マイナンバーを使って行政手続きに必要な個人情報を行政機関の間でやりとりできる「情報提供ネットワークシステム(NWS)」を活用して、地方自治体がどれくらい他の機関に情報を照会したか、会計検査院が11県とその全市町村などを対象に調べたところ、一度も照会実績のない行政手続きが福祉や医療の分野を中心に4割近くあることが15日、分かった。
自治体がNWSを使えば不要となる手続きを住民が続けざるを得なくなる。検査院はシステムを所管するデジタル庁や、行政手続きに関わる各府省庁に対し、周知徹底や自治体への助言を求めた。デジタル庁は「マイナンバー制度を推進する立場として重く受け止める。照会件数データを提供するなどして府省庁の取り組みを支援したい」としている。
検査院によると、情報照会したことのある自治体が10%に満たない行政手続きも5割超に上った。一方で地方税や年金給付関連など、頻繁に照会がある手続きもあり、検査院は「手続きによって照会件数の差が顕著になっている」と分析した。
NWSを使い、自治体が情報照会できる行政手続きは昨年3月時点で1429件ある。検査院はこのうち生活保護業務に関わるものを除いた1258件を対象に調査した。すると情報照会した自治体がゼロだった手続きは福祉や医療など485件で、全体の約39%を占めた。情報照会した自治体が10%未満だった手続きは649件あった。
自治体がNWSを使って情報照会すれば、住民は証明書の写しの提出を省略できる。新潟県では指定難病患者に医療費を支給する際の手続きで一度も情報照会せず、患者側に従来通り課税証明書などを提出させていたという。北九州市でも、精神障害者手帳の更新手続きでNWSを使っていなかった。
自治体がNWSを使わない理由は「業務フローの作成が未了」「書類を提出してもらった方が効率的」などが多かった。
情報提供ネットワークシステム(NWS) マイナンバー制度の導入に合わせて整備され、2017年11月に本格運用が始まった。社会保障や税、災害対策に関する行政手続きに必要な個人情報を、マイナンバーを使って行政機関同士がやりとりできる。住民は書類提出の省略、自治体側には業務効率化といったメリットがある。国は14~22年度、NWSを整備運用する費用として749億円を計上。自治体が情報照会するためのシステム整備費として計1400億円の国庫補助金を交付している。
情報提供ネットワークシステム使用実績の分布
2024年5月15日 17:45(5月15日 17:55更新)北海道新聞どうしん電子版より転載