
「青い猫と虹の一族」三章~信じる心(19)・・・冬編
「ジョイ、これから私の家へ行くのよ。
あなたには、思い出がいっぱい詰まったこの屋敷を出て行くのは辛いかもしれないけれど仕方がないの。また、神の思し召しならここへ戻る事もあるかもしれないけど、しばらくは、私の家で暮らそうね。
あなたの妹のアニーを覚えている?あなたにそっくりで可愛いのよ。一緒に仲良く暮らそうね」。
そして、ローズは黙って何かを考えている。
やがて、再びジョイを抱き上げた。
「さあ、この部屋は寒いから早く出発しましょうね」
と、玄関のドアノブに手をかけたその時、ジョイが腕の中でもがく。
『「僕はご主人サムの帰りを待つんだ。どんなに寒くてもかまわない!」』
と、ジョイは叫ぶ。
しかし、ローズの頑丈な腕の中からは抜け出せそうにない。
それでも、ジョイは抵抗した。
この屋敷にとどまろうとするジョイの意志に気付いたローズは、それまで口にするのをためらっていた言葉を遂に語ってしまう。
「サム兄さんはね・・・あなたの主人は、もう、どんなに待ってもここには戻ってこないの」。
そして床に崩れ落ちるように屈み、ジョイの青い青い毛を涙で濡らす。
何度も泣いたであろう、その髪の毛と同じ栗色の眼は、既に赤く腫れ上がっていたのであるが・・・今また、部屋の静けさを破って泣きじゃくる。
『戻ってこないって?ローズは自分の兄さんを、信じていないんだ。愛していないんだ』
と、ジョイは考え、ローズの腕の中でまたもやもがいた。
暴れるジョイに、たまりかねたローズは自分の腕の中に向かって泣きながら叫ぶ。
「ジョイ!聞きなさい。サム兄さんはね、お前の主人はね、死んだの!天国へ行ったの。分ってよ、ジョイ!お願い!」。
そして、さらに泣き声をあげたのである。
驚いたジョイは、頭の中が混乱する。
『死んだ?ご主人が知らない国へ行った?どういうこと?もうここに戻らないって?僕を残してどこにも行くはずなんかない。大好きなご主人に、もう会えないなんて僕は信じないぞ』
しかし、ジョイはローズに身を任せるしかなかった。
もはや、全身の力が抜けた。
三日間の寒さと緊張全てから解き放たれたからであろう、気を失ってしまったのである。
その(20)へ続く (by ゆうゆ)
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