ブレイクショットの軌跡|あらすじ・解説・評価
逢坂冬馬さんの『ブレイクショットの軌跡』のレビューになります。あらすじ底が抜けた社会の地獄で、あなたの夢は何ですか?自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが、さて……。以降、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」――移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。人間の多様性と不可解さをテーマに、8つの物語の「軌跡」を奇跡のような構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作。難しいストーリー今回は先に評価からさせてください。ブレイクショットの軌跡Amazon(アマゾン)評価3.8/5全577Pの大作で長かった。腕が痛い。読書日数は四日間。時間かかったよー。投資ファンドのマネーゲーム〜アフリカの紛争まで重い社会問題が幅広く扱われていたため、やや難しかったです。評判通り『同志少女よ、敵を撃て』のほうが面白かったかなぁ。それでもラストの伏線回収はお見事でした。要約①自動車期間工の本田昴は、契約の最終日に同僚がSUVブレイクショットのボルトを車体の内部に置き去りにしたのを目撃する②その後、ブレイクショットは複数の人々の手に渡るが、所有者の全員が不運に見舞われる③サイドストーリーでは、アフリカの武装勢力がブレイクショットを軍用車両に改造して乗り回している以下一部ネタバレあり霧山家と後藤家ブレイクショットの所有者が変わっていくたびに、車の魔力が上がっていくところが悲惨すぎて見ていられませんでした。まず、サッカー少年の霧山修吾は、新興ファンド「ラビリンス」の副社長を務める父・冬至がブレイクショットを購入してから最悪な目に遭います。なんとラビリンスの社長がインサイダー取引の容疑をかけられホリエモン化しちゃったことにより、会社が傾いてお給料は爆下げ、とりあえずブレイクショットは売ることにしたのですが、他にも分譲で購入したタワマンを売りに出すものの、資産価値が減じており、安いマンションに引っ越してからもローンの残債を返すのに四苦八苦。そのせいで修吾もサッカーチームを辞めなければならなくなり、先輩兼チームメイトの後藤晴斗に相談すると「僕がバイトしてサッカー費用を稼ぐから!」と言ってくれるのですが‥。なんと次のブレイクショットの所有者は晴斗の父・友彦なんですね。すごい偶然。残念なことに彼は運転中に前方から車のボルトが飛んできて、それがフロントガラスを貫通して自身の頭に当たり、脳が損傷してしまいます。この事故のせいで友彦は、高次脳機能障害になり、温和な性格から暴力的で家族に罵詈雑言を浴びせる別人になってしまいます。高次脳機能障害とは友彦は高次脳機能障害のせいで仕事を辞めることになり、運転も出来なくなります。症状が安定するまでは、母・絵美と晴斗が付きっきりで見張っていないと何をし出すか分からないため、二人は仕事と学校を辞めて生活保護を受けることにします。高次脳機能障害とは、脳梗塞やくも膜下出血といった脳血管障害や、事故などによる脳外傷、心肺停止による低酸素脳症などで脳がダメージを受けたことにより、注意力・記憶力・言語・感情のコントロール等がうまく働かなくなる認知機能の障害です。(千葉リハビリテーションセンターより)友彦は優秀な板金工で、部下の中邑翔にとっては不正だらけの職場の中で唯一善良で、頼りがいがある尊敬できる上司でした。最終的に翔が板金工場をはじめて、友彦のことを塗装検査として雇ったところには感動しました。リハビリをしても治るわけではありませんが、地道にまちがいさがしや塗り絵などの作業を頑張って社会復帰できて良かったです。しかもこれ以上家族には負担をかけられないから(自分の人生を生きてほしい)と、家を離れて本田昴と同じ寮付きの職場に障害者雇用で働いていた時期もあり、どこまで気遣いの人なんだ!‥と思いました。晴斗と修吾晴斗は自分の家が大変なことになっても修吾への支援を辞めませんでした。ラビリンスが復活したあとも、冬至は息子がサッカー選手を目指すことに大反対し、体育大学の学費すらも出してくれません‥と言うか二人が冬至に事情を話すことすら諦め、金銭的な負担は晴斗一人にのしかかっている状態に。実はこの二人は恋人同士で、単なる友情でここまでしているわけではないのです。お金に困った晴斗は無自覚で詐欺に関わってしまい、気づいたときには多くの被害者を出していました。しかし同じように反社組織に騙されていた門崎亜子とコンビを組んで会社の詐欺を阻止し、警察に通報します。その後、サッカー選手になった修吾と、そのマネージャーになった晴斗は、イギリスのチームで活躍して、現地で結婚します。結婚会見では自分たちの過去を包み隠さず話し、修吾はサッカー奨学金制度をつくり、晴斗は詐欺被害の救済基金を設立します。詐欺、不正、炎上霧山家と後藤家を離れたブレイクショットが次にたどり着いたのは、松代不動産でした。今度はこの会社の社用車として不幸を撒き散らします。被害者は社員の十村稔。彼は日々パワハラ支社長に苦しめられながら「投資用マンションの営業」と言う名の詐欺をさせられているんですね。で、そんなときに現れたのが、晴斗が騙されて働いていた「カズ塾長の一億経済塾」なんですねー。