夜尿症 | 児童養護施設で働いて思うこと

児童養護施設で働いて思うこと

元会社員で、転職し、児童養護施設と一時保護施設で働いていました。
そこで考えたこと、思ったこと、願ったこと、綴っています。

おねしょ。

普段はしないのに、なぜかある日突然してしまう事はきっとどの子でもある事だろう。

そんなときは、他の子に気づかれないように、そのままでいいよと伝え、

いつも通り登校してもらい、

みんな学校に行った後、こっそり洗濯して布団を干していた。

それについて怒ることはもちろんなかった。

 

ただ、そうじゃない、心の問題での夜尿もあった。

寝ている間だけじゃなくて、

朝起きてから、あえてそこでしている様子もあって、

どこまでが夜尿と言っていいのかわからなかった。

どうしてそうなってしまうのか、そうしてしまうのか、

たぶん本人もわかっていないんだろう。

心療内科に通っていたが、何年通っても変化はなかった。

本当に、誰にもわからなかった。

どこか心の奥に辛さを抱えていることはわかる。

でも、どうしたらいいのか。何がそうさせているのか。

中学生、高校生になっても、続いていた。

 

施設では、私が働き始めるずっと前から、何年も色んな対応策を考えてやってきていた。

「大丈夫だよ」と優しくフォローする。

そうして優しくしてもらえることが嬉しくて、あえて朝ベッドで排尿しているのでは。

少し自分で洗濯してもらおう。

それはさすがにかわいそうだ。洗濯機にいれるところまでやってもらおう。

夜尿が甘えたいという表れだとしたら、他の所で甘えられる時間を作ろう。

逆に厳しくしたほうがうまくいくのか・・・

幼児期から中学生まで、いろんなことを試したけれど、何も変化なく続いていた。

中学生からは思春期で本人も嫌がったので、もうルーティーンのように、淡々と洗濯していた。

 

思春期になると、本人も触れられたくない話だし、けれど衛生的にはしてほしいし、とても難しかった。

においの問題はどうしても起きていた。

本人の部屋だけでなく、学校からいじめに発展しないか心配する電話ももらっていた。

 

 

 

そんな中で、ある日、本屋さんをぶらぶらしていて、

なんとなく手に取った一冊。

普段だったら手に取らないだろうけど、なんとなく気になって、

パラパラ読んでみたら、夜尿症についてぴったりの記述があったので驚いて買ってしまった。

本の中から抜粋。

 

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【夜尿症】

夜のあいだに尿をもらしてしまうのは、その子が昼のあいだ自分を抑えすぎており、夜になると自分をそれ以上コントロールできなくなってしまうからだと考えられます。そういうこどもは・・・特に、父親の権威、あるいは父親の役割を果たしている人の権威を恐れています。・・・父親を不機嫌にすることを恐れていたり、父親の期待にそえないことを恐れていたりするのです。・・・

・・・今その子に必要なのは、何よりも励ましなのです。あなたのお子さんは、すでに充分すぎるほど頑張っています。・・・

 

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施設で夜尿があったその子供は、父にかわいがられており、父と暮らしたがっていた。父の思わせぶりな発言で何度も期待したが、一緒に住もうとは言ってもらえないまま何年もたっていた。家庭復帰するなら、父親の家。いつか一緒に住みたいと、たぶん心の中では思っていたんだろう・・・。
父に嫌われないか、見捨てられないか・・・不安で、怖くて、実はすごく頑張っていたのかもしれない。

 

 

そんな風に、その子を見る目が変わった。

 

だからといって、状況は何も変えられなかったけれど・・・。