今月20日に就任した台湾頼清徳政権は、実に多難な環境の下での船出となったが、特に米国の動向が大きなものになっており、眼を放せない状況である。というのも最近米国の対中強硬派ともいえる共和党のエルブリッジ・コルビーという、元トランプ政権での国防次官補代理を務めた人が台湾の英字紙に寄稿したのである。

 

その要旨は、第一に台湾の国防意識は弱く不十分と言ったもので、第二に米国にとって台湾は死活的に重要とは言えないと言ったことである。台湾の国防予算はGDPで2.5%、中国はその12倍の軍事費を出していること、ヨーロッパでロシアの脅威にあるポーランドでもGDP比5%の軍事費を負担している。

 

つまりコルビー氏に言わせれば、台湾の国防費は少なくとも今の二倍程度まで引き上げる必要があると言い、台湾は中国の脅威には真剣とは言えないと言う。また台湾は米国が無条件で支援してくれていると思っているかもしれないが、自ら血を流して守ろうとしない国を米国は助ける義理はないと言う。

 

この発言の根元には、台湾の国家安全保障会議の議長に就任する呉氏がウクライナへの米国支援は台湾の安全にも必要と言ったことがあったとされる。米国特にトランプ氏はウクライナ支援はヨーロッパが中心になるべきと言い、真の脅威は中国だと言っているのに、呉氏の主張はこれに反しているからである。

 

台湾も国防以外にも多くの難題はあり、限りある予算をどう振り向けるかは大きな問題だが、米国にそっぽを向かれてはどうにもならない。米国は台湾を助けないと言っているわけでは無く、台湾ももっと自分の国のこととして、真剣に向き合うべきと言っているのであって、トランプ政権発足までにはその真剣さを表さなければなるまい。

 

しかしこのことは我が国にとっても無関係ではなく、我が国の防衛予算はすったもんだの挙句でも、今後5年間で漸くGDB比2%に向かおうかという段階でしかない。コルビー氏に言わせれば日本の姿勢は全く真剣さに欠けていると言わねばならないから、台湾への非難はそのまま日本に向けられるであろう。

 

だから日本としては防衛費の充実だけではなく、自国で防衛するためには、核の持ち込みや原子力潜水艦の保有などを考え米国と対峙する必要もある。米国民主党の尻馬に乗って、ウクライナへの経済支援をしているばかりではなく、真に自国を護る覚悟を今こそ求められている。