「バレエとレイシズム」その3 | 大好きな日々の覚え書き

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デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

デンマーク王立バレエ団では、この一年間で3つのバレエ作品が、レイシズムが原因で、改訂後に上演、もしくはプログラムから削除されることになりました。


昨日、それについて芸術監督が語る記事がDRのサイトに掲載されていたので読みました。デンマーク語ですが、とても興味深い記事なのでそのまま貼り付けておきます。


上の記事の内容に触れながら、今日はまた「バレエとレイシズム』について書きたいと思います。


ここ一年間に、デンマーク王立バレエ団の演目で、レイシズムが原因で上演前に改訂された最初の作品は、去年の暮れの『くるみ割り人形』でした。


問題だったのは、第2幕の『お茶の踊り』でした。両手の人差し指を立てて踊る振り付けに観客から「待った」がかかりました。そこには中国人のステレオタイプが描かれていて、その振付は中国人にとって風刺的で屈辱的であると言う理由からです。そして、今後は指を立てずに全部の指を伸ばした手で踊られることになりました。女性のヘアスタイルも、長い黒い三つ編みから、ダンサーのそのままの髪の色で自然なスタイルに変更になりました。


ブルノンヴィル・スクールにも「中国人」と呼ばれるステップがあります。人差し指を立てて踊るステップなのですが、それも今後はタブーになることと思われます。


同時にスペイン人の踊り、アラビア人の踊り、中国人の踊り、と言う呼び名は、「ホットチョコレートの踊り」「コーヒーの踊り」「お茶の踊り」と言う呼び名に変更されました。


『くるみ割り人形』の衣装や振付が問題視されているのは、デンマークに限らず、世界的な傾向みたいですよね!?


そして次にステレオタイプが描かれているシーンがあることから問題になり、プログラムから削除されたのはジョン・ノイマイヤーの『オセロ』でした。


問題のシーンは、オセロの妻、デズデモーナが、オセロに出会う前に「オセロ」について思い描いていたイメージの描写で、オセロに出会った後で、オセロは自分と同じだと気付く、と言うもので、作品はどちらかと言うと、アンチ・レイシズムだ、と言う意見もあるそうです。


にも関わらずキャンセルに至ったのは、いかに作品が解釈されるべきか?は問題ではなく、作品を踊る生身のダンサーの「尊厳」が守られるかどうか?が問題だったからだそうです。


複数のダンサーが、ある一部の振付によって尊厳が侵されると訴え、その部分の削除を要求したが、振付家には受け入れられず、劇場としてはダンサーの尊厳を守るためにキャンセルするしかなかった、と言うことです。


『オセロ』の代わりに『真夏の夜の夢』が今好評上演中です。そしてこれで丸く収まるはずだったのですが……そう簡単に収まるものではなかったようです。それについては別の機会で!


さて、ステレオタイプの描写で問題があり、改訂後、無事に上演された、3つめの作品は『Blixen』です。詳しいことは最近書いたばかりなのでここでは触れません。


ただ単に時代の風潮に合わないと言う理由から、古典バレエが改訂されたり、演目から消えていくことは自然なことです。


そして今、レイシャルリテラシーへの意識が高まり、文学作品などがレイシズムの観点から見直されているように、古典バレエも、一つひとつ見直されています。


「アイデンティティに関する左翼的な過剰反応」なのか?「古い伝統への若者たちの反乱」なのか?それとも、本当の「バレエ革命」となるのか?


そもそも、古典バレエとレイシズムは分けることができるのか?


バレエが進化しなければならないこと、方法が未知で、苦しんでいることは確かです。


ただの傍観者の私は、今後、何が起こるのか?興味津々で、少しワクワクしています。