今月20日台湾の新総統の就任の日に駐日中国大使呉江浩は、日本の国会議員が大挙して就任式に出席したことを非難し、また頼新総統の就任演説を非難した。また呉大使は日本が中国の分裂に関与すれば、「日本の民衆は火の中に連れ込まれるだろう」と恫喝したが、この発言は2023年1月にした発言にも同じ行がある。

 

頼清徳新総統はもともと民進党所属で、以前は台湾の「独立」を確かに言っていた人だが、総統になるにあたって、蔡英文総統の路線を継承し現状維持を唱道した。だから頼清徳総統は少なくとも現状は変更せずにと言ったが、これに不満な中国は現状を変更したいという顕れであろう。

 

呉大使の発言のあった中国大使館で行われた座談会には、鳩山元総理や福島瑞穂と言った日本人として恥ずかしい「売国奴」と言っていい人が参加している。鳩山氏は「強い言葉に違和感はあったとしながら、日本はこの企てには参加しないから仮定の話だ」と言って事実上大使の発言を受け入れている。

 

台湾の総統は任期が4年だから次の総統選挙と、中国の習主席の五年の任期が来る三期目と重なっており、三期目の任期中にはいわゆる平和的な併合は難しい。その意味で今回の発言はその習主席の苛立ちを代弁し、呉大使が本国に対し媚を売ったとも言えることだが、日本の公式抗議も例によって生ぬるい。

 

2023年の発言の際には外相だった林氏が抗議したが、今度は官房長官として、外交ルートを通じて「抗議」したということになっているが、所詮お座なりなものである。本来日本を害することを正式に言ったのであれば、呼び出して面前で抗議すべきものであり、「外交ルート」を通じた電話での抗議には中国は無視するだけである。

 

中国のこのような不穏でかつ日本を侮辱したとしか言えない発言には、外交交渉として「ペルソナ・ノン・グラータ」を持ち出して大使として認められないというべきである。すなわち日本駐在大使として相応しくないと宣言し、退去を求めるべきものだが、そんな勇気は持ち合わせていないのだろう。

 

「国民は火の海に」は北朝鮮がよく韓国を脅すときに使った言葉だが、中国も日本をよほど侮ったのか頻繁に口にするようになった。それも日本がこれに対して有効な反撃ができないことを見透かしているからで、この非礼な言動を咎めるためには日本の軍事力を強化するしかないのであろう。