永楽帝~大明天下の輝き~ #11 悪徳役人 あらすじ
朱棣は張武との勝負に負け 玉佩を渡した。
勝った張武が仲間たちと祝杯を挙げている近くの席で、張玉と朱能はわざと負けたのだと大声で話した。
同情されたのだと知った張武は朱棣に文句を言い、玉佩を売った金を差し出した。
朱棣は、助けたのは張武が自分の総旗で仲間だからだと話した。
張武の家は軍戸だが、妻は田畑を持つため税の取り立てがある。
役人は張武の妻の田畑への徴税に際し、偽造した大升を使って測り妻にちょっかいを出した。
怒った張武は役人に反抗し乱闘になった。
朱棣は配下を連れ駆けつけると役人を打ちのめし張武を助けた。
張玉は妙雲にこの件を報告した。
妙雲は現場に駆け付け、役人を突き出してはいけないと説得した。
上役は下役の不始末の責任を自分が取らされることを恐れ庇うだろうし、今の朱棣は屯田軍の百戸にすぎない、と。
しかし朱棣は妙雲の説得を聞かず行ってしまった。
妙雲は秦王のいる行宮に向かい、張玉には鉄鉉を呼ばせた。
朱棣が役所で訴えると、知県の蘇彬が現れ全員捕らえられた。
蘇彬は正規の升を証拠として用意し、朱棣の配下のうち地元出身の者を懐柔し首謀者は朱棣だと証言させた。
そこに鉄鉉が現れ、蘇彬を説得しようとした。
蘇彬は鉄鉉を上役の范の所に連れて行った。
范は、鉄鉉が管轄違いの県に口出しすべきでないと指摘した。
そして近年農家が軍戸に成りすます事件が増えているので、容赦なく処罰すべきだと話した。
秦王と晋王が到着した。
秦王の護衛は秦王妃の使用人で、朱四朗(朱棣の偽名)と旧知の仲なのだと話し、釈放するよう2人は圧力をかけた。
范は朱棣を釈放した。
鉄鉉は秦王らに私情で法を曲げれば大きな災いに見舞われると意見した。
配下に朱棣をつけさせた蘇彬は、朱棣の正体を知ると自害した。
張玉は朱棣に、拡廓帖木児の強さの秘密を教えた。
牧畜民から略奪しないことと兵士をいたわること。これを守る王だから、何度拡廓帖木児が負けようと兵士は集結する。
朱棣はなぜ鉄鉉を呼んだのか妙雲に尋ねた。
本人がどんなに誠実でも、それだけではだめで、そのことを代弁してくれる者が必要なのだと妙雲は語った。
朱棣は妙雲の策略家ぶりに感嘆し、夫婦になれたことを感謝した。
鉄鉉は蘇彬が軍戸に配られた田畑を略奪していたことや、自害したことを朱棣に報告した。
朝廷がどんなに厳格な法を定めても、汚職は止まない。
蘇彬がたまたま悪党だったのか、それとも官界とはそういうものなのか。
朱棣は官吏の治め方(吏治)が重要な問題であると実感した。
蘇彬の件について報告を受けた太子は、どうしたら悪徳官吏を予防できるか、胡惟庸に意見を求めた。
胡惟庸は、時に北元軍が奇襲に成功しても、国力で はるかに勝る明が大局において勝つことを挙げ、政務においても同様なのだと話した。
時に目が届かない所があっても、大局を見て小さな過ちは許すべきである、”水清ければ魚棲まず”と。
胡惟庸は長期の安定を目指す策として科挙の再開を献策した。
科挙は洪武4年に実施されただけで、現在は官吏は官吏の推薦で決まっている。
官吏の悪習を正すため、太子は皇帝に科挙の実施を進言した。
皇帝は、洪武4年の科挙において、進士120名中41名が江浙出身だったことを話すと、学問が普及するまで科挙は再開しないと語った。
官吏の出身地が1か所に集中すべきではないという考えである。
徐達勝利の報告が届いた。
皇帝は、開中法(塩と食料を交換する法)を献策した胡惟庸こそ功労者筆頭と考え、中書左丞相に昇進させた。
胡惟庸を信じていない皇帝は、中書右丞相を置かず様子を見ることにした。
胡惟庸の所には祝いの品を持った官吏が押し寄せたが、胡惟庸は誰とも会わず、贈り物には相応の金品を返すよう手配した。
感想
朱棣が百戸として隊に入ったことで人生を狂わされてしまった張武でしたが、無事に相思相愛の相手と結婚できました。
張武はすっかり朱棣に心酔しているご様子。
その気持ち、分かるなぁと思う前半でした。
あんな風に、仲間だから助けたんだ!なんて言われたら、そりゃあ好きになってしまいますよ。
朱棣は人たらしの素質がありそうだと思いました。
そんな感じで和んでいたら、張武の家が官吏の餌食にされ大変なことに。
どうやら規定の升よりも大きな升を偽造し、それによって多く税を徴収しようとしたみたいです。
後々分かりますが、親分である蘇彬が軍戸に配られた田畑の略奪をしているので、配下の者も当たり前のように不正を行っているという構造らしく、大きな事件があって皇帝が法を施行したばかりなのに身を引き締めない大胆さに驚きました。
朱棣は訴え出ましたが、証拠をすり替えられてしまい、徒党を組み役人を殴った首謀者として罪を着せられそうになりました。
役所の扁額に「公正廉明」と書いてあったのには、ツッコミを入れずにはいられませんでした。証拠捏造とか、最低です。
妙雲の言った通りになってしまったわけです。
鉄鉉が駆けつけてきて”この件には裏があるはず”とさらなる調査を求めましたが、管轄違い&農民の徴税逃れが横行していることを理由に意見は聞き入れられませんでした。
結局お兄ちゃんたちが圧力をかけて朱棣は釈放されました。
しかし、鉄鉉も言っていたように、この方法はよろしくない。
視聴者は神の目で物事を把握できているから、何も問題がないように思います。
けれど臨淮に暮らす一般市民の立場からしたら 暴徒を役所が捕らえたけれど、暴徒は皇族の知り合いだったから釈放された、という風に見えてしまい法の形骸化につながります。
ではどうすればよかったのか。
鉄鉉が言うとおり調べ直しても、同じ人に調べさせているかぎり結果は変わらなそうです。
監察役を置くとしても、これだけ不正が横行しているなら監察役だって不正に加担するんじゃ、なんて思ってしまいます。
一番いいのは最初から誰も不正しないことですが、どうしたらそんな風な仕組みを作れるのか。
このことには優秀な太子も頭を悩ませています。
ところで、范殿が農民が軍戸を騙る不正があると言っていて、それを聞いた時、それは嘘なのではないかと思ってしまいました。
どういう訳か、農民は嘘をつかない、正直で清らかなんだ と思ってしまっていたのです。
でも、農民だって悪徳官吏から身を守るために、生きるために多少は不正だってしていますよね。
日本の話しか知りませんが、奈良時代は偽籍が多く女ばかりだったという話もあります。
「七人の侍」には、したたかな農民の姿が描かれていました。
(「七人の侍」、リマスター版でも音質があまりよくないですが、今見ても面白いと思うのでまだの方は是非!)
范殿が言っていたことが本当かどうかは分かりませんが、農民が不正をしなくても良い世界を作って欲しい。
官吏の不正対策として、胡惟庸は科挙の再開を提案しましたが、皇帝は却下しました。
建国の混乱もありまだ学問が普及していないからと。
中国=科挙 というイメージを強く抱いていたので、科挙を実施していない時期もあったことに驚きました。
皇帝は胡惟庸を信じておらず様子を見ていますが、胡惟庸は信じられてないことを知っている上 用心深いので全く尻尾を出しそうにありません。
朝廷での駆け引き、一体どうなるでしょうか。
張武の件では妙雲に止められても朱棣は訴え出ました。
しかし妙雲の尽力で助けられ、代弁者が必要だと言う話を聞かされると妙雲と結婚できるほど徳を積んだ前世の自分に感謝していました
妙雲の内助の功が冴えわたり、改めて本当にすごい方なんだなと思いました。
後世に語り継がれる理由が、よく分かった回でした。