昨日、私がデンマークに住んでいて、嫌だなーと思っているタイプの女性に会いました。
それは、義父の葬儀に向かう途中、教会の目の前での出来事でした。
私は、義母と一緒に、ゆっくりと道を渡っていました。
義母は最近変形性関節症の症状が酷くて杖をついています。だから歩くのが早くありません。
道路を渡りきって、自転車道に辿り着き、もう一息で歩道、と言う時に自転車に乗った彼女は現れました。
自転車道をタラタラ横断する私たちを見ても、彼女はスピードを落とすことなく、走り続けました。
そして、後ろを通り過ぎた、と思った時、バーンと音がしました。
咄嗟に音の方向に振り向いた時、まだ彼女は義母の方向に倒れる途中でした。
私の直ぐ左後ろにいた義母を避けきれなかったようです。
義母が怪我でもしたら大変!とギクッとしましたが、幸いスレスレのところで、倒れ掛かることはありませんでした。
その女の人も、怪我はなかったようすで、すぐに立ち上がったので、(何もなくて良かったな!)と安心して、義母と2人、先に進もうとしたその時です。
「必要になった時のために、連絡先を教えて」
女の人が血相を変えて寄ってきました。
そのようすに、(彼女の高い自転車に傷でも付いたのかな?修理代が必要だから、保険の関係で私達の連絡先が必要なのだな)と直ぐに思いました。
でも、彼女が勝手に倒れたのに、何で私たちが責任を負わなければいけないの?と思ったので私は言いました。
「あなたに伝えなきゃいけない連絡先なんてないわ」
ただでさえ、義父の葬儀を前に精神不安定な上に、自転車が倒れかかってきて大迷惑を受けた義母も続いて言いました。
「私もないね」
そうしたら、自転車の女の人は言いました。
「あんたたち、やさしくないのね!」
その言葉に、(は〜?どっちが???)と思った私は、義母と2人で無視して教会に向かいました。
すると女はさらに寄ってきて言いました。
「ちょっと見て、これがどうなったと思うの!穴が空いてしまったのよ!これを修理するのに少なくとも2000クローナ(約3万5千円)かかるわ」
そう言って、今流行のエアーバック・ヘルメットを指さしました。
その女性はすらりとした美しい人でしたが、膨らんだエアーバック・ヘルメットに覆われて滑稽な姿でした。
車道と自転車には段差があったので、私たちを避けきれずに車道に落ちた衝撃で、エアーバックが作動してしまった、と言うことらしいです。
(あーやっぱりお金か、それが問題か!さっきのバーンはそれが破裂する音だったのか?事故に巻き込まれそうになった被害者は私たちなのに、もー付き合ってられないな!)
と思い、再び無視して行こうとすると、再び女は近づいてきて、
「あなたたちも忙しいかもしれないけど、私だって忙しいのよ」
の一言。
私たちの喪服姿を見て、何に私たちが向かっているのを知っていてのこの一言です。
義母は、もう早くこの人から解放されたいと思ったのでしょう、言いました。
「それなら、私の番号をあげるわよ」
義母は電話番号をヘルメットの女に言い渡すと、「さあ、こんな人は無視して、今日の大切なことに集中しましょうよ」と私に言いました。
私はそれでも気が済まなくて自転車の彼女に言いました。
「今度お年寄りを見たら、もっと注意して走ってよ」
そしたら負けずに女は言いました。
「お互いさまね」
(何がお互いさまなのよ!)(私が義母をもっと守っていれば、こんなことが起きなかったって意味?)(なんて嫌な女なんだ)と思ったけれど、こういうデンマーク女と口喧嘩して、勝つことは不可能なことを経験で私は十分知っているので、黙って去ることにしました。
エアーバック・ヘルメットと言うのは、スウェーデンで開発された下のようなヘルメットです。
安全性が高く、格好がいいので最近人気上昇中のようです。
でも事故で破裂させてしまうと、エアーバックを替えるのに、購入時と同じくらいの、上に書いたような高いお金がかかります。
自転車のヘルメットにしては高価なので、まだ珍しい存在です。
そのため、そう言うものを所有している人は、お金持ちで、流行に敏感、限りなくスマートな自分を愛する人種かと判断します。勿論安全性を重視していて投資する人もいるでしょうが、、、。
服装から判断して、彼女もストレス100%、バリバリの、キャリアウーマンの1人だったと思います。年齢は40歳〜45歳くらいでした。
教会の入り口で振り返ってみると、忙しかったはずの、エアーバック・ヘルメットの女は、まだその場にいて、通りかかった若い女の人に何やらブーブー自分の権利を訴えているようすでした。
私は、義母の「大切なことに集中しましょう」と言う言葉のお陰で、葬儀に集中することが出来ました。とても美しい儀式でした。
でも葬儀後の食事の時に義母は私に心配そうに言いました。
「年寄りを轢きかけた女に、お金の保証はできないわ」
平気を装っていたけれど、あの女の態度を義母が気にしていたことを知り、再び怒りがこみ上げてきました。
「当たり前よ!お義母さん」
諦めるとは思うけれど、万が一弁護士から電話がかかってきたら、逆にこっちから訴えてやればいいんです。