お店の人が、鍋を運んできた。見ると大きな八角形の鍋の中に真っ黒な色をした汁が入っていて、その中心は更に区切られて、別の汁が入っていた。どちらも汁の中にはネギやらクコの実などが浮いていて、いかにも身体に良さそうなものしか入ってない漢方って感じ。
ちょっと先に味見をしたかったけど、全さんに「グツグツするまで待って下さいね」と言われ、お預け…。
具材も次から次へと運ばれてきた。テーブルには乗り切れないので、ワゴンが全さんの脇に置かれて、そこに色々と乗せられている。うん、これはいいシステムかも。日本にもこういう風にワゴンが出てくればいいのに、と思った。そうすれば、具材が食べるのに邪魔にもならないのだから。
頼んだ具は、木耳、蓮根、キノコ、アヒルの舌、ブタの喉、豚挽き肉の肉巻き、ウズラの卵等など。
「等など」とハッキリ覚えていないのは全さんが、全部仕切っていたからである(笑)。
そう、彼は「鍋奉行」だったのだ!
汁がグツグツと煮立ってきたので、煮えにくい蓮根などから入れ始め、更に火をよく通して出汁も出るようにと、肉類も入れ始めた。
煮えるまで、全さんに通訳してもらいながら、王さんや全さんの家のこと等をあれこれ賑やかに話しながら待っていた。沈んでいた具材が浮いてきたのを見て、全さんが一つ自分の器に取って、“いい感じ”かチェック(笑)。そして初めて「さぁ、もう出来たので食べてくださいね」。
器には、鍋の汁も入れるとのこと。全さん曰く、そのほうがイイらしい。
そして私や母の器に、せっせと鍋から具を取り出してくれていた。熱くて辛いんだから、そんなに次から次へと入れられても食べられないって~(笑)
私や母の面倒ばかり見ていて、自分は食べる暇さえないんじゃないかと思えたほどだけれど、その点はシッカリしている今時の子なので、合間にシッカリと食べている。そして、食べたらまた具を継ぎ足していた。全さんの手を煩わせないで自分で鍋から取ろうとすると「そこは今入れたばかりだから、まだですよ」ってダメ出し(笑)。お奉行様の言うことには間違いはないので、またもや、よそって貰った。
肝心の味だけれど、汁は色から見て判るように、かなり辛い。
煮込んだ具でさえもかなりの辛さになっている。真ん中に仕切られている部分の汁は単なる出汁の味だけって感じ。辛さに慣れてしまうと、物足りなくさえも感じるけれど、舌を休ませるには丁度いいようになっていた。そんな風なので、汗が次から次へと噴出してくる。そのくらい辛いのだ。それなのに、ドライバーの王さんは更に唐辛子をこんもりと具に降りかけて食べていた。やっぱり地元の人は凄いんだぁと実感。
全さんは王さんに比べるとまだ「お子ちゃま」なので、そこまで辛いのは食べられないらしく、合間に胡麻ダンゴを嬉しそうに食べていた。
アヒルの舌(左)だけれど、食べられる部分はホンの僅かだった。舌とそれに繋がる骨や軟骨が殆どなので、どちらかと言うと、「しゃぶる」感じ。味は特にこれと言う特徴は無い。コリコリとした食感を味わうだけのものなのかもしれない。ブタの喉(右)の部分はプルプルとシコシコの間の食感で、同じく癖は無し。唯一の欠点は、なかなか噛み切れないところかしらね(笑)
熱さと辛さにハフハフしながら食べてかなりお腹いっぱいになってきた。
全さんは「まだ足りないですかぁ?」と聞いてきたけど、私達親子は満腹。王さんや全さんも満腹だったようで、もう要らないとのこと。最後に胡麻ダンゴを残すのも勿体ないので、ってことで、残っている分(王さんが食べなかったので)も食べてお仕舞い。それにしても、全さんが鍋奉行で仕切る、仕切る(笑)。もっともそのお陰で、母は何もしないですんだけれど。
すっかり満足したので、ホテルに帰ることに。王さんは車を持ってくるために一足先に出た。全さんは支払い。私達親子は…というと大きなエアコンの吹き出し口の前で涼んでいた(笑)。
ともかく身体の中から暖まったので、次から次へと汗が止めども無く出てきていたのだった。ある程度汗が出てしまうと、あとはスッキリした感じ。こうやって身体の中から、新陳代謝を促し、老廃物などを汗と一緒に出してしまうなんて、やっぱり漢方の国である中国ならではの料理だと思った。




