※長文と感じられるかも。工夫して見てね。

前回の記事に続き、都内散歩のコーナーです。淡路町からお茶の水は歩いて行ける距離なんですよ。立ち寄ったのが下倉楽器さん。高校生の時、初めて自分でお金を出してギターを買ったところです。YAMAHAの売値8万程のクラシックギターでした。

 

 

下倉楽器のある明大通りには、当時より楽器屋さんがたくさん。数ある中でどうしてここを選んだかというと、町の本屋さんのように入りやすい見た目だったからでしょうか…忘れました(笑)。ギターを調弦してもらっている時のワクワクは今でも覚えています。その後もこちらで何本かギターを買いました。

 

 

右サイド中央および下の写真は下倉楽器さんではありません。他の楽器屋さんの写真です。最近は楽器屋さんに入っても、陳列されているアコースティックギターに胸がときめくことがなくなりました。これを俎上に乗せたくて貼ったものです。

 

 

新品のアコースティックギターに胸がときめくことがなくなって久しい。100万円以上出したらまた別ですよ?しかし手の出しやすい価格では皆無です。嘗ては以下の材を使った構成が黄金比とも言える基本形でした。

 

トップ:スプルース

サイド&バック:ローズウッド

フィンガーボード:ローズウッドまたはエボニー

 

ここから、例えばスプルースなら、「ジャーマンスプルース」なのか「シトカスプルース」なのか、ローズウッドなら「ホンジュラスローズウッド」なのか「インディアンローズウッド」なのか等々、選択肢がありました。

 

ローズウッドの木目が豪快に暴れ、よく締まった黒檀を叩くとその硬さそのままにコツンコツンと小気味良い音をたてる―

昔は音や触り心地の良さもさることながら、見た目からして一つの木工工芸作品のようなものが並んでいたんですね。以下は私の所蔵品です。当時としても最上級どころかミドルクラスのモデル(定価4万円)ですが、木目が非常に美しい。

 

MORRIS W-40(1979年)

トップ:スプルース合板

サイド:アンデスローズ

バック:アンデスローズ2ピース

フィンガーボード:ローズウッド

 

 

こうしたギターの流通が減り、無くなったのは1973年のワシントン条約CITES(※))によるものです。

Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)

 

戦後の工業生産の発展による公害、天然資源の乱獲による生物の絶滅などの反省を踏まえて、エコロジー、サスティナビリティへの関心が世界的に高まった結果、本条約は制定されました。

 

世界の森林資源に対しても、樹木の過度の伐採や取引の監視・規制が行われ、ギターに関わる木材たちも例外なく対象となりました。上記Morris W-40の中央・右写真のアンデスローズについても現在は入手困難。2017年にはワシントン条約締約国会議にて、ローズウッドすべてが附属書II(絶滅の危機にあり、取引を規制すべき種)に記載となりました。家具生産による乱獲の結果でしょう。

日本のメーカーで言えば、90年代くらいまでは、倉庫にあるものや端材をうまく使って、何とか質の良さを保っていたとは思いますが…。

 

皆さんのおじいちゃん、おばあちゃんの家にある、黒檀の箪笥、こちらはかろうじて大丈夫なようですが、大変貴重なものに変わりないです。あと旅館とかに置いてある、フォークギターやクラシックギターね。古くてヤレていても、60年代、70年代のものであれば、ブラジリアン・ローズ(ハカランダ)という最高級木材を使っているかもしれません。箪笥もギターもしっかりメンテして大事に使ってあげてください。

 

今はバスウッドやテックウッドなど、昔はなかった材をギターに使用していますね。カーボン製のギターがあるくらいです。今あるもので作るしかないんでしょう。国内に目を向けて、北海道のエゾ松あたりを使用すれば随分良いものが作れそうですが、楽器隆盛の時代から遠ざかった今では需要がそもそもない。生産するという土壌がない。

 

 

アコースティックギターというのもマニアックな世界です。質の良いギターを持っていたとしても、音の良さを本当に知ってもらいたいのであれば、部屋のソファーなど近くで聴いてもらうのが一番でしょう。演奏する場所が喫茶店、ライブハウスでは、生演奏であれ場の反響の良し悪しが絡んできてしまいます。マイクやピックアップを通せば、出力されるギターアンプやPAの音を聴いてもらう形になります。

 

レコーディングされたものにもマイクやピックアップが絡みます。CDやストリーミングから流れてくる音は、マイクやピックアップから入力した音に、各種エフェクトで加工した結果です。それは部屋でアコースティックギターを抱え、生で弾いた際に聴こえてくる音とは異なります。

 

アコースティックギターの音がダイレクトに伝わらない⇒極論(※)。ある程度大きなハコで演奏したりレコーディングに使用するのであれば、「マイクやピックアップを通しているのだからエレクトリックといっしょ」と割り切って、ギターの材はある程度妥協して良し。寧ろエレクトリックギターを使えばいい。

※発想の転換というか、ひとつの考え方です。アコギの音に悩み過ぎる方へのひとつの提示であって、アコースティック楽器を否定するものではありません。それどころか大好きです。アコースティックorエレクトリックの二者択一を迫っている訳でもなく、両刀も全然あり。「あまり一つのことに拘り過ぎると、枠の外にある折角の可能性すら見えなくなってしまうよ」これが言いたかった。

 

昔、ボブ・ディランがアコースティックからエレキに持ち替えた時、日本を含め世論はカンカンガクガクの大論争だったそうですが、こういう話も上がったんでしょうかね?知りませんが。平和な世界で好きだなあ(笑)。

 

「人間、どんなことであれ、自分が今いるところから離れるのって、勇気が要りますね」と書いて、今回の締めといたします(どんな記事だ?(笑))。離れるのも、留まるのもどっちも全然ありだと思います。失いたくないもの。何かを犠牲にしても手に入れたいもの。人それぞれかと思いますが、貴方にとって幸せな選択でありますように。

 

 

最近見にきてくれている美咲さんと、美咲さんのチャレンジを教えてくれたさちぴんさんにサービスショット。千葉県富津市大貫漁港で出会った三毛猫と、釣ったキスをフライや天ぷらにしたところです。マヨネーズと焼酎でどうぞ。