一日じゅう雨が降り続いた

三月最後の花冷えの日曜日

 

横山大観の「生々流転」を観たくて

東京国立近代美術館へ足を運びました

 

別の晴れた日にすればいいのに

 

って、頭では考えているのに

 

今日どうしても観たい!

 

って、身体が動いていました

 

最近、頭の考えと身体の行動が

どういうわけか一致しなくて

苦笑いすることが多いのです 汗うさぎ

 

霧がたちこめる山あいの

幻想的な大気のなかから

一滴の水が生まれてくる

 

やがて水が集まって川となり

人里を潤して海へと流れ込み

 

荒波となって龍のごとく飛翔し

光のなかへと消えていく

 

          (「生々流転」)

 

40メートルの絵巻物になった

水がたどる悠久の物語は

人生にも重なってみえてきます

 

透明ケースの前に一列に並んで

少しずつ動きながら観ていると

 

ゆったりしたジムノペディの旋律が

身体の内側から静かに聴こえてきました

 

・・・・・・・・・

 

なんてカッコつけて書いたものの

 

エリック・サティという作曲家の

ジムノペディというピアノ曲

を知ったのは、ごく最近のこと

 

PCの検索画面に思いつくまま

キーワードを入力して遊んでいたら

とても素敵なブログに出会いました

 

そして過去記事をランダムに読んでいたら

「雨の日には、サティのジムノペディが

 聴きたくなる」と書かれていて

 

何じゃい、それは!?

 

と検索してみると

初めてなのになぜか懐かしい旋律

 

心臓の鼓動と共鳴するように

スッと身体に沁み込んでいきました

 

それ以来、一人でボーっとしていると

ジムノペディの旋律が身体の内側から

聴こえてくるようになりました

 

なんとなく寂しくて切なくて

でも心地よくて穏やかで

 

深い苦しみや悲しみさえも

静かに受け止めて流れていくうちに

癒しに変わっていくような・・・

 

そんな旋律が「生々流転」の物語のBGMに

ぴったりだと思ったのかもしれません

 

すべての展示を観終わって

ガラス張りのテラスから外を見ると

やはり雨がしきりに降っています

 

濡れたくないので今日は真っすぐ帰ろう

って思っていたはずのに

 

美術館を出ると

なぜか足は千鳥ヶ淵の方角へ

向かっていました(苦笑)

 

「生々流転」を観た後だから

桜を見ながら雨の中を歩きたい!

 

って、身体がワガママを言うのです

 

しょうがないな~

濡れちゃうよ

 

って、頭が呆れて言いました

 

私がまだ勤めていたころ

職場の同僚たちと夜桜見物に

千鳥ヶ淵へ来たことを

懐かしく思い出していました

 

あれから30年近く経ちました

 

本当に色々なことがありました

 

楽しかったことも辛かったことも

喜び合ったことも後悔したことも

夢のように流れていきました

 

すべては生々流転の物語

 

掴もうとしても掴めない

 

生まれては消えてゆく

 

切ないけれど美しい

 

ただそれだけ

 

それでいい

 

・・・・・・・・・

 

ようやく九段下駅にたどり着き

びしょ濡れになったコートの裾を

タオルで拭いていたら

 

ねっ、散歩してよかったでしょ?

 

って、身体が頭に向かって言いました

 

まあね

 

って、頭もまんざらでもなさそうでした 雨ニコニコ雨

 

 

          (ジムノペディ)