なんとまぁインチキくさい名前だこと!もちろんこちらも特殊詐欺で食べている会社です。十村はここの受講生の名簿を買って、カモになりそうな、いや七面鳥になりそうな顧客に営業をかけて契約をゲットするのですが、それに気づいた晴斗が被害に遭った受講生らに真実を話してクーリングオフさせたせいで、十村はパワハラ支社長を激怒させてしまい『たっぷりと保険をかけている社用車を自作自演で窃盗しろ。さもなければ事務職に飛ばす』と脅されてしまいます。またしてもブレイクショットの呪いです。おバカな十村は一億経済塾の真田にこれを相談してしまい、案の定彼らがブレイクショットを窃盗しようと張り切ります。結局この悪巧みは晴斗と門崎によって阻止されますが、ブレイクショットは窃盗犯が破壊してしまい、海外へ送られ、アフリカで軍用車両として活躍することになります。(この事件を機に、十村はもう悪いことをしないと決心した)差別晴斗が一億経済塾に入るキッカケとなった事実上の初仕事にSNSの炎上案件がありました。それはアメリカのNFLの名門、オクラホマ・ブルズに所属するスター選手、コーナー・ウィルソンが試合後のパーティーでフランソワ・イッサ選手に対し『テロリストの国からアメリカに逃げてきたゴートファッカーがアメリカ人のスポーツをファックしている』などの差別発言をしたとYouTubeに字幕付きで投稿した「仕事」でした。のちにコーナー・ウィルソンは全スポンサーとオクラホマ・ブルズから契約解除され、妻と離婚し、息子にも会えなくなりました。最終的にはイッサと和解し、彼らはウィルソンの元妻と息子のジェイクとの四人で中央アフリカ共和国を訪れるのですが、そこでウィルソンは自らの差別発言により怒らせたイスラム原理主義テロリストたちから攻撃されてしまいます。このとき彼らを護衛してくれていたエルヴェとフェリックスが乗っていた車が、あのブレイクショットなんですね。しかも「まつしろ不動産」と書かれたブレイクショット。何気に「つ」が小さくなっており「まっしろ不動産」に変化しているブレイクショット。あんなブラック企業のどこがホワイトや!二人はこのブレイクショットに乗り、命を狙われながら(巻き込まれながら?)ジェイクを守り抜きます。あぁ悲惨。LGBTQ本書は晴斗と修吾の同性愛者カップルに加え、門崎亜子と本田昂の性愛を必要としないカップル(まだAセクorアロマアセクなのか細かな属性はわかっていない)もいます。ちなみに門崎亜子は本田昴の前では鈴木世玲奈という偽名を名乗っています(向こうがホンダならこっちはスズキじゃのノリで。あとでちゃんと本名を教えた)。実際ホンダスバルとスズキセレナのカップルがいたら凄いですよね。昔ニッサンという名前のトルコ人がいたことを思い出しました。印象的な言葉今日あいつは、『やあこんにちは、みんなと仲良くしたいです』と言いながら、ハグするつもりの手に刃物を握ってぶんぶん振ってたんだ。それが危険なことだと分かっていないなら、誰かに止められないとあいつはそれを繰り返す。そして振ってる方が無意識だろうが悪意がなかろうが、刃物に当たって傷ついたなら、傷ついた方は怒る権利ってもんがあるの。(P15)親しい人には言っているように自分はゲイで、それで被害者意識というか、こういうカルチャーのなかにいると悪く言われることもあって、差別される側だって思い込んでました。でも、愛が素晴らしくてそれがないと価値がないって考えは完全に差別だったし、いけないことだって分かりました。(略)世の中はもっと複雑で、そこに雑な言葉で入っていったら傷つく人がいて当たり前で、傷つけて、めんどくさくしたのは自分だと思います。俺はあの日、みんなと仲良くしたいです、と抱きしめにいきながら、その手にナイフを持っていました。(P573)登場人物たちは良い人なのか、悪い人なのか、そのどちらの面も持っているのか。親切に見せかけて、とんでもない悪事を働いていたかと思えば、いざと言うときには相手を庇ったり、複雑な感情の揺らぎを見せてきたり、何ともそれぞれが人間らしさを感じさせてくれる一冊でした。「ブレイクショット」とは、ビリヤード用語でもありますが、本書では登場人物が運命を握る重要な場面になるとビリヤードをさせられていたのがオシャレでした。ブレイクショットは呪われているとしか思えない車でしたが、のちにこの呪いの車と本田昴が不備を発見した車は別だったと判明します。実は本田、迷った末にちゃんと上司に不備を報告して残業していたのです。よかった、よかった。ごめんなさい、何だか完全ネタバレのようになっていますが、一応全然触れていない人物&章もあるので、未読の方はぜひ読んでみてください。難しい本ほど、どう感想を書いていいかわからず、結局解説みたいになってしまうんですよね。私、本は好きですが頭が良いわけじゃないからなぁ笑とりあえず、各章のあらすじをザクっと紹介して、中心部の内容はカット、結末だけ解説をした感じになっています。かなりザックリしたレビューなので興味のある方は直接読んで「感じて」ください。おわりあわせてどうぞ『「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬』今回ご紹介するのは、逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」です。同志少女よ、敵を撃てAmazon(アマゾン)1,881円 Amazon(アマゾン)で詳細…ameblo.jp