チェルミー図書ファイル161

 

 

今回ご紹介するのは、河合雅司さんの『未来の年表 人口減少日本でこれから起きることです。

 

今後日本は世界史において類を見ない勢いで人口が減少していきます。今、長い歴史の中で極めて特異な時代を生きる私たち。この国難を乗り越えるには、過去のノウハウは通用せず、とにかく新たな発想から戦略的に社会を作り替える必要があります。

 

ハッキリ言って、もう少子高齢化社会が今日明日の努力でどうにかなる状況ではありません。今重要なのは、「人口の絶対数が激減したり、高齢者が激増したりすることによって生じる弊害であり、それにどう対応していけばよいのか」です。

 

と、言っても人口減少や少子高齢化が日本社会にどのような影響を及ぼすかについて、具体的な想像をできる人はそういないかと思います。恥ずかしながら私もそうです。そこで今回は、本書が様々なデータを用いて作り出した未来の年表をベースに、人口減少日本の将来に待ち受けている課題を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

BOOK著者紹介情報より
河合雅司
1963年、名古屋市生まれ。産経新聞社論説委員、大正大学客員教授(専門は人口政策・社会保障政策)。中央大学卒業。内閣官房有識者会議委員、厚労省検討会委員、農水省第三者委員会委員、拓殖大学客員教授などを歴任。2014年、「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

 

これが未来の年表だ!

※この年表には批判的意見もあるので、アテにするかどうかは個人の判断にお任せします

 

 

2017年 「おばあちゃん大国」に変化
 

2018年 国立大学が倒産の危機へ
 

2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
 

2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
 

2021年 介護離職が大量発生する
 

2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
 

2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
 

2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
 

2025年 ついに東京都も人口減少へ
 

2026年 認知症患者が700万人規模に
 

2027年 輸血用血液が不足する
 

2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
 

2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる

2035年 「未婚大国」が誕生する

 

2039年 深刻な火葬場不足に陥る

 

2040年 自治体の半数が消滅の危機に

 

2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに

 

2050年 世界的な食料争奪戦に巻き込まれる

 

2065年 外国人が無人の国土を占拠する

 

 

人口減少カレンダー

2021年、団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始めます。2022年には団塊世代が75歳に突入し、「ひとり暮らし社会」が本格化し始めます。2023年には団塊ジュニア世代が管理職に就き、企業の人件費はピークを迎えます。2024年団塊世代はすべて75歳以上となり、社会保障が大きく膨らみ始めます。

 

近年だけ見てもこのような悲惨な未来が待っているにも関わらず、逃げ切り世代は知らんぷり。中には「困るのは自分たちではなく、若者だから」と吐き捨てる人までいて驚きです。

 

大量に失う働き手は、AIが補うため心配ないと楽観視しているのでしょうか。しかし、2030年には早くもITを担う人材が最大79万人も不足し、社会基盤に混乱が生じると考えられています。そもそも現時点においてもAIができることは限定的です。いくらAIといっても人間あっての開発。また、AI技術の実用化が労働現象スピードに間に合うかどうかさえ分かりません。
 

2045年には東京都ですら、都民の3人に1人が高齢者になります。地方に住む高齢になった親たちが、東京圏に住む息子や娘を頼って同居を選ぶケースが既に増えているのはよく聞く話。そこに、現在東京に住む”高齢者予備軍”たちが加わると、東京はあっという間に高齢都市に変化します。

 

かつて「若者の街」だった東京も、少子化で若者の数自体が減っているため、人口は増加しても生産年齢人口は減少しています。若者の流入を期待しても、その若者がいない状況なんですね。

 

また、都内には企業ばかりが立ち並び、地方に比べ介護・福祉施設の設備は整っていません。総人口は減らずに、高齢者の実数だけが増えていく。若者が暮らしやすい街に、高齢者が暮らす不便さ。これからは、豊かな地方が大都市の人口を吸い上げる時代となるかもしれません。

 

時は進み、2059年には5人に1人が80歳以上になり、2115年には総人口が5055万5000人まで減ると予測されています。

 

 

日本を救うには?

本書に書かれていることは、今から子どもをボコボコ産みなさい!年寄りはさっさと死になさい!ということではなく、人口減少した日本でどう生きていくかの対応策になります。以下に筆者が提案する「日本を救う処方箋」の一部をまとめました。

 

 

戦略的に縮む

・人口が少なくなっても社会が混乱に陥らず、国力が衰退しないよう国家の土台を作り直す。理想はコンパクトで効率的な社会。労働人口が1000万に減ったとしたも、働き手が1000万人不要となれば、労働力不足は発生しない。そのためには「捨てるところは捨てる」決断が必要。具体的には「過剰サービス」の見直し、24時間営業の廃止、元旦営業の縮小などが挙げられる。「便利さ」や「無料」とは誰かの我慢や犠牲でなりたっているという認識を国民に理解してもらう。

 

 

・10年前に比べて身体の動きや知的能力が5~10歳は若くなっていることから、高齢者を75歳以上に引き上げ、65~74歳を準高齢者として位置づける。同時に、現行14歳以下となっている「子供」の定義を19歳とする。65~74歳の多くが働くのが当たり前の社会となれば、労働力不足も社会保障の財政問題も大きく改善する。

 

・財源確保が困難なかわりに、老後生活にかかる費用を少なくする。空き家を利用し、安い家賃で入れる高齢者用の住宅を政府が整備する。

 

・人が住む地域とそうでない地域を明確化し、コンパクトシティに作り替える。住居エリアを決めて人々が住むようになれば、買い物難民や医療難民もいなくなる。

 

