お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。【考察・感想】
鞠目さんの小説『お客様が不在のためお荷物を持ち帰りました。』のレビューになります。【あらすじ】「変な配達員さんがいるんです……」運送会社・さくら配達に、奇妙な問い合わせが相次いだ。その配達員はインターフォンを三回、ノックを三回、そして「さくら配達です」と三回呼びかけるのだという。まるで嫌がらせのようなその行為を受けた人間に共通するのは、配達の指定時間に荷物を受け取れず、不在票を入れられていたという事実。実害はないが、どうにも気味が悪い……そんな中、時間指定をしておきながら、わざと不在にして配達員に荷物を持ち帰らせるというイタズラを繰り返す男のもとに、不気味な配達員が姿を現し――。不可解な怪異によって日常が歪んでいく、生活浸食系ホラー小説!!みなさん!ネットショッピングをする際には、必ず指定時間に在宅しているか、置き配ボックスを用意しておきましょう。そうしないと、さくら配達の配達員があなたの家に荷物を届けに来たり、不在メールを送り続けてくるかもしれません。以下ネタバレ注意さくら配達まずは「さくら配達」の村上(配達員)の過去と現在をおさらいします。尚、当レビューでは小説と時系列を変えています。村上の過去について小学五年の終わり頃、村上は小牧という同級生から「特別にいいものを見せてやる」と言われ、彼のマンションに誘われた。すると四階と五階の踊り場から、今まさに飛び降り自殺を図り、地面に落ちていく女性の姿を見せられてしまった。小牧が言うに、半年くらい前からここで自殺する人が増えたらしい。しかも自殺する人たちは必ず頭から落ちて、確実に死ぬ道を選んでいると言う。「ここから飛び降りる人はみんな笑顔で飛ぶんだ」こう語る小牧の表情は笑顔だった。逃げるように帰宅した村上は、次の日から一週間高熱にうなされてしまった。学校に復帰してからも、小牧とは距離を置き、卒業後はお互い別の中学校に進んだ。しかし、中学三年の時に入った塾で、小学校の同級生と再会し、そこで小牧が自宅マンションの屋上から飛び降り自殺を図って亡くなったことを知らされた。考察①大人になった村上はさくら配達に就職した。そこでは時間指定されてあるにもかかわらず、不在を繰り返す客が多くいた。①村上がよく配達に行っていた「楠本様」は、ストーカー被害に遭っていた。また、楠本が住んでいるアイボリーカラーのマンションは、小牧が住んでいたマンションの跡地に建っていた。噂によると、相変わらずマンションでは幽霊の目撃談があるとのこと。②ストーカーおじさんによると、楠本は一週間も家から出ておらず、その間さくら配達の配達員が楠本家を訪ねて来たらしい。しかし村上にそう話している最中に、彼は「あの方です!待ちなさい」と大声を上げながら走り出してしまった。村上には何も見えなかったため、おじさんの妄想だと思った次の瞬間、大きなブレーキ音と衝突音が聞こえ、音の方向に目をやると、さくら配達のトラックが電柱にぶつかっており、その近くに頭から血を流し倒れているおじさんがいた。しかし再度現場を確認すると、そこにはトラックも、おじさんも、何もなかった。《まとめ》ストーカーおじさんは、もとから妄想が激しかったが、おじさんから謎の配達員の話を聞いたとたん、村上まで妄想を体験してしまった。また、噂では謎の配達員が訪ねて来る情報こそ出回るものの、配達に必要なトラックの目撃情報はなかった。そう考えると、これは何者かによる詰めの甘いイタズラなのか。イタズラだからトラックを用意できなかったのか。一方、謎の配達員の噂を聞いたあとに、それぞれが独自に恐怖を作り上げていったのだとしたら、一番しっくりする。村上が死んだおじさんを見たのは、配達中に絡まれたのがウザく、一瞬でも邪魔に思った(消えてほしい願望が発動した)からではないか?実際は単に姿を見失っただけなのかもしれない。→結局、以上のことから楠本もおじさんも村上も妄想の末に自殺したのだと思われます。イライラしている人謎の配達員から被害を受けていた人たちは、全員メンタルが病んでいるという共通点がありました。しかも攻撃的な方向に病んでいたのです。これがありもしない妄想に破滅させられた要因であるかもしれない一方で、実は配達員側にもストレスでイライラしている人が多かったこともわかっています。