【朗読台本】 夢都狐(むつきつね) 【悪夢シリーズ】 | 今も昔も

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「自作歌詞&曲」と「声劇台本」が主食のごった煮ブログ。

【 ごちゅうい 】


※ 悪夢シリーズは、「悪魔と人間」「神と人間」など「人外と人間」の恋の話
※ 悪夢に見えるけれど、当人たちはすごく幸せなひとりがたり用の台本です
※ これらを元に、創作をされる場合には、必ず所定の方法で連絡をお願いいたします
※ ニコ生などで利用する際には、目次ページのリンク、またはこのページのリンクを張ってください

 

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私は彼を愛している。彼も私を愛している。
だってこんなにも熱い視線が絡み合うのに、
お互い何も意識していない、なんてことはないんじゃない?

例えばほら、空が情熱的に染まる宵闇で。
彼が私を見る目は、私に出会えた驚きと
それから感動の涙で彩られているわ。

他にも。彼が風邪で寝込んだと聞いて会いに行けば
恥ずかしそうに布団に顔を隠して、
それから照れた声で「大丈夫だよ」なんて言うの。

でもね、そんな仲睦まじい私たちにも、
1つだけ気になることがあるのよ。

私は綺麗な白装束だけれど、彼は血色が良すぎるの。
愛しあう二人だもの。装いだって揃えたいと思わない?


だから私はこうしたのよ。


愛しい彼の首筋に、かぷりと牙を立ててみたの。
そしてそこから、彼が生きる証、真っ赤な命。
私の瞳と同じ色をした…そう、血を啜るの!

そうしたらほら、赤色が抜けてきっと彼は真っ白になる!
私と同じ、真っ白な体に!


そう思っていたのに。
時間がたつにつれて彼の体は、薄ら青く汚い色になってしまった。

これじゃぁだめだわ。
これは愛しい彼じゃない。

彼はもっと、美しい顔立ちと、
透き通るような瞳と、
柔く(やわく)美味しそうな肌と、
少し震えたような私を呼ぶ声。

だから私は探すのよ。
私の愛しい彼を。
人間の姿に化けて、愛しい彼の面影を探すの。
そして足りないところを補って、愛しい彼にしてあげるの。

そうね…
次はあなたがいいかもしれないわ。ふふっ

たぁーっぷり、愛してあげるワ。

 

 

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【夢都狐】
架空の妖怪。好みの人間を化かして食べる。