・日本人自身の手でやらなければならない仕事と、他国に委ねる仕事を思い切って分ける。得意分野だけに資源を集中させる。まずは日本が人口減少社会に見合った産業構造に転換した場合、どの分野にどれくらいの人が足りなくなるのかをしっかり見極める。その上で、育成する産業分野を絞り込んで投資する。

 

 

豊かさを維持する

・日本人はイノベーションにつながるアイディアを多く持っているが、それを事業に結び付けることが苦手とされている。こうした状況を打破するためには、失敗を恐れず挑戦できるような転職しやすい社会の実現が必要になってくる。また、学校教育の段階から起業家精神を育成することも重要になる。さらに、国として確保したい分野で学ぶ学生には優先的に資金援助を行い、成績優秀者には「国費学生」とし、大学費用を全額負担する。途中で脱落するのを防ぐために、進級のたびに試験を実施し、将来の就業も義務付ける。

 

・中高年の地方移住の推進として、CCRC構想を投入する。

 

CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略称で、高齢者が健康な段階で入居し、終身で暮らすことができる生活共同体のことをいいます。この概念は1970年代のアメリカではじまりました。日本版CCRC構想とは、健康な段階で移り住み要介護状態になっても住み続けることができますが、主体的に地域コミュニティーに参加し多世代と交流するなどアクティブに暮らすことで、できる限り健康長寿を目指すものです。

 

フィットネスクラブ・アスレチックジム・テニスコートなどの運動設備や、音楽スタジオ・カラオケルーム・ビリヤードなど趣味を楽しむ設備を利用したり、豊富な内容のサークル活動への参加、近隣の大学での講義受講、あるいは現役時代の職業や趣味を活かして運営に参加したり、共同で店舗を運営したり、地域の子ども達に勉強やものづくりを教えたりなど、担い手としてより主体的にコミュニティーに参加し、生きがいを持って充実した生活を送ることができます。LIFULLより

 

 

まとめ

人口減少問題には、即効性のある対策は存在しません。メディアは”すぐ”を求め、批判を繰り返しますが、私たちは可能性のあるものを長い目で見ながら実行し、結果が出る時まで試行錯誤を重ね、引き継いでいくしかないのです。そのためには、さまざまな分野や角度から専門家の意見を参考に打開策を見つけること、「若者が希望を持てる社会」を作ることが大切になってくるでしょう。一度政策をスタートしたら、政権が変わっても切れ目が生じないように継続することも目を見張るポイントですね。

 

筆者は日本のじーさん達が時代遅れのトンチンカンな考えしか持っていないことを嘆いているように見えました。いつまでも過去の成功体験にすがり、今の日本が見えていない・・。そんなことを強く批判しているようでしたね。

 

少したとえは違いますが、音楽業界一つ見てもそのセンスのなさは素人でもわかる気がします。人口比の少ない若者よりも、ヒトもカネも多いオッサンたちを相手にしたアイドルブームはJ-POPを衰退させました。今、これだけK-POPが流行る理由はただ一つ。それはK-POPが若者をターゲットにした音楽だからでしょう。いつの世も社会のブームを作って盛り上げるのは若者です。そこを理解していた韓国は、あえて人口の少ない若者層に焦点を当て、音楽業界を盛り上げました。

 

K‐POPは国策といえど、流行づくりの担い手となった若者の情報発信力には、どんな企業の宣伝力より効果がありました。今では化粧品も日本製より韓国製がブーム。ヘアメイクもファッションのトレンドもK-POPアイドル由来。そりゃ自然とそうなるでしょうね。だからポップカルチャーの力と女子高生をなめてはいけなかったのです。

 

もっとセンスがないのは、そうだからといって、日本人をK-POP風に仕立てる最近のコンセプト。それじゃナイ感が満載です。一番やってはいけないパターン。本当にどうしちゃったのでしょうか。

 

テレビ番組だって同じです。どこの局も認知症予防の脳トレクイズか食レポ番組ばかり。もう少し若者のためにも冒険して欲しいものです。誰かをイジって笑い者に仕立てる番組なんて、まさに典型的昭和脳そのもの。あれで笑える人はいいけれど、既に低レベルだとか、不快に思う人の数が多いのでは?

 

たまにヒットするドラマもなぜそうなったのか理解できず、とりあえず同じ俳優を使い続けるようですが、ハッキリいってヒットするかどうかは内容だと思いますけどね。情報番組のコメンテーターにしかり、タレントにしかり、すべてにおいて量より質が求められつつあるのに、いつまでも方向転換しないから変わらない・・。こんなんだから皆YouTubeに流れるのです。だからといってユーチューバーをテレビに出せば解決するわけでもありませんが。とにかくお年寄りも若者も楽しめない文化なんて誰も消費しないのでは?と思います。

 

やがて国内の消費力だけではやっていけなくなる日本も、誰にターゲットを縛り、どこをマーケットにするのか方向転換する必要を迫られるでしょう。

 

話が脱線してしまいましたが、少子化対策として挙げられているような子育て支援にも同じようなものを感じるのです。子供が増えない理由はお金だけが問題ではないような。子育て支援の前に結婚するかどうかの問題が先にあるように思えます。筆者は若者が恋愛しない理由を消極的な姿勢が原因だとしています。では、なぜ若者は恋愛に消極的になったのでしょう?残念ながらそこまでは書いてありませんでした。一時、今の若者はたばこを吸わないだとか、車に乗らないだとか、バカにされていましたが、この問題の先にも”社会が生んだ新しい価値観”があるのです。

 

そもそも増やす産むの段階は通り越し、減少スピードをいかに遅らせるかがポイントの日本。どうやら少ない人口でも生きていけるよう、一人一人に求められるレベルが高くなる時代に変化していく気がします。

 

 

次回『未来の年表②』に続きます。