「奪われる日本(関岡英之著)」を読んで | My Aim Is True

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今さらながら、「奪われる日本(関岡英之著)」を読みました。


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これまで、ブログで紹介してきた(僕が読んですぐ書いた)本は、新刊の本がほとんどでしたが、先日紹介した関岡英之氏の「拒否できない日本(2004・文藝新書)」と、本書「奪われる日本(2006・講談社現代新書)」は例外です。

“今さら、この本を読んだのかよ”と呆れる人も多いでしょうが、今さらながら言わせて頂きます。

この2冊は日本を保守したいと思う愛国者にとって超必読書です。

※関連リンク:「拒否できない日本(関岡英之著)を読んで」 前編  後編


いやぁ、この2冊はもっと早く読んでおくべきでした


日本政府に対するアメリカ政府の「年次改革要望書」の存在は、ほとんどの人が既に知っていると思いますが、やはり、前著「拒否できない日本」によって、初めて世間一般に広く知れ渡ったようなのです。驚くのは(著者も驚いていますが)、自民党議員の大半も知らなかったようで、自民党に講師として招かれたりもしたようなのです。それまで、政府&官庁中枢にしか知られていなかったようなのです。

そして、それを急進的に推し進めたのが、小泉&竹中コンビオリックスの宮内義彦氏(最近、「かんぽの宿」で話題)です。


前著「拒否できない日本」は著者がグローバル・スタンダード、そして日本の所謂「構造改革」に疑問を抱き、追究していった先に「年次改革要望書」にぶち当たり、それに対する懸念が表明される書下ろしの新書でしたが、本著は、それ以後、いくつかの雑誌に寄稿された、確信的に「構造改革」に対して糾弾する論文をまとめたものです。

ちなみに著者は保守派であるため、前著が保守寄りの文藝春秋から出版されたのはわかるんですけど、本書は反米(反日)左翼の講談社から出版されています。

それも本書にまとめられた論文は「正論」「文藝春秋」「テーミス」などといった保守寄りの雑誌にしか掲載されていないにも関わらずです。

保守的な論評集が、なぜ、わざわざ講談社から出版されたのか、最近の講談社の傾向からして気づかれる人も多いでしょう。

おそらく、講談社はこれを使って反米を煽りたかったのでしょう。

左翼出版社は反日よりも反米を重んじるようになりつつあります。

例えば、東條英機と言えば、左翼にとって反日プロパガンダのために、「A級戦犯!」と糾弾され続ける存在でしたが、昨年、講談社から「東條英機 天皇を守り通した男(福冨健一著)」という東條英機を肯定的に記す本が出版されました。

おそらく、東條を肯定的にすることで、反米を煽りたかったのでしょう。


日米関係を悪化・離縁させることは中国共産党・朝鮮労働党の最重要外交課題ですし、日本の左翼にとっては反米を推し進めることは必然的に反日に繋がるという思惑があるのでしょう。


念のため言っておきますが、僕は極めて「反米」的である共に、戦略的に「親米」です。

左翼に煽られ、盲目的に反米になることは愚の骨頂です。

先日紹介したフレデリック・スタール(親日アメリカ人)が1930年の日本国民に送った言葉にあるように、「いかなる国といえども、利他的な国はない(=全ての国家は自らの国益のために行動する)。これを期待することは愚である」という感覚を持つ必要があります。

台湾は親日的な国として知られていますが(NHKはそれすらもぶっ壊そうとしましたが)、全ての台湾人が親日的であるわけではありません。

とはいえ、中国に呑み込まれないために、日本の協力を受けたいという台湾人の思いは強いですし、中国のアジア覇権を進めさせないために台湾を中国に呑み込ませないと日本人は強く思います。

つまり、日台共同で中国に対抗するということで利害関係が一致しているので、日台友好が重要なのです。

アメリカに対しても同様です。アメリカは一応、今のところ日本&台湾&韓国を使ってアジア覇権を維持したいと思っています。そして、今のところまだ中国にアジア覇権を譲る気はありません。もちろん、日本人も中国に呑み込まれたくないでしょう(身近にいて、「お前(joyride)は日本を守りたいのか?」と嘲笑する中国ルーツのニホン人らは例外)。

この点においては日米の利害関係は一致しているのです。

日本にしてみれば、世界最大の軍事力を持つアメリカを利用しない手はありません。そのため、戦略的に親米であることが得策ですが、だからと言って、盲従してしまうと「年次改革要望書」のように、ただアメリカの国益のためだけに日本が貪り尽くされます。


僕が好きな保守派ライターに高山正之氏がいます。

彼のコラムをまとめた論評集に「ジョージ・ブッシュが日本を救った」という本があります。僕は未読なんですけど、これまでの高山氏のコラムから想像するに「クリントン民主党政権時代の訴訟の嵐で日本企業が莫大な訴訟金を払ってきたが、ブッシュ政権時に集団訴訟改革法の制定で、日本の企業が訴えられなくなった。ブッシュのおかげだ」と記しているのかもしれません。

確かに、それ以後、アメリカでは以前のような馬鹿げた巨額の訴訟が起こらなくなっています。そもそも、そのような訴訟の嵐がアメリカ企業の活動を妨げていたので、ブッシュはそれを止めたかっただけでしょうが、となると、人口比で見ても日本の25倍以上いるアメリカの弁護士は職にあぶれてしまいます。

それ故に、ブッシュはアメリカ社会の訴訟は減らそうとしたものの、日本に司法制度改革及び司法の規制緩和(自由化)を要求し、日本を訴訟の嵐に巻き込み、アメリカの弁護士を儲けさせようとしたのでしょう。

ブッシュにしてみたら、「小泉サンキュ!最愛の日本人!」と言ったところでしょうか。


個人的に、もう一つ気になっていたことを抜粋します。

それは近年の「談合」に対するメディアの猛バッシングです。

おまけに「談合」をバッシングしつつ、メディアは自由競争社会をもバッシングするのだから呆れてしまいます。


関岡氏:「今日、一言でも談合に理を認めれば、袋叩きに遭うご時勢だが、談合はそもそも日本の伝統的な商慣習である。特定の企業が暴利を貪っているわけではなく、全ての成員が限られた利益を薄く分け合っているのだ。極端な勝ち組も作らない代わりに極端な負け組も出さず、共生しながら社会の安寧を保つという、日本人ならではの知恵ではないかと私は思う。それがいつから違法行為と断罪されるようになったのか」

「建設業界を完全自由競争にすればどうなるか。大手が独り勝ちして市場を独占するのが関の山だ。その結果、地方の零細建設会社は軒並み淘汰され、失業者が大挙して都市に雪崩れ込み(略)。

そんな事態が本当に日本の国益に適うのか。思考を停止したマスメディアは血眼になって『談合は犯罪だ』と喚くばかりで、真の国益とは何かを冷静に検証しようともしない


全く同感です。全く同じ文章を僕が書きたいくらいです。

もちろん、談合は不正・腐敗の温床ともなりえます。

しかし、日本人がかつてのように、勤勉・誠実の日本精神を持っているならば不正・腐敗には繋がらないのです。

アメリカは談合を根絶させ、建設業でもアメリカ建設業者が儲かる場を与えろ!と要求しているだけです。

そして、アメリカにとって絶妙なタイミングで「談合」が、日本のメディアの猛バッシングを浴びるのは偶然でしょうか?


アメリカに貪り尽くされる危険性もあった昨今、日本には「リーマン・ショック」という神風が吹きました。

今こそ立ち直るチャンスだ!