考察②(まとめも含む)噂の配達員は、時間指定をしておきながらも家を留守にしていた客の前に現れていました。客からの苦情によると、その配達員は‥インターフォンを三回、ノックを三回、そして「さくら配達です」と三回呼びかけるのだという。実はこれと同じことを村上も楠本に対して行っていました。それは楠本に身の危険を感じ、心配になったため、こんな対応になってしまったのですが‥。偶然にも噂の配達員と似た言動を取ってしまった村上。そもそもなぜ噂の配達員は、村上より以前にこのような言動を取っていたのか。考えられるのは、数ある苦情のうちいくつかは、本当にさくら配達の配達員による仕業だったのではないか?という説。事実、配達員の中には、わざと不在を装う客にイライラしていた人もいたため(特に間宮という客が最低)、ブチギレて乱暴な対応をとってしまった人(仕事のストレスで精神崩壊)もいたのではないかなと推測。それがたまたま焦ったときの村上の対応と重なってしまったのだと思われます。本書はホラーでありながら、配達員の労働環境の辛さを描くお仕事小説的な要素もあるため、そう解釈しました。◇読書ポイント◇本物の配達員の言動をイタズラ役が真似たのか?それとも苦情の内容をストレスで壊れた配達員が幽霊のフリをして真似たのか?それとも全部幽霊の仕業か?また、村上が自殺したあとに、村上という名札を付けた配達員が家にやって来たという舞の話を聞くと、これは村上の幽霊なのかな?と思えるのですが‥どうなんでしょうね。舞はこれまでに何度か村上に配達してもらっており、しばらくの間は亡くなっていたことすらわからなかったんですよね。しかしおかしな配達員が現れるようになったため過去の新聞を調べたら、村上が事故死していたことを知り、例の配達員が残していった不在票の配達担当者をチェックしたところ、そこには村上と書かれてあり衝撃を受けます。なぜなら、おかしな配達員が現れるようになったのは、村上が亡くなったあとの出来事だったからです。これは本物の村上の幽霊の仕業?!駒崎について謎の配達員が現れるのは、村上たちのチームが担当していたエリア内だけの出来事でした。そして、そこに例のマンションが含まれていたんですね。考察③村上は駒崎という頭のイカれた大学生から研究に協力してほしいと頼まれていた。駒崎は前から例のマンションが心霊スポット(かつての自殺スポット)であることに興味があり、その近くにある電柱にわざと花をお供することで、人がどんな反応を示すのか、調査していると言う。※実際に花が供えてある場所には誰も死んでいない、死亡者が出たのはマンション「人が死んでいなくても、人が死んだ場所になるかどうか。それを試してみました」(P152)「僕以外にもお供をする人が現れたんです」(P153)(なぜそんなことをしているのかの問いに)「物語を作ってみたかったんです」「もともと読書が好きで毎日本ばかり読んでいたんですが、ちょっと飽きてきたんですよね。自分で書くことも考えたんですが、それもつまらないなと」「だって自分で物語を書いても、自分の能力以上にはならないでしょう?(略)だから、現実の世界で物語を作れないか試してみたんです」(P153〜154)「今じゃ『誰かが死んだらしい』から、さらに具体的な物語ができたみたいなんです。(略)中には運送会社の運転手が事故に遭ったって話も出てきているんですよ」(P154)「僕が始めた物語は、もはや僕の手を離れたところで展開を始めました。(略)でも、そうなると『作者』って邪魔だと思いませんか?」(P155)「せっかくリアルになりはじめたのに、それを作り出した人が残っていたら物語はいつまでも作り話のままです。そいつさえいなければ、物語は現実と等しくなれると思うんです」(P156)「それに、あなたはこの物語にとって大事なピースになる気がするんです」(P157)※このあと駒崎は自殺しますで、この意味不明なことを言う駒崎こそが、楠本の隣人だった男子大学生なんじゃないかと。しかも、この子は噂を作っている間、自身でエセ配達員をしていたんじゃないかなぁ。だからあるはずのトラックがなかったのかも。謎の配達員が姿を一瞬で消せるのも単に被害者の部屋の隣に住んでいたからじゃ‥。しかも駒崎の隣室は、間宮→楠本→舞の順番に住人が入れ替わっていたんじゃないかな。《まとめ》駒崎は自殺マンションの歴史を知っていたからこそ跡地に建てられた今のマンションに住んでいて、そこで自ら心霊現象を創作し、あちこちでデタラメな噂を拡散していた。勝手に噂が上書きされていくうちに、その正体が配達員の幽霊ということになったため、条件に見合った村上にロックオン。なぜ村上か選ばれたかと言えば、彼は繊細そうだし、間違いなく弱っているから。死ぬ理由さえ与えれば、死んでくれそうだと思われたのではないか。駒崎から言われた「あなたはこの物語のピースになる」の意味とは、村上が噂(配達員がマンション近くの電柱にぶつかって事故死する)と同じようにして死んでくれれば、物語が創作ではなく、リアルになるから。ネガティブな心は周囲の病んでいる人にも感染する。だから謎の配達員の話を知ってしまった人は妄想に「取り憑かれて」しまうのだろう。→さくら配達を名乗ったあやしい迷惑メールも駒崎の仕業かも?このマンションはストーカーおじさんの件からしても、個人情報の管理が甘いようなので連絡先くらい盗み見できそうです。→やはり村上は死んだ後に、自身の念がこの世に残り、物語を本物に変えてしまったみたいです。◇結論◇間宮と楠本が見た謎の配達員は同一人物。舞が見た謎の配達員は村上の幽霊。その証拠に、間宮と楠本に送られて来た迷惑メールは簡単なショートメールであり、舞に送られて来たのは手の込んだQRコードつきの詐欺メールだった。また、舞だけが亡くなる寸前の様子を友達に電話を通して確認してもらっている。また、電話越しでもこの世の者ではない何かの仕業だとわかる結末になっていた。→村上が亡くなる前に山崎という配達員も失踪しています。もしかすると、彼が一足先に幽霊になって謎の配達員をしていた可能性も。駒崎による人為的な脅しと、幽霊による脅しの両方があったんじゃないかなーと思うことにします。感想謎の配達員よりもストーカーおじさんやイカれた大学生のほうが怖かったなー。やっぱ生きている人間が一番怖いということで!結末にはいろいろと謎が残りますが、もともと例の配達員が出現する場所には、自殺者が多発するマンションが建っていたんですよね。じゃあなぜそんなことが起きていたのかと言えば、呪われていたとしか言いようがありません。おそらくですが、このマンションにはワケありの人や、切羽詰まった人が多く住んでいたのではないかなぁと思います。だからこそ、誰が自殺してもおかしくないと言うか、その確率は普通のマンションより高かったんじゃないかと。そんなとき、ついに一人の自殺者が出てしまい、そこからはもう連鎖反応みたいになっちゃったんじゃないかな。小牧も母子家庭で、当時お母さんは夜遅くまで仕事で不在だったみたいだし、一人で寂しくなったり、不安になったり、もしかすると当たり前に両親から護られている友達を見てイライラすることもあったのかもしれません。そこへかつてこの世に未練を残して死んでいった霊が取り憑いて、呼ばれてしまったのではないかなーと。まぁ、多分メンタルがやられているときに、噂が作り上げた呪いに影響を受けてしまって、「そうか、ここに住んでいた人も苦しんでいたから、飛び降りたんだ」と都合の良く変換してしまい、亡くなっちゃったのだと思いました。結局は人の思い込みや噂が、呪いや妄想を作ってしまうということなのかな?噂を知る前は何ともなかったのに、「知った」瞬間から恐怖体験が始まるのは、そういうこと?とりあえず霊を信じたくない私は、そう思うことにします(笑)最後に全体の評価を↓お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。 (アルファポリス)Amazon(アマゾン)評価★★☆☆☆背筋さんや雨穴さん系の話なのかなーと思いきや、個人的にはそこまでの恐怖感はありませんでした。しかし、各レビューを見ると、「怖い」「もう宅配頼めない」の大合唱だったので、単に私の恐怖センターがバグっていただけなのかもしれません。真面目な話、文章がそこまで怖くなかったのが原因かも。ゾクゾク感を煽るのではなく、読みやすさ重視の文章という感じだったからかな?ただ日頃、配達員に迷惑をかけまくっている人が読めばビビること間違いなし!人コワ系が好きな人におすすめです。自分は宅配なんて頼んでないよ!という方も要注意。楠本みたいに母親が勝手に野菜やら何やらを送っていて、その連絡メールを見るのを遅れたり、忘れていたりするパターンも考えられるので、気をつけてください!以上、レビューでした!