主題「青い猫と虹の一族」
以前に執筆した拙著の、愛と勇気!の溢れるニャンコの物語です。
結構・・・長編です。
週一~二回ほどのペースで、少しずつ載せていきたいと思います。(≡^∇^≡)
主題「青い猫と虹の一族」~前編
第一章 「猫のジョイのデヴュー」 その(1) サムという人!
ここはアルトベイク市の郊外にある住宅街。
繁華街から離れた静かな通り、通称、ハナミズキ通りには現代風の新しい立派な家が建ち並んでいた。
その中に、ただ一軒だけ植物が絡まる灰色の古い壁の屋敷がある。
その敷地は、時代に逆行しているような雰囲気をかもし出していた。
長い年月を耐えてきた壁のいたるところにある小さなひび割れを愛しむかのようにアイビーが覆い、朝顔の蔓も手足を伸ばして文字通り花を添えている。
錆びた大きな鉄の門は、最早、地面と同化しているかのように頑として動かず開放されたままになっていた。
しかし、赤茶色に錆びきった鉄の門を尻目に、広い庭へ一歩踏み出して入った者は、大抵眼を見開き感嘆の一声をあげた。
見る者に対して、エデンの園とはもしかしてこういう所だったのでは・・・と、喜ばしい想像力をふくらませていた。
そこには緑の木々や草花をのびやかに遊ばせながらも、よく手入れがなされた上での野趣溢れる華やかさがあったからだ。
一年を通して巡り来る季節ごとの彩り豊かな足元の花は、そびえる樹木と平和の契約を交わしているかのように全く調和していた。
この古い屋敷を知る近所の人々は、建物の色がグレーにも拘らず、なぜかここを「セピアの館」と呼んでいた。
そこには花や木々をこよなく愛する心優しいサムエル・ブライアンと一匹の青くて可愛い猫ジョイが、静かに暮らしている。
サムつまりサムエルは二十年前に、長い間にわたって空家にしてあったこの屋敷に戻り、独りでひっそりと住みついた。
敷地全体の植物は、彼の愛情が込められた管理によって成長し、今に至っていた。
彼の願望ではなかったが、ローズという妹の勧めで二年前からこの子猫を飼い始めていた。
以来、彼の生活のリズムが整い始めたし、植物から動物へと愛情も広げられて笑顔が増えてきたのだった。
そのサムが、今年七十歳に手が届こうとしている。
彼は中肉中背だが、顔が痩せていて、一見した所では、哀れさを感じさせる。
しかし、彼の深い灰色の眼の光は、若き日に夢と理想を追い求めた頃の残像が、わずかばかり残っていた。
白髪交じりの茶色の髪の毛は観念したかのように柔らかに横たわってはいるが、その勢いは衰えてはいない。
深い額の皺は、彼の人生を物語る。
サム自身の正義感から発した博愛の努力が報われず、自ら課した苦悩の末の表現として完成され、刻まれたものだった。
サムは、普段メープル色のシャツと黒っぽいズボンを、すんなり身にまとっている。
日々無造作な着衣は、彼が精神的な生活を重視してきた過去の名残りである。
そんな装いに過ぎないが、にじみ出る品の良さゆえに、誰も彼を侮ることがなかった。
この町には、サムがそれまでの長い空白の期間を、どこで何をしていたかを知る者は誰一人いなかった。
しかし、謎の多い老紳士サムを近所の人々は、なぜか愛した。
サムは目立たず、人目を惹かず、静かで穏やかな愛に満ちていた。
そんな彼ゆえにか、誰とてあえて過去を詮索(せんさく)しようとも思わなかった。
(一章)猫のジョイのデヴュー その(2)へ続く
by ゆうゆ作
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