それは、2005年、第3回ブルノンヴィル ・フェスティバルの時に録画された、バレエ『ナポリ』を解説付きでみましょう、と言うイベントでした。
フェスティバルでは数多くのブルノンヴィル 作品が踊られ、その全てが3台のカメラで録画されたそうです。編集作業されないまま保管されていました。
それが「バレエ友の会」からの資金援助もあり、一つずつ編集され始め、最近『ナポリ』の原盤が完成したそうです。
今回はそれを観ましょう!と言う、なんとも嬉しいイベントでした。
編集を担当した王立劇場元音響担当のClaus Dohn(クラウス・ドーン)と、バレエ評論家と言えばデンマークではこの人!と言うくらい有名な、Erik Aschengreen(エリック・アッシェングレン)の解説付きでした。(あまり話していなかったけれど)
今のところ門外不出の貴重な動画だそうです。
そのためか、主役のジェンナロとテレジーナを踊った、王立バレエ学校校長を務める、元プリンシパルThomas Lund(トーマス・ルンド)と、同じく講師で、元ソリストのTina Højlund(ティナ・ホイルンド)もイベントに観客として姿を見せていました。
この2人は、2009年にデンマーク王立バレエ団が日本来日した時も、同じ演目で同じ役を踊っています。
2008年に現芸術監督に変わってから、『ナポリ』『民話』『シルフィード』とブルノンヴィル 作品の改訂版が次々と発表され、今、演目に上がるのは改訂版の方ばかりです。
まあ、それはそれなりにファンがいるのですが、衣装や舞台装飾がガラッと変わってしまったため、過去のヴァージョンを懐かしい、恋しい、と感じる人も、特にシニアの中に多いです。
今回のイベントには15年前の『ナポリと再会』するために沢山のシニアが会場を埋めていました。
私の感想を少し書くと、
今はブルノンヴィル の継承に熱意を燃やす先生たちが、ダンサーとして全盛期だった頃の姿を見れたのが、何よりも嬉しかったです。
半端ないこだわり、絶えないエネルギーの源流を見たような気がしました。お二人とも素晴らしかったです。
元々の第2幕では、マリアのおメダイが奇跡を呼び起こしテレジーナが救われると言う設定になっています。その場面では音楽も『O Sanctissima』が流れます。
改訂版は全面的に改訂され、全く新しい音楽で、キリスト教的信仰の要素は削除されています。私は改訂版の第2幕もそれはそれで実は好きなのですが、原版の奇跡もとても好きです。
第2幕は違って当然だけど、第1幕の振付も変わった部分がずいぶんあったのに驚かされました。
『ナポリ』は、変わり続けてきたのかも知れません。
そしてそれが人気の秘密でもあると思います。
過去のヴァージョンを舞台で復活させてほしい、と言う意見の人もいます。
私は飽きっぽく、新し物好きなので、過去のものは動画で十分じゃないか?と思います。
折角演目にあげるなら、今この時の社会情勢を反映した、新しい『ナポリ』をみたいので、そう言う挑戦をどんどんしてほしいです。
1842年にブルノンヴィル が振り付けた『ナポリ』の伝統を、ずーっと赤い糸で繋げていくために、過去のヴァージョンの動画がこのように大切に残されていて、本当に良かったと思います。