第一章 「猫のジョイのデヴュー」 その(5) 不条理な掟の荷!
何より「五つの掟」というものが、負担になった。
足取りは、鉛のように重い。
しかし、ハナミズキ通りに出ると、サムの待つセピアの館の明かりが見えてくる。
すると、いつもの元気が体に漲(みなぎ)る。
ジョイにとっては、飼い主としての優しさだけではなく、同じ価値観を共有する者としてのサムが、恋しかった。
夜道を戻ったジョイを、サムは玄関の外で迎えた。
彼は、腕の中へ飛び込むジョイの様子から、愛する猫の落胆を感得できた。
翌日の午後、サムは目を細めながらジョイへのプレゼントを手にしている。
「ジョイ」という名前の彫られた金の飾りのついた首輪だ。
彼は一ヶ月以上も前から、我が息子への贈り物を準備するかのように心を砕いていた。
自分の持ち物の中から丹念に「金」を捜して集め、町の鋳物店に依頼して作らせた。
サムは外見を重視する人間ではないが、現実を無視して我が道を独善的に生きるような心ない人間でもなかった。
小さな「金」へ、無償の愛と平安と希望をしたためた。
そして、今の願いはジョイが獅子のような雄々しい勇気をもって愛を実践し、絶望感を食い砕て、たてがみをなびかせて欲しかった。
「ジョイや、お前も大人の仲間入りが出来たんだからねぇ。これはわしとお前とが守る『愛と勇気の話』の実行記念品じゃよ」
と、ジョイの首に付けた。
「おー!お前に、金色はよく似合うねぇ。まさに銀の中の金じゃ。お前は、わしにとって愛のある勇敢な息子なのじゃよ!」
と、励ます。
ジョイは、恥じらいながらも、自分が年老いたサムにとっては「愛と勇気の話」に登場するヒーローなのかもしれないと、グリーンの眼の奥で単純に喜ぶ。
そして当然、いつもの話を聞きたくなる。
サムの足元に絡み話を要求する。膝に駆け上がり、いつになく真剣に聞き入った。
そして、いつもの最後の言葉を待つ。
「愛に勝る掟はないのだよ。ジョイやー」
これを、耳にするや・・・今日のジョイは、眠るどころかすっく!と立ちあがった。
サムの眼は、これまでとは違うジョイの態度に、希望の一欠けらを見る。
『ジョイは、負けない。そして、必ずや、愛において勝利するだろう』。
とサムは思わず、微笑む。
(一章)猫のジョイのデヴュー その(6)へ続く
by ゆうゆ作
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