アナヅラさま|読書感想
四島祐之介さんの『アナヅラさま』のレビューになります。●あらすじ●顔にぽっかり穴のあいたバケモノが人を攫って、穴の中に吞み込んでしまう。バケモノの名は「アナヅラさま」。――ある地方都市で女性が相次いで行方不明になるなか、そんな噂が囁かれるようになった。行方不明者の捜索依頼を受けた探偵・小鳥遊穂香は、都市伝説の裏に連続殺人鬼がいると睨み、調査を進めるが……。一方、「アナヅラさま」と呼ばれる一連の事件の犯人は、想定外の事態に陥っていた。アナヅラさま (宝島社文庫)Amazon(アマゾン)評価4.8/5面白いと聞いていましたが、ここまでとは!ちなみに、ここでいう「面白い」とは物語が面白いのはもちろん、登場人物のキャラクターがとても面白いという意味です。違う表現をすれば、面白くさせようとして書いた文章というよりは、面白い人が書いた文章といった感じ。とにかく読んでみて〜!!都市伝説+御当地小説本書は第24回『このミステリーがすごい!』大賞の「文庫グランプリ」受賞作になります。しかし、実際に読んでみると、これはただのミステリー小説ではありません。何というか、はじめて読むパターンの小説で、そうだなぁ〜ミステリーであり、都市伝説系ホラーであり、ご当地小説であり、コメディでもあり‥とにかく色んな顔を持っている小説なのです(顔に穴あるのに)。長野県人は読みましょう長野県って日本一遭難者が多い県なんですねー。本書を読むまで知りませんでした。登山家が愛する山が多いからでしょうか?実はこの物語の舞台も長野県。一応、山間部に位置する架空の村「山淵村」となってはいますが、地元民ならモデルになっている村がわかっちゃうのかなーなんて思います。で、(この世界での)長野県では、若い女性の失踪が相次いでおり、それは地元の都市伝説「アナヅラさま」の仕業では?と噂されているんですね。アナヅラさまとは?なんか、ネーミングが御当地キャラっぽいのですが、アナヅラさまとは(表紙のように)顔が真っ暗な底なし穴になっているバケモノのことで、若い女性を攫い、いたぶった後、顔の穴に吸い込んで消してしまうという、いや100%都市伝説すぎて警察はそんなの信じてないでちゃんと仕事しよ?何人も失踪しているのにソレでいいんかいっ!というネタになっています。もちろん、地元民もそんなことは信じていないのですが、ここ最近冗談まじりでアナヅラさまの仕業じゃね?というような事件が続いているため、ついに探偵たちが動き出します。キャラの濃い探偵失踪した恋人を見つけ出してほしい!という依頼を受けた「ハヤブサ探偵事務所」の三人のキャラがまた濃すぎて、読んだ瞬間ファンになりました。ハヤブサ探偵事務所メンバー小鳥遊穂香 身長180センチ。ボクシングで体を鍛えまくりの美女。飄々とした性格だが、ボケとツッコミのスキルが高い。幼少期は児童養護施設で育ったが、その後、刑事をしている現在の父親(おっちゃん)に育てられた。実の両親は父親がロリコンDV男で、母親は娘を愛していなかった。そのせいか、穂香は男嫌いで、パートナーにも女性を選んでいる。綾野仁 穂香の助手。中学生の頃に友人からボコられていたところを後輩の穂香に助けてもらってから好きになり、それからストーカーになって今に至る。ある意味探偵に向いているので、前職を辞めたタイミングで穂香からスカウトされた。早乙女理子 経理と事務を担当する四十代の新人社員。前歴が謎すぎる人物だが、そこを穂香に気に入られ採用された。意外とバブちゃん。依頼内容今回の依頼は、小林未散という女子大学生を探してほしいというもの。依頼主からよく話を聞くと、彼女を探しに行った父親まで失踪してしまったらしい。しかも、ここ最近だけでも未散と同じ年頃で、目が大きい小柄な女性の失踪が相次いでいるため、穂香は何者かがアナヅラさまになりきって悪さをしていると考えて調査を開始するのですが‥正体は?これは物語の序章にあるので言っちゃいますね。アナヅラさまの正体は、杉田蓮という山淵村の「山灯荘」という旅館で働いているイケメンです。こやつはパパ活の手法で誘い出した好みの女性を数週間に渡り性的暴行を加えては、社宅の裏山にある底なし穴に女性を生きたまま棄てていたのです。謎の大穴おそらくこの底なし穴こそが、本物のアナヅラさま(聖地?)なのですが、どうやらこの穴に選ばれた者がアナヅラさまに取り憑かれ、御供え?生贄?を探してきては穴に落っことしているようなんですね。で、このアナヅラさまの注文が結構うるさくて‥。たとえば、若い女の子。もっと若い女の子。たまに男。しかも中性的で小柄な男。とか、そんな感じ。これらは直接大穴から命令されるのですが、それはアナヅラさまに任命された人にしか聴こえません。ちなみに取り憑かれている人は、アナヅラさまに頼まれてというより、自身が犯した罪を隠蔽するために穴を利用している感覚です。この穴は人間だけじゃなく、車や被害者の所持品すべてを吸い取ってくれるので、悪いことをしてしまった人とは相性抜群なんですね。杉田蓮についてそもそも蓮は、この穴の存在を父親から教えてもらっています。穴は前からあったわけではなく、地震のあとに急に出来たらしく、それを息子に伝えたあとに父親は失踪しています。それから蓮は、もともとロリコンだったこともあり、恋するアニメのキャラクターにそっくりな女の子を探しては、散々いたぶった後に穴に棄てるということを繰り返していました。小林未散も蓮の罠にハマった被害者の一人で、穂香たちは何としてでも彼女を救おうとします。感想えっとクスクス笑いながら読んでいたら、最後思わぬ展開になり、もっと真面目に読んでいればよかったと後悔。急にミステリー小説の色が濃くなって、油断していたらやられた!という感じです。そんなところも含めて、やはり著者が謎すぎる。一体どんな人なんだ?!と、解説を読んだら、彼は1990年生まれで、高校卒業後は声優養成所などに通い、その後は広告代理店やITエンジニアを経験して、なんと小説を書こうと思ったのは二十代前半で、驚くことにそれまで読書経験はなしで、勉強嫌いで、は?なんだその朝井リョウさんのエッセイみたいな紹介文は〜!これだけ見ても筆者はまんま穂香っぽいんですよ。もう今作で完全に私のユーモアセンサーが稼働してしまったので、次作も期待しています。少しばかり上條一輝さんの『深淵のテレパス』や『ポルターガイストの囚人』に登場する「あしや超常現象調査」のメンバーを思い出すようなキャラクターだったので、「ハヤブサ探偵事務所」のメンバーにも続編を期待&希望したのですが‥結末を読むと、さすがに無理そうですね。残念。それでも楽しめたことには変わりないので結果オッケーということで!興味のある方は、ぜひ読んでみてくださいね!(ここまでネタバレなし)※以下はネタバレを含む感想になるので、お気をつけくださいアナヅラさまになった順番蓮の父→蓮→未散→穂香で、いいのかな?前任者が死亡すると次の人が受け継ぐ感じなのかなぁ。蓮の父も、未散も、失踪=死ってことですよね?えーっ穂香には狂ってほしくないな。最終的には穂香も狂って失踪するコースなのでしょうか?未散が蓮を穴に落として殺していたのは盲点でした。今思うと、いつもなら絶対に気づくはずなのに、お笑い探偵のテンションに乗っかっていたら、コメディにばかり気を取られていて、完全見逃しコースに。冷静に考えれば、途中から失踪者が女から男に変わっているし、未散の嫌いな父親が失踪している時点で彼女が殺している線が濃厚で、蓮から逃げて生還したわりには、記憶喪失になったから捜査に協力できないとか言ったり、違和感はたくさんあったんですよね。あと未散の生きながら死んでいる感じとかを見ると、父親と何かあったんだな、男に期待していないんだな、というのがわかったし、世の中の男に対する諦めや怒りがあるようにも感じていたので、ちゃんと考えればわかったよなぁと自分にゲンコツです。*アナヅラさまの中身*穂香も実父からDVを受けていた過去あり。また、父はロリコンでもあった。未散は父から性的暴行と、父の仲間からも同じ被害を受けていた。関は父が連れて来た客の一人だったため、殺して穴に棄てた。→アナヅラさまが求めているのは人間の汚さ?不幸?あの大穴は何を意味するのか。私が思うに、そのとき穴を利用している人間の深層心理が声として反映されているように見えたのですが、どうなのでしょう?穴から聴こえる声はどうもその人がかけて欲しい言葉だったような気がしてなりません。穴=人間の悪意や欲望のはけ口?不都合な事を処理してくれる代わりに、自身も死というカタチで代償を伴う?よくわかりませんが、そう解釈しました。穂香を虐げず、愛してくれるおっちゃんや仁の存在を彼女自身もわかっているだけに、かなしい。穂香腐らないで〜!以上、レビューでした。