以前、お隣の方が干す洗濯物の

柔軟剤の香りがあまりにもきつくて

窓を開けられない時期がありました

 

なのでお昼休みの時間に

近所に散歩に出るようになりました

 

ひどく方向オンチの私は

初めての道で角を2回曲がると

たいてい迷子になります

 

なのによせばいいのに

なぜか曲がったことのない角を

どうしても曲がりたくなるのです(苦笑)

 

やがて方向が分からなくなり

ちゃんと家に帰れるかしら?って

ハラハラドキドキしはじめます

 

もはや散歩というより探検気分

 

でも、そんなハラハラドキドキが楽しくて

よく散歩に出かけるようになりました

 

途中で本当に迷子になって

冷汗をかきながら1時間以上も

歩き回ることもたびたび

 

だけど2年もすると

家の近所のすべての角を曲がり

すべての道を歩いて覚えたので

迷子になることもなくなりました

 

迷子を卒業すると

ハラハラドキドキ感がなくなって

ちょっと寂しくなりました

 

でも今度は

その日の気分でコースを組み立て

散歩をするようになりました

 

ハラハラドキドキしない代わりに

じっくりと周囲の様子を

楽しむことができます

 

流れる雲の形

樹々を揺らす風の音

さまざまな鳥の声

季節で変わる植物の色合い

花と戯れるチョウやハチ

 

そして家に帰ってくるころには

心が元気になっているのです

 

人生も似たようなものかもしれません

 

若いころはハラハラドキドキの連続だけど

慣れてくるとじっくり向き合えるようになる

 

色々なことを経験して

人生を一周したころには

 

本当の意味で周囲の出来事を

楽しめるようになるのかもしれません

 

もちろん良いことばかりじゃなくて

辛いことや苦しいことも起こるけれど

 

ハラハラドキドキする代わりに

ちゃんと向き合えるようになる

 

自分の不甲斐ないところも

ちゃんと受け入れられるようになる

 

ああ、またやっちゃったね

 

うん、これは苦手なところだものね

 

そうか、どうしても我慢できないんだね

 

そんな不甲斐ない自分を受け入れていくと

出会う人たちが変わってくる

 

本音で語れるようになる

 

お互いの違いを面白がれるようになる

 

全ての人を受け入れられるようになる

 

優しい世界につながっていく

 

これまでの人生は迷子の散歩のように

ハラハラドキドキの連続だったけれど

 

家に帰る道が分かっているのなら

あとは途中の景色を楽しむだけ

 

ゆっくりと

 

じっくりと

 

心ゆくまで 照れ音譜