札幌市内の道立高校定時制の男性教諭が、知的障害のある生徒について診断歴のない病名を記した資料を他の教職員に配布するなどした問題で、経緯を調査していた道教委の第三者会議は31日、調査報告書を公表した。この教諭が昨年9月、生徒の成績を「1」にするよう教科担任に強く指導していたことも新たに判明。第三者会議は一連の男性教諭の言動を「不適切」と認定した上で、「障害のある生徒への『合理的配慮』を決める上で保護者との合意形成が欠如していた」と指摘した。
報告書によると、男性教諭は20年以上にわたって特別支援学校などで障害のある児童生徒らの指導に当たり、同校でも特別支援教育を担当。生徒の成績評価を校長に提案する役職も務めていた。昨年春にこの生徒が入学した後も、特別支援教育に関する対応を一人で担っていた。
報告書では、生徒の成績を「1」にするよう指導された教科担任は教頭に「大声で圧力をかけられ、成績評価に介入された」と訴えたとしている。最終的には教科担任が「1」にすることに同意した。
個別教科の成績評価について、第三者会議は「教科担任の裁量で決定すべきだ。男性教諭は教頭から介入しないよう注意を受けていたにもかかわらず、それを守らなかった」と指摘した。
男性教諭が診断歴のない病名を記載した資料を他の教職員に配布したことについては「男性教諭の思い込み、思いつきによる説明だったと考えるほかない。不適切な対応だ」と非難した。
男性教諭を巡っては、この生徒の退学を促すような発言を同僚にしたことや、成績を「1」にする方法を示す文書を教職員の打ち合わせで共有したことなどが相次いで発覚。報告書では、いずれも不適切な言動と認定した。
第三者会議の委員を務めた大崎康二弁護士は、31日に行われた記者会見で「男性教諭は特別支援教育に関する専門家として校内で判断を委ねられる傾向が強く、複数でチェックする体制がなされていなかった」と指摘した。一方で、男性教諭が不適切な言動を繰り返した動機や、生徒を排除する学校側の意図の有無については「内心についての調査には限界があり、解明できなかった」と話した。
道教委の倉本博史教育長は、一連の問題について陳謝した上で「特別支援教育に関して特定の教員に依存してしまったことが背景にある」と述べた。今後、関係者の処分を検討し、保護者への謝罪を促す考えを示した。
生徒の保護者は「詳細な事実認定がなされたことは良かったが、なぜこのようなことになったのか核心部分ははっきりとしなかった。個人的トラブルではなく差別の問題だということが社会に共有され、人権について考えるきっかけになることを願っている」とコメントした。
2024年5月31日 9:39(6月1日 1:07更新)北海道新聞どうしん電子版より転載
・未診断病名配布問題 道立高教諭、引き継ぎ資料を廃棄 障害の特性記載
札幌市内の道立高校定時制で特別支援教育を担当する男性教諭が、知的障害のある生徒について未診断の病名を記載した資料を他の教職員に配布するなどした問題で、この教諭が、生徒の出身中学校からの引き継ぎで障害の特性などを記載した資料を廃棄していたことが14日、北海道新聞の取材で分かった。資料は保管する必要がある公文書だったという。一連の経緯を調査する道教委の第三者会議もこの事実を把握しているとみられ、近く最終報告書をまとめる方針だ。
関係者によると、男性教諭は昨年3月にこの生徒の入学が決定した後、生徒が通っていた中学校の教員らと引き継ぎを行った。その際、高校入学後に必要となる支援内容についても説明を受け、男性教諭はメモなどの資料を作成したが、その後独断で資料を廃棄したという。同校や第三者会議が経緯を調べる中で、廃棄の事実が判明した。
男性教諭を巡っては、この生徒の退学を促すような発言を同僚にしていたことや成績評定を「1」にする方法を示す文書を作成し、教職員の打ち合わせで提示していたことなどが相次いで発覚した。道教委が昨年12月に外部有識者を交えた第三者会議を設置し、事実関係や学校の対応などを調べている。
2024年5月15日 5:00(5月15日 7:30更新)北海道新聞どうしん電子版より転載