施設か里親か③ 里親へ送り出したケース | 児童養護施設で働いて思うこと

児童養護施設で働いて思うこと

元会社員で、転職し、児童養護施設と一時保護施設で働いていました。
そこで考えたこと、思ったこと、願ったこと、綴っていきます。

 

里親へ行った子供の話。

4歳のこどもだった。

 

お母さんが一人で育てていたけれど、いろんな事情で育てられなくなった。

里親へ行くことが決まった。

 

マッチング。里親候補さんと子供の相性を、お互いにみてもらう。

何度も里親家庭へ、児童相談所の職員と子どもとで交流に行った。

顔合わせ、半日交流、一日交流、最後はお泊りもした。

里親さんは自分たちに合うか確認し、引き取るなら覚悟を固めていったんだろう。

子どもはとてもいい子だったし、育てやすい子だったから、案の定、マッチングはすぐに決まった。

 

子どもも、最初から、交流を楽しめていて、いつもご機嫌で保護所に帰ってきた。

里親という言葉や、いずれそのお家で暮らすことなど、たぶんギリギリまで知らされなかったと思う。4歳だから。

私達職員も、そういう大事なことは何も触れない。

ただ、「今日どうだった?」という会話だけ。

「おじちゃんと遊んだ」「おばちゃんのごはん食べた」とか、おしゃべりした。

だんだん「おじちゃんとまた遊びたい」「次はいつ?」という言葉が聞けたので、子供にとっても相性が良かったのだと思う。

 

そんな、日常会話みたいな会話しかしてないんだけれど、

子どもはやっぱり、自分の運命が動いているのを感じるものなのだろうか、

決まりかけた頃、妙におとなしい日々が続いて、「さみしい」と職員に甘えていた。

その子にとっては珍しい事だった。

親に甘えることができなかったため、他人に甘えることを遠慮している子だったのだ。

職員に抱っこされることが増えていた。

おとなしい日々を過ごした。

でも数日すると、いつもの様子に戻り、元気でやんちゃで、また交流に出かけ、元気いっぱいだった。

 

いよいよ里親委託の日が決まった。

「明日は、おじちゃんの家にいくんだよ」と本人もとても楽しみにしていた。

 

出発の日は、早めに準備を終えて、まだかなーとお迎えを待っていた。

迎えに来た児童相談所の職員と手をつないで、元気にうきうきと出て行った。

こちらを振り返ることなく、お別れを忘れるほどに、前を向いていた。

 

職員としては寂しかったけれど、とてもとてもうれしい別れだった。

未来に希望をもって、楽しそうに保護所を出ていく姿は、本当にうれしい。

不安いっぱいで、泣きそうな顔で帰る子もいるのだから・・・

 

4歳の心の中が、どんな気持ちだったのか、本当のところはわからない。

でも、会話に親の話が全然でてこない子だった。

甘えられずに育ったから、何か思う所もあったのだろう。

里親さんの所へ行くこと、もうママの所へ戻らないことを告げられた日も、

落ち込むことなく、荒れることなく、いつも通りの様子だった。

 

里親さんのところで、思いっきり甘えられるといいね。

たくさん遊んでもらえるといいね。

飽きるまで抱きしめて、あたまを撫でてもらえるといいね。

手をつないで眠れるといいね。

たくさん愛してもらえますように。

 

幸せそうに保護所を去って行ってくれた、うれしい思い出のひとつ。