生まれた時から
祖父は創業者
祖母は教育ママ
父は二代目候補の役員
母も教育ママ
2歳違い兄は真面目な優等生
2歳違い妹は控えめな美人

次男で生まれた
彼はヤンチャ
祖父譲りだった

祖父はよく彼を呼んで
一緒にロボットを作った
手先の器用なエンジニアだった
彼は厳格だけど物静かな
祖父を慕っていた

祖父は自分に似た

次男が愛おしく

時々ヤンチャでもいいから
自分が思っていることを
誰よりも一番先に発言しなさい
これしか言わない

他のことは言わずに

一緒に遊んでくれた

父は何も言わない
言わないと言うより
殆ど家にいなかった
世界中に自社の電気製品を
売り込んでいた

兄は幼少期から
一流大学を目指して
帝王学を学んでいた

妹は箱入り娘で
お嬢さん学校に通ってた

祖母も母も

長男と妹のことで

頭がいっぱいだった

ヤンチャな次男には

口うるさく叱るだけで

殆ど気にかけていないようだ


公立高校を卒業した彼は

イギリス留学の意思を母親に伝えた

イギリス留学の目的は

父のように世界中を飛び回り

祖父の会社を大きくしたいと伝えた


母親は困った様子で

駐在先のアメリカにいる

夫に確認した

父は二つ返事で承諾してくれた


母から聞いた祖母は祖父に確認した

祖父も後押ししてくれた


彼の本心は

ただ居場所のないこの家を出て

自分探しをしたかった


イギリス留学の直前に

アメリカにいる父から

初めて自筆の手紙が

彼宛に届いた


短い文章だったが

初めて父を感じた


その中で心に残ること

周りの人の話をよく聞いて

全てを受け入れてから

自分を意見を言いなさい

意外だった

祖父がよく言っていた

真逆のことが書いてあった


母も祖母も厄介ものが

居なくなった気分だろう

長男も妹も他人事のようで

何も言わなかった

たた祖父だけが

困ったことがあったら

一番先に連絡しなさいと

自分名義の通帳を渡してくれた

全ての援助は祖父からと

家族内で決まったようだった


旅立つ日

空港では家族と同級生

祖父の会社の人達数人で

見送ってくれた

その時は影に隠れて

見送ってくれた人の存在を

まだ知る由もなかった


イギリスではホームステイ先の

家族が心地よく迎えてくれた

天真爛漫というのだろう

イギリスの両親も

二人の娘たちとも

直ぐに打ち解けることができた

英語も少しずつマスターした


イギリスの高校は

エリート校では

なかったのが救いで

直ぐにヤンチャ達が

彼の周りに

集まってきた

ここでの三年生

祖父の口ぐせの

誰よりも一番先に自分の

意見を言いなさいを

心がけ実践した

まだ英語も片言だったが

持って生まれた

祖父の遺伝子を感じた


環境に慣れるのに

一年かからなかった

二年生からは

周りからリーダーとして

一目置かれていた


彼もその期待に

応えるかのように

リーダーの自覚が

備わってきた

何処にいても

男女を問わず

彼はリーダーだった


もうすぐ卒業という時期に

妹からの便りが届いた

長男が日本で

一番の大学に入学してが

直ぐに新興宗教に入信し

家を出て行った

祖母と母の落胆は

計り知れないもので

家族は崩壊の危機だと書いてあった


祖父はアメリカにいる父を呼び戻し

会社の代替わりを決断した

その年の株主総会で

祖父は会長

父は社長に就任した


それでも

祖父と父からは

何の連絡もなかった


祖父は相変わらず

通常の仕送りの数十倍のお金を

毎月秘書から振込んでくれた

しかし彼は必要最低限しか

使わなかった

自分でもアルバイトをして

生計を立てていた


やがて彼もイギリスの

大学に進学した

ホストファミリーの

家を出て自立した


大学の専攻は脳科学

彼は人の脳に興味を持ち

先々は世界中の

人種の脳を探求したいと

思うようになった


彼のリーダーシップは

変わらなかったが

イギリス留学直前で

父が伝えてくれた

人の話しをよく聴いて

受け入れてから

自分の意見を言うようにを

心がけるようになった

祖父の教えと

父の教えを

状況に応じて

使い分けるようになった


その後彼は大学院にまで進み

脳科学を探求した

世界中の人種の脳を探求するため

世界中に行って

実際に現地の人達と

関わりを持ちながら

探求することが

彼の夢だった



やがて彼は大学の

修士課程を卒業し

世界中の脳を探求する旅に出た

脳を知ることは人間を知ること

自分探しの旅は

人間探しの旅になった

ここで祖父からの

仕送りが役に立った


それから5年後

突然の妹からの手紙

祖父危篤帰れの通知


空港に出迎えてくれたのは

妹と妹の友達


直ぐに祖父の元へ

病院ではなく

何故か祖父の実家だった

祖父の家で出迎えてくれたのは祖母

祖母は家の客室に通してくれた


よう、久しぶり

祖父が笑顔で迎えてくれた

祖父は元気だった

両親もいて

妹と妹の友達も

いなかったのは兄だけ

豪華な食卓と

帰国おめでとうの乾杯


3ヶ月後の株主総会で

祖父は引退

父は会長

そして彼は社長

妹は常務だった

全てのシナリオができていた


彼は会社勤めの経験はないが

役員は全て父の腹心で

妹は番頭さんと

いうことになっていた


祖父は

会社では産業ロボットが

主力産業になったから

暫くロボットで游んでいろと

軽く言われた


彼は唖然としたが

二つ返事で承諾した

彼はこれまでのことに感謝し

全てを受け入れた


今まで探求してきた

人間の脳の学問は

次のステージへと進んだ


それは

人間の脳から

ロボットのAIへ


その関係性が

これからの人生の

テーマになった


創業者でワンマンだった祖父の

リーダーシップ


その教えに疑問を持ったのだろう

足りないものを埋めるように

父の受容、共感、傾聴の教え


誰よりも一番に発言しなさい

みんな意見を聞いてから発言しなさい

その二つの教えが彼を成長させた

彼は社員の話しをよく聴いて

ここぞの時に強烈な

リーダーシップを発揮した

そして妹は彼が暴走しないように

今までのように助言してくれた


数年後

会社は時代の波にのり

産業ロボット業界で中堅クラスの

企業に成長した


あの時

旅立つ日

空港で人知れず

見送ってくれた

帰国の日

空港て出迎えてくれた

妹の友達と結婚し

二人の男の子を授かった


今では三人の孫がいて

一番上の男の子とは一緒に

犬のロボットをつくり

AIの弱点である部分は

探求してきた人間の脳を

プログラミングした


時折、孫には

誰よりも一番先に意見するように

それから

みんなの話しをよく聞くように

両方を心がけるように教えた


いずれ彼が会長

彼の長男が社長

そして孫が次の世代を

引き継ぐようにと…