
 

――「で、あんたはさ、高校卒業と大学入学の間に、いったい何があったの?」

綿矢りさデビュー20周年!
他人の気持ちを読めない女子の、不器用で愛おしい恋愛未満小説。

 

 

面白いんだけれど、途中で「この話は一体どこへ向かっているの?」と不安になるくらい主人公が暴走するし、意味不明です。

 

表紙もなんですが、あらすじにも騙されないでください。

 

あらすじを読む限りだと、他人に興味ない~とか、人を好きになったことがない~とか、結構まあ、ありきたりじゃないですか。

 

で、そういう話って、多くが「そんな周りに合わせられない自分に悩む」ってパターンだと思うのですが、本書は何か違うんです。

 

まず、当の主人公(海松子)が人生なかなか充実していると思っているし、他人に無関心でひとりで足りている自分に大満足なんですよね。

 

すごいのが海松子は高校時代に自分がイジメられていたのにさえ気づかず、むしろ楽しい学生生活を満喫していたと思っていたんです。人から指摘されてやっと、「言われてみれば人と会話したこと数回しかなかったわ」みたいな感じで。

 

これも海松子が一人でも満たされているからこその発想なんですが、両親は自分たちがあまりにも家庭内を居心地よくさせてしまったから他人(外)への興味が向かないのではないか?と気に病んで、大学入学と同時に娘を一人暮らしさせちゃいます。(ちなみに実家から大学までは超近い)

 

本人は何も気にしていないのに、周りが心配してあれこれ手を焼いてくれる。そんな展開が新鮮でした。

 

本書は一応、恋愛小説?の区分になるのだと思いますが、一人では生きていけない系の人からすると海松子は羨望の的でして、意外とモテます。

 

美しいこと、悲しいこと、楽しいことを誰かと共有したい人にとって、それらをすべて自分一人で受け止められるタイプの海松子はカッコイイのだとか。

 

海松子は語ります。

 

「人は一人では生きられない、とよく言いますが、おそらく一人でも生きられるでしょう。でも誰かと共に暮らすことは、結局人間は一人で生まれて一人で死ぬ、という真理と同じくらいの大切な真理を教えてくれます。親と暮らしながら本当の意味で自立することも、きっと可能だと思います」

 

ね?深くありません?今までにない流れだなぁと思いました。

 

ちなみに、海松子の唯一の友人で”まね師”の萌音という子がいます。

 

あらすじにも書いてあるんですが、”まね師”って何?と思いますよね?

 

これは、とにかく人の服装だのメイクだの話し方だのを完コピする真似っ子のことをいいます。

 

たまにこういう子はリアルでもいるんですが、萌音のまね師レベルは仕事にできるくらい高いんです。

 

海松子は人に変なあだ名をつけて脳内で呼ぶ趣味があるのですが、もちろん“まね師”とは彼女が萌音につけた名前なんですね。

 

他にも小学校から仲良しの(と少なくとも相手は思っている)男の子(しかも海松子に好意を持ってくれているいいひと)にも親の七光りだから七光殿というあだ名をこっそりつけていたり(悪気はない)、もう一人海松子に好意を寄せてくれている年上の男性にも以前一度だけプリングルスのサワークリームオニオンのにおいがしたからサワクリ兄と読んでいたり、自由です。

 

また、海松子は人の口臭から食べた物を当てるのも趣味で、周りからドン引きされています。

 

こんな感じで独特なキャラばかりですが、全員憎めないというのが、何ともよかったです!本当に自立した人間とは、個人主義とはこういうことなんだと思いました。決して人を避けているわけでも、一匹狼になっているつもりでもなく、一人で満たすことも知っている。

 

一文、一文がめちゃくちゃ面白いのに、心理描写が丁寧なのもオススメポイントです。すごい才能だー。

 

きちんとタイトルの意味も最後は拾ってくるのでご安心を。想像できないタイトル回収です。

 

以上、「オーラの発表会」のレビューでした。