【朗読台本】リバース・ストーリー | 今も昔も

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「自作歌詞&曲」と「声劇台本」が主食のごった煮ブログ。

【リバース・ストーリー】

※一人称や性別の変更はご自由にどうぞ



彼女は消えた。
突如として、僕の前から消えたのだ。

理由なんて大したことはない。
ただ、敵の刃に切り裂かれて、薄ら白い光になって消えた。
それだけのことだ。

この戦が溢れる世界では、珍しいことでも何でもない。

だから僕は願ってみた。


「彼女を、取り戻したい」

僕の中に居る、誰かが答えた。

『本当に、後悔しないのならば、力を貸そう』

「僕を守って消えた、彼女のためになら、僕は何を犠牲にしても構わない」

『…彼女が、どれほどに僕を大切に思っていたか、知っているか?』

「知っている。僕らは同じだけ、愛していた。愛し合っていた」

『…それでも、本当に、彼女を呼び戻したいと願うのか?』

「当たり前だ」

『何を犠牲にしても?』

「当たり前だ」

『ならば、力を貸そう』

「ありがとう。これでまた、彼女と共にいられる。
 彼女に愛を伝えることができる。
 彼女に触れることができる。
 彼女と、夜を超えて朝を迎え、穏やかに一日を過ごすことができる」

『さぁ、寄越せ。対価を。
 お前にとってこの世とも等しい、大切な女性を呼び戻すための
 お前にとって、この世よりも大切な、彼女を呼び戻すための、対価を』

「わかった。何だって持って行ってくれ!」




その後、その部屋に残ったのは、僕の衣服と。
それから、僕の中に居ただれかだけだったそうだ。




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彼女を取り戻すために
・僕自身が対価となって消えてしまった
・僕自身では対価としては足りず、呼び戻された彼女までもが対価となった
2パターンお好きな方を想像していただければ嬉しいです