4月で気持を新にする場合、
何かしら標があった方が良いと思います。
今回取り上げる作品は、まさにその標となるべき作品です。
学校などで推薦図書に指定されている場合もあるので、
すでに読まれたことのある方も多いかもしれません。
タイトルから判る通り教訓本ですが、説教臭くならないよう
対話形式で物語が進むなど配慮されており、
気軽に面白く読むことができます。
また、「君たちはどう生きるか」という問い掛けで結ばれており、
どう生きるかを押し附けるような本ではありません。
世間に通っているさまざまな事柄を取り上げて、
ソコから読者がどう生きるかを自身で導き出せる構成になっています。
おいらは自覚してはいるのですが、なかなか卑屈な性格をしていると言われることがあります。
本書の謳っている理念を読んで、耳の痛い思いがいたしました。
改めておいらはヒトとしてはクズであるということをつくづく感じますね。
たいした身分でもないのに他人を見下しますし。クソ野郎です。
ただ、理想主義に過ぎる部分もあるかと思います。
また、全部が全部同意できるような内容ではありません。
独裁者であるナポレオン・ボナパルトを礼讚している件あたりは何だかなと思います。
鵜呑にせず、リテラシイを養う必要があるかもしれません。
この世はキレイごとだけでは生きてはいけないでしょう。
「正直者はバカを見る」という言葉もあります。
ただソレとは別に、道徳的なことを知っておくことは、やはりヒトとして大切なことでしょう。
当たり前でも、絵空ごとでも、自分自身の心に問い掛けてみることで、何かしら得るものはあるはずです。
世間の暗部は、成長するにつれおのずと判ってくるものです。
わざわざ書籍で描き出す必要はありません。
子供に読ませるうえでは、このような書籍の方が望ましいと考えます。
子供は読むことで人生の礎にし、大人は読むことで人生を再確認しましょう。
日日を生きていると暗い話題が絶えません。喪男であるとなおさらです。
ソレでも何とか生きねばなりません。少しでも改善しなければなりません。
そういう意味で、社会を牽引するリーダーにこそ、この本を読んでいただきたいと思いました。
2009年4月3日読了
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波書店 [岩波文庫 青版 <33->158-1], 1982年)
ISBN 4-00-331581-2
底本:山本有三・吉野源三郎『日本少國民文庫・第5卷 君たちはどう生きるか』(新潮社, 1937年)
評価:★★★★
一言:大人こそ読むべき1冊です。