[ザ・社会人大学院生・藍原寛子]
今週のレジュメ1です。説明用ヴァージョンのため、やや長いですが。
私たちは「震災一期生」で、特に社会人大学院生の同級生には特任准教授、元議員の方、映画プロデューサーの方、中越地震で現地で活動してきた方々と、大変にユニークな顔ぶれです。ゼミを占拠ならびに制圧しているとの(??)噂もあります。噂ですよ。

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後藤康夫先生ゼミ 2013年10月9日(水)藍原寛子
『ドイツ脱原発倫理委員会報告―社会共同によるエネルギーシフトの道すじ』(原題:ドイツのエネルギー大転換―未来のための共同事業)安全なエネルギー供給に関する倫理委員会著、吉田文和・ミランダ・シュラーズ編訳、大月書店

1. 倫理委員会とアンケート委員会
 「倫理委員会」=国家倫理審議会。道徳的、倫理的問題を議論(各分野25人の委員、毎月審議)。過去に長い歴史と実績。主に医療倫理で、幹細胞、臓器移植、中間的な性、認知症、終末医療
 「アンケート委員会」=法律、経済、社会、倫理的観点から、成長と福祉、生活と質などについて、超党派で長期的研究。CO2排出削減を議論→立法化。2013~放射性廃棄物対策を議論中
→「特定の政策、経済的選択を伴う倫理的問題は宗教、NGO、メディアで議論される必要=社会的合意
 「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」の論点=原発停止と将来ビジョン①原子力の倫理的次元②気候変動の中での原子力停止の倫理的意義③原発の迅速停止の意味④代替エネルギー問題
 倫理委員会の重要論点①放射性廃棄物問題の将来世代への繰り越し是非②将来世代に未解決問題を残しながらエネルギー多消費型生活スタイルへの是非→倫理的なコスト&ベネフィットを議論「行動しないで生じるリスクと、行動した結果将来の世代に残されるリスク」の比較
 結論:再生可能エネルギーへの大転換→燃料はこの10年で2倍→未来への投資としてのコンセンサス
2. 委員会の目的と使命
 再生可能エネルギー転換「エネルギーシフト」<「エネルギー大転換」(社会のイノベーションを含む。社会と経済と政治の共同作業)
 福島の教訓:「原子力エネルギーの利用に責任を負えるか?」
 「ドイツの持続可能な発展に向けたエネルギー供給の整備」→立場の異なる委員で構成し議論する
 「情報開示のもとで自省的に検討を行う文化に貢献したい」
3. 倫理的立場=人間は自然とどう付き合うべきか?を倫理的な観点で絶対的に決断する責任のある委員会
 統合的リスク判断→何が受け入れ可能、不可能か、全ての視点から責任を負えるエネルギー供給
 立場1:絶対的拒否の立場:技術的リスク定義は原発には当てはまらない。福島で言われた『残余のリスク』(想定を超えた事故は仕方ない)は受け入れられない。原子力のリスクはリスク限定できない、相対的に比較衡量してはならないほど大きなリスク・被害(被害の甚大さ、遺伝子損傷)⇒事故の規模と発生確率を掛け合わせて測ることが不可能なのが原発事故→災害が発生すると誰も望まない、誰も他の人に要求できないことが発生。(絶対的アプローチ)
 立場2:リスクの比較衡量:すべての科学的研究が、リスクとベネフィット(チャンス)を科学的に見積もってきた→原子力と再生可能エネルギーとのリスクとベネフィットの比較で評価可能(相対的)
 二つの立場に対する倫理委員会の見解①立場の違いを解消するものではない②損害規模や損害発生率の見積もりと差引が議論ではない→エコロジー、経済、社会適合性から原発を止め、よりリスクの低いエネルギーで代替して原発を止めさせる→「原発は他のエネルギーで代替できる」という意見を分かち合うこと→賛成、反対の相互理解の仲介への道づくり
4. 共同事業「ドイツのエネルギーの未来」:エネルギーの枠組みを議論
 ①再生可能エネルギー②化石燃料③コジェネレーション・熱電併給④インフラと電力貯蔵
 その他の枠組み条件としての制度や法律の改正、中央政府・地方政府の政策、社会全体のシステム
5. 核拡散問題
 原子力エネルギーの民生利用は、軍事上の核兵器製造から信頼をもって区別できない
 原発増設の世界的な動きの問題:テロ行為、原子炉を持つ国家の社会秩序の崩壊→原子力エネルギー利用において、ほとんど何も解決されていない⇒他のエネルギー源に代えていくことでしか解決できない
6. 放射性廃棄物最終処分問題
 現在は取り出し不可能な形での最終処分、放射能漏れの危険性と隣り合わせ
 「安全な廃棄処分を要する期間を短縮できる」というのはあまりに楽観的見方
7. 倫理委員会の最大の成果:メイドインジャーマニーの国際的な提言
 気候保護への提言:原子力エネルギーが不可欠と言う国際的に支配的な意見への反例をドイツから示す
 クリーンコールと二酸化炭素の利用:チェルノブイリ事故以降から、エネルギーを多様化してきたドイツの成果を国際的に共有→国際的研究プログラムとしてイニシアチブ(学術的、実証的な成果)
 原子力施設の安全性についての国際的な視点提示:欧州は地続き、他国や地域と不可分な原子力、原子力に対する安全面からの考え方をドイツから発信する



8. 議論(私見)
 日本「エネルギーがない国、日本。国の将来の発展を考えると、エネルギーを確保しなければならない」

戦前:エネルギー確保のためにアジアに派兵、太平洋戦争→敗戦(「第一の敗戦」)
戦後から現在:「エネルギーを国内で確保することが必要」→そのために原子力が必要(しかし原子力に多様な利権が絡む)→東京電力福島第一原子力発電所の連鎖爆発事故(「第二の敗戦」)→さらに現在はその先、アジアに対して原発輸出で原発エネルギー技術の覇権強化へ
 ドイツ 倫理委員会の議論を経て→安全、倫理的側面を経た、新たな国際的イニシアチブを提示
 日本国憲法 前文:「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」→日本では憲法改正論議、日独であまりにコントラストな「ポスト・フクシマ原発事故」現